7-12 槍の勇者を強くする
朝飯を食う店を探したが、結局見つからず、フワッとした焼き立てのパンをいくつか買って、近くの公園広場の噴水に腰かけて食べる。
黄金の鎧にちぎって貰ったパンをモシャモシャと食べる。
「(美味い! 若干……いや、かなりフワッと感が足りないが、ちゃんとパンとして美味い!)」
「師匠、猫、なのに、パン、食べる、大丈夫、ですか?」
「(フッ……俺を普通の猫と同じ扱いをするとは、お前もまだまだだな? 俺には【毒無効】のスキルが付いてるから、何を食べても余裕のよっちゃ●イカよ)」
最後の一言の意味が分からず、若干首を傾げるバルトが、口に入れたパンの暖かさと美味しさに笑顔になる。
「パン、美味しい、です!」
「(んむ、ここの店は当たりだな。この街に暫く居るようなら、あの店を贔屓にするかね)」
朝飯がパンだけだと、元の世界での寂しい朝飯を思い出してしまうが、こうして一緒に飯食う奴が居て、昇って来た朝日を浴びながら食べるのは、別物だな?
なんだが、「あー気持ちの良い朝だわ!」と体と気持ちのスイッチが入って、目を覚ます感じ。
元の世界のパンに比べれば、菓子パンのようなチョコやクリームが入ってる訳ではない。でも、それでも、ここで食う朝飯のパンは、やっぱり美味い。
元の世界で、1人でテレビのニュースを見ながら食べるパンに比べれば、100倍美味い。
モシャモシャと2人で……1人と1匹でパンを味わう。
っと、今のうちに昨日の収穫を再確認しておくか。
昨日は結局眠かったから、あんまり詳細見て無いし。
まあ、収穫と言っても、何かしら凄気なアイテムが手に入った訳じゃない。
手に入ったのは、―――特性。
『【悪魔 Lv.3】
カテゴリー:特性
レアリティ:B
能力補正:魔力(効果・中)・魔力耐性(効果・大)・肉体耐久(効果・大)
付与スキル:【アンチマジック】【肉体強化】
効果:魔法使用可
魔法使用時の魔力消費2分の1
エーテルボディ
神聖/超神聖属性が弱点化。
太陽下での能力値弱体化(効果・強)
備考:魂を食らうごとに能力値ボーナス』
【悪魔】の特性。
結構強いんだよなぁ……。
能力補正だけでも、魔力、魔力耐性、肉体耐久の3つ付いてるし。
付与スキルの【アンチマジック】ってなんじゃろか?
『【アンチマジック】
魔力付与型の攻撃全てのダメージ半減。
また、一定値以下の魔力付与型の攻撃のダメージを無効化する』
おお、これはとても良い。
魔力付与型の攻撃って事は、魔力消費で発動する魔法、天術、スキルによるダメージ全てを半減でしょ? 超強くない?
一定値以下のダメージ無効は、アレでしょ? 魔力値の差が有り過ぎると魔法や天術が無効化されるののスキル版でしょ?
ついでに特性効果の“エーテルボディ”ってなんだ?
『物体的な肉体を必要とせず、精神だけの存在として現世に留まり続ける事が出来る。ただし、精神体で行動する際は生命力を消費する』
幽体離脱スキル?
いや、冗談じゃなくてさ。そう言うスキルって事でしょ? 肉体から精神を離して行動出来ますって事でしょ? その際は生命力―――寿命を消費するらしいが。
今のところ使い道ねえなぁ……だって、精神切り離したら、肉体の方が無防備になる訳で、緊急回避にも使えないし、何より使う度に寿命吸われてたら、子猫の体じゃ即行で死ぬ。
魂食って能力アップってか?
ここら辺は流石悪魔………。
そして、神聖、超神聖属性が弱点化……。
太陽下で能力値爆ダウン。
なるほど、悪魔の弱点は分かった。
奴等と殴り合うなら、陽のあるうちに……って事か。超神聖属性が効くのなら、神器を持つ勇者は、奴等にとって天敵と言って良いだろう。
だとすると、悪魔との戦闘が不安だったアザリアも戦力として数えても良いかもな……。
さて、ついでに―――
『【魔王 Lv.20】
カテゴリー:特性
レアリティ:A
能力補正:魔力(効果特大)・筋力(効果大)・感覚器官(効果大)
付与スキル:【フィジカルブースト】【ダブルハート】
効果:魔法使用可
暗黒/深淵属性超強化
魔法使用時の詠唱、ディレイをキャンセル
魔法使用時の魔力消費10分の1
能力値限界突破
所持する様々な能力の経験値上昇』
なんか、アッサリと【魔王】の特性のレベルが上がった。
更に―――
『魔眼【偽物】のランクが4に上がり、【贋作】に進化しました』
『【贋作】
カテゴリー:魔眼
レアリティ:D
ランク:4
魔力消費:2000
実在するアイテムに触れている状態で発動すると、まったく同じ物を創り出す。
ただし、レアリティに比例して魔力消費が大きくなる。
レアリティ★のアイテムは創り出せない』
魔眼のランクも上がった。
これもぶっちゃけ微妙だな……。
ようは、俺が武器圧し折って2つの欠片にした物を【自己修復】で2つに再生する増やし方、通称“不思議なポケットの法”を魔眼でも出来ますってだけでしょ? それにやたらめったら魔力消費高いし……。
………いや、でも待てよ? 今まで2つに裂けなかった物も創り出せるなら、結構優秀じゃないか?
まあ、魔眼の使いやすさはともかく――――。
ランク3の【偽物】を使う事もなくランクが上がってしまった……。まあ、【偽物】は欠陥能力でしたし。
ってか、魔眼もこんなに簡単にランク上がる物じゃなかっただろう……。
そこで考えた可能性。
もしかして、【悪魔】の特性持ちって………経験値バカ高いんじゃない?
まさかとは思うが……悪魔ってこの世界でのメタル●ライム枠なんじゃない?
であれば、【魔王】の特性がレベルアップしたのも、魔眼がランクアップしたのも頷ける。
いや、いやいやいや、待てよ!?
もし七色教会の中にもっと上位の悪魔が居るとしたら、物凄い経験値貰えるんじゃない? 中級ではぐれ●タル、上級でメタル●ング………凄い、夢が広がる!!!
そして、それを俺が倒したら、どれだけの経験値が俺に舞い込むのか!!
いや、待て、落ち付け俺。
取らぬ狸の皮算用をして良いのはサ●ージャンボ宝くじを買った時だけだ。
まだ悪魔が経験値高いと決まった訳じゃないし。もしかしたら、たまたま経験値が溜まるタイミングが一緒だっただけかもしれんし。
俺が落ち着く為に深呼吸すると、何事かと心配したバルトが声をかけて来る。
「師匠、何か、あった、ですか?」
「(いや、問題無い。ちょっと無駄に未来に夢見ただけさ)」
フッと遠い目をしてみる。
これを猫の姿でやると、とてもバカっぽく見えるかもしれない……いや、きっと気のせいだ。恰好良いかはともかく、きっと様にはなっている………多分、きっと……。
………そんな事はともかく、だ。
バルトを手っ取り早く強化する方法を考えた。
こっから先、どこで【悪魔】の特性持ちや教団員との戦闘になるか分からない。俺なら何が来ても対応出来るが、バルト達はそうじゃない。
とかく、他の人間の護衛を任せているバルトは危険が多い。コイツの事だから、いざとなったら自分の体を盾にして皆を庇いそうだし……。
そう言う訳で、バルトの戦力強化は今のうちに出来るならさせておきたい。ってのが、師匠としての俺の考えな訳だ。
で―――具体的にどう強化するか?
簡単だ。
勇者には簡単に能力強化できる手段がある。
俺とビッチがやった、共鳴だ。
あれをやれば、有る程度はスキルをコピーして渡す事が出来る。
とりあえず、【空中機動】は渡して構わないだろう。【妖精の耳】は……要らんかな。コイツには優秀な精霊付いてるし。
後は―――あ、俺、自分のスキルは何を渡せるのか分かんないや。
でも渡し過ぎで、後々困るって事ねえかな? スキルの取得上限とかあったら、下手なスキル渡して枠を埋めてしまうのはバルトの伸び代を潰す事になってしまう。
……ん~。
今は最低限に留めておくか。
「(おいバルト、ちょっと神器だしな。布巻いたままで良いから)」
「は、はい」
差し出された布に巻かれた灯の槍に、特に隠す事も無い旭日の剣を抜いて、【仮想体】がコンッと刀身を当てる。
すると、立ち昇っていた神器同士のオーラが混ざり合う。
『共鳴が発生しました。スキルの受け渡しが可能です。
現在渡せるスキルは
【空中機動】【妖精の耳】【毒無効】【隠形】
です。
また、レベルの存在するスキルを渡した場合は、譲渡先ではレベルが1になります』
うーん……俺のスキルで渡せるのは【毒無効】と【隠形】か……。
【隠形】は結構有用なスキルだけど、バルトの性格を考えると、あんまり隠密行動できなさそうだし、やっぱり要らんか。
【毒無効】……うーん……? 敵が毒攻撃するのが分かってるなら渡すんだけどなぁ。いや、でも、待てよ? 七色教の連中は、俺に毒盛って弱らせようとしてたし、持たせといた方が良いかな?
んー……良し、これは渡しておこう! もし毒食らって死ぬような展開になったらそれまでだし、持たせといて損は無いだろう。
えーっと、そんじゃ、バルトに渡すのは、【空中機動】と【毒無効】っと。
バルトの体が柔らかい光に包まれる。
「わっ、これ、なんです、か? 力、一杯、湧く、ます!」
「(俺の手持ちのスキル2つ渡した)」
「師匠、スキル、無くなる、ですか!?」
「(心配しなくても無くなんねえよ……。それより、渡したのは【空中機動】と【毒無効】な? 【毒無効】は文字通り、体に害のある物を全部無効にしてくれる。敵が即死毒とか使っても、これで安心だ)」
「は、はい! 師匠、ありがとう、ます!!」
「(んで、【空中機動】は……アレだ。空中で足場を作って空中で戦えるようになる奴な? ただし、足場を連続で作ると魔力消費高くなるから注意しろ)」
「はい!!」
ま、こんな感じで。
これでバルトも、相当ヤバい敵にでも当たらない限りは大丈夫だろう。
後は、時間見つけてバルトに空中戦の仕方教えるか? まあ、俺もそこまで空中戦強くねえけど。




