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6-25 神の駒達

 エルギス帝国領、通称“迷いの森”。

 精霊の加護により、年中深い霧に包まれた森。

 約1時間程前に、白き狼―――フェンリルを子猫がぶちのめした森。

 約30分前に、新しい槍の勇者が隠れ里の村人達を説得した森。

 約10秒前まで猫と槍の勇者が滞在していた森。


 その猫と槍の勇者が居た、ボロ小屋の前。

 【転移魔法(テレポート)】で姿を消した猫達を確認し、1人と1匹を―――いや、猫を見ていた者達が姿を現す。


「あれが、魔神の卵じゃん?」

「……そう言う事」


 今まで猫が居た場所を見つめながら2人は会話する。

 片方は木の上から、もう片方はその木の下から。


「大丈夫なん、あの雑魚(ざこ)さで?」

「大丈夫じゃなくても、大丈夫になって貰わなきゃ困る」

「そりゃあ、そうだけどよう……現時点であの弱さだと、流石に不安になるじゃん?」

「まあ……お前の不安は、分からんでもないが……」


 2人揃って溜息を吐く。


「確かに、少なくとも、約束の時までには強くなって貰わないと困るしな?」

「だろ? あの調子で大丈夫なのかよ?」

「大丈夫だと信じるしかないだろう? 一応スケジュール通りに進んでいるのだし、現状は問題無いと思うが」

「そら、おっさんの言う事が正しいけどもさ? アレじゃん? アイツが弱いままだと、困るの俺等じゃん?」

「そうだな」


 若干愚痴混じりになった、木の下の相棒に、木の上で「またか」と溜息を吐きそうになるのを我慢した。


「だって、アイツは“俺等の露払い”の為の存在な訳じゃん? それが役目を果たせないんじゃ、居る意味ねえじゃんよ」


 露払い。

 そうだ、あの猫は、2人の障害を排除する為に用意された“神の駒”の1つだ。

 だが、神の駒であるのは2人も同じだ。

 盤上の駒にはそれぞれ役割があって、猫には2人の道を切り開く為の役割が与えられている……と言うそれだけの話だ。


「それを言ったら俺達もそうだがな?」

「俺等は余裕じゃん? 生まれた時から“そうなる”ようになってるんだしぃ」

「慢心に足を取られないようにしてくれよ……」


 2人に与えられた役割は、絶対に失敗を許されない。

 その為に万全を尽くさなければならない。

 2人にも、あの猫にも。


「分かってんよ、俺達は“神に選ばれた”存在だからな」

「そう言う中二病な発言は、オッサンの俺には少々厳しいな?」

「中二病上等じゃん? 格好良い事に貴賤はないって言うじゃん」

「いや、言わないと思うが……」


 木の上で“羽”を軽く毛繕(けづくろ)いをしながら呆れる。


「そんな事より、封印の方は大丈夫なのか?」

「勿の論じゃん! もう暫くは何もしなくても問題無いってくらいには安定してるよ」

「なら問題ないが……くれぐれもアレを目覚めさせるような馬鹿な展開は勘弁してくれよ? 面倒事を押し付けられるのは、元の会社だけで十分だ……」

「それよりオッサン、勇者の方は?」

「今のところ、使い物になる奴は居ないな……一応見込みが有りそうなのは助けているが、ふむ……どうかな」

「なんだよ、頼りねえじゃん? “戦力として完璧”とか言ってくれよ」

「誇張してもしょうがいないだろう。それより、俺は仕事に戻るぞ」

「何? なんか仕事なんてあったじゃん?」

「惰眠を貪る仕事が俺を待っている」


 言うと、“3本足のカラス”は木の枝から飛び立って霧に包まれた空へと消えて行った。


「やる気が有るんだか、ねえんだか……あのオッサンは良く分かんねえじゃん……」


 溜息のように言葉を残すと、“白い蛇”はニョロニョロと動いて森の中へと潜って行った。



 立ち去った2人の姿は、あまりにも―――獣その物であった。


6章おわり



おまけ


名前:ブラウン

種族:猫(雑種)

身体能力値:14(+1953)

魔力:5(+2863)

収集アイテム数:169種

魔法数:30種

天術数:20種

特性数:5種

魔眼:3種

装備特性:【魔王 Lv.19】

     【魔族 Lv.863】

魔王スキル:【全は一、一は全】

マスタースキル:【収集者】

派生スキル:【ショットブースト】【隠形】【バードアイ】【制限解除】【仮想体】【毒無効】【アクセルブレス】【自己修復】【属性変化】【エレメントブースト】【妖精の耳】【空間機動】

ジョブ適正:魔王、マルチウェポン、忍者、暗殺者、魔導師(適正値順上位5つ)

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