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6-10 猫は宝箱を開ける

 オラぁ、出てこんかいワリャコリャぁ!!

 心の中でイキリながらズンズンと霧の中に隠れている何者かに近づいていく。

 相手が何者か知らないが、少なくてもアイツはこの森の“振出しに戻る”力を受けていないのは確実。

 であれば、何かしら森の情報を持っている可能性は高い。

 もしかしたら勇者候補の居場所を知っているかもしれないし、そうでなくてもこの森の攻略法は知っている筈。

 と言う訳で、軽くボコって色々吐かせる。

 ……まあ、言葉が通じない雰囲気バリバリだけども。そして、そもそも猫の俺がどうやって話をするのかって問題があるんだが……まあ、世の中の大抵の事はボディランゲージで伝わるって誰かが言ってたし、うん。


 だが、気になる事がある。


 相手に近づけば近づく程、例の光が多くなっている気がする。

 この光……結局何なんだろうな?

 良くわからないけど、微妙に敵意を向けられているような……気のせいかもしれないけど。

 とりあえず、適当に魔法を撒いて正体不明の光を散らしておこう。

 【エクスプロード】―――は威力が出過ぎるので、魔法のランクは下位の方で行くか。


 【ナパーム】


 ドンッと爆発が起こり、目の前の木をなぎ倒し、進行方向の霧が晴れる。

 光が爆発から逃れるように急ぎ足で逃げていくのが見えた。って事は、一応魔法でなら排除できるのかあの光は?

 物質ではないが魔法は有効……? 意味が分からんな。

 一応出来るだけ森を破壊しないように【ナパーム】を振り撒きながら進む。

 さっさと出てきてくんねぇかなぁ。俺、別に森林破壊しに来た訳じゃねえんだけども……。

 そんな事を考えながら次の【ナパーム】を用意していると、


「◆◆☆ΦΦッ!!」


 何かを叫びながら、霧の中から誰かが飛び出して来た。

 男。

 褐色の肌。

 黒い髪。

 そして、


――― 深紅の両目


 何この人?

 異形っぽい感じが無いから、多分、人間? ……だとは思いますけど、なんで両目赤いのこの人? そう言う種族なん?

 まあ、とりあえず出て来てくれたんだから、おもてなししないとね?


 短い槍―――投擲槍? を構えて、野生児のような飛び方で、【仮想体】を無視して(おれ)に飛びかかって来る赤眼の男。

 ………遅。

 心の中であまりの遅さに呆れながら、飛びかかって来た男の横っ腹を金色の足が捉える。


 ゴギュっと、若干ヤバ目の音をたてて男の体がボールのように吹っ飛んで、横の木にぶち当たって落ちる。

 おっと、力入れ過ぎた。

 流石に今ので意識が飛んだらしく、立ち上がって来る気配は無い。

 男の身体能力は高いっぽいけど、それはあくまで“一般人と比べたら”、だ。こちとら中堅の魔王と殴り合える戦闘力が有るんだから、ちゃんと手は抜かんとアカンねコリャ。

 とりあえず、会話が出来るかどうかはともかく一旦治癒の天術かけておくか?

 ダメならダメで殺す方向で。

 ……一応言っておくが、別に率先して殺したい訳じゃないからね? コイツは【仮想体】を無視して、本体の俺を狙って来ていた。って事は、俺の正体に気付いているって事だ。下手に周りに喋られたら面倒だし、始末できるならしてしまいたい……って、そう言う話だからね?

 それに、治癒をする理由はもう1つある。

 飛びかかって来たから咄嗟に反撃でノしてしまったが、改めて倒れている男から漂って来る“嫌な気配”。

 俺の中の【魔王】の特性が、この男の存在を嫌がっている。

 って事は、多分、


――― コイツが件の“勇者候補”。


 まさか、エンカウントと同時に攻撃されるとは予想外―――って訳でもないか……。短剣や双剣の勇者の事もあるし、俺は今“勇者不信病”の真っ最中だ。

 勇者を名乗る者も、これから勇者になるであろう奴も、基本的には信用しないし、根っ子は敵だと思って対応する―――が、一応話くらいは聞いておかねえとな。

 この謎な森の事もそうだが、こんな場所に居たのなら、何かしら面白い情報を持っているかもしれんし。

 

 とりあえず天術のかけやすい場所に移動させようと【仮想体】が倒れている男に手を伸ばすと、まるで男を護るようにどこからともなく光が集まって来る。

 この光……さっきまで霧のカーテンに隠れてた奴だよな?

 光る昆虫や、魔物の類ではない。

 それは、光だった。

 豆電球程度の明かりが、ふよふよと空中を漂っている。


「ミィミャ……?」


 なんだこりゃ?

 結構幻想的な光景で美しいとは思うが……正直光の正体が得体が知れないので、あんまり景色を楽しめない。

 赤目の男を護るように漂う光を押し退()けて「よっこいせ」と【仮想体】が木の根元から平らな地面に移動させる。


 【ヒール】


 パアッと癒しの光が(おれ)の手から放たれ、気絶している男の体を包む。

 ついでに自己治癒力も上げておくか。


 【リジェネレーション】


 男はそこそこ重傷だったっぽいけど、俺の魔力値で治癒天術を使うと瀕死でも即回復できるな?

 ……いや、これ本当に俺の力だけか? 赤眼の男を心配するように周囲を飛んでいる光が、まるで俺の治癒術を後押しするように光っているのが気になる……。

 男が目を覚ましたら、この光の事も訊いてみるか? まあ、言葉が通じればだけど。レティが居てくれればそんな心配しなくて良いんだけどなぁ……。流石に危ない場所に引っ張り出す訳にはいかんし……。


 さってと、これで後は男の目覚め待ちだけども、どう暇潰ししたもんかしら?

 網走(?)教会から盗ん―――貰った武器防具も、昨日レティと寝る前に圧し折って大量生産し終わったしなぁ……。

 何か暇潰しになる物はないかと、目を瞑って収集箱(コレクトボックス)のリストをパラパラと捲る。

 えーと……何か無いかな何か無いかなっと。


 あッ!?


 そう言えばレティがベッタリだったから開けれなかったけど、網走教会で貰って来た深淵の匣放置したまんまだったわ!!

 俺の馬鹿!! これを開ける事が俺にとっての最大の楽しみじゃないか!!!

 っつう訳で、赤眼が目を覚ます前に中身確認するか。

 よっこいしょ、っと。

 まだ開けていない深淵の匣を目の前に置く。

 さってさて、何が出るかしらっと。

 レットゥオープンン!!

 特に意味も無く若干巻き舌で言ってみた。


 真っ黒な箱の蓋を、子猫の手で「どっせい!」とアッパーで開ける。

 中には―――黒い金属で作られたグローブ。

 白い刃の斧。

 持ち手から刃まで、全てが紫色の大鎌。


 どれも、血や泥に塗れて、手入れは一切されていない。

 恐らく、10年前の戦争とやらで魔王の手に渡ってから、そのままの状態で深淵の匣に放り込まれたのだろう。

 今まで深淵の匣に入れられていた神器は、最低限の手入れがされていた。……まあ、魔族連中は触るだけでも大ダメージだから、精々汚れを軽く拭う程度の物だが……。

 それは、もしかしたら、魔王達が勇者に向ける小さな敬意だったのかもしれないし、ただの気紛れだったのかもしれない。

 だが、バグの奴にはそれが一切無かったって事か……。まあ、もう死んでるから、別にどうでも良いけどな。

 はい、じゃあ回収。


『【黒土の剛拳 Lv.102】

 カテゴリー:武器

 サイズ:小

 レアリティ:★★★

 属性:超神聖/土

 装備制限:特性・勇者

 付与術:審判の土(ジャッジメントグランド)

 所持数:1/1

 第12神器。

 神が人類に与えたと言われる武具の1つ。

 大地を砕く“天地神”の拳を模した剛拳』


『【白夜の戦斧 Lv.99】

 カテゴリー:武器

 サイズ:大

 レアリティ:★★★

 属性:超神聖

 装備制限:特性・勇者

 付与術:夜の帳ナイトアウト

 所持数:1/1

 第11神器。

 神が人類に与えたと言われる武具の1つ。

 一振りすれば夜が訪れ、もう一振りが朝を呼ぶと言われる戦斧』


『【黄昏の大鎌 Lv.108】

 カテゴリー:武器

 サイズ:大

 レアリティ:★★★

 属性:超神聖/毒

 装備制限:特性・勇者

 付与術:審判の檻ジャッジメントジェイル

 所持数:1/1

 第7神器。

 神が人類に与えたと言われる武具の1つ。

 “夕闇”の女神が人の罪を切り落とす為に振るったと言われる大鎌』


『新しいアイテムがコレクトされた事により、肉体能力にボーナス(効果:大)』


 神器が3つ!!

 サービスボックスか!? ケンタッ●ーのパーティバーレルかよ!? 1人じゃ食いきれません!!

 はい、じゃあ天術抽出っと。


『【審判の土(ジャッジメントグランド)

 カテゴリー:天術

 属性:超神聖/土

 威力:A

 範囲:A

 使用制限:特性【勇者】

 暗黒/深淵属性の対象に対して超特効。

 特性【魔族】【魔王】を持つ対象に対してのみダメージ判定』


『【夜の帳(ナイトアウト)

 カテゴリー:天術

 属性:超神聖/支援

 威力:-

 範囲:S

 使用制限:特性【勇者】

 効果範囲内に居る敵性存在全ての探知・感知・索敵・追跡効果を全無効化』


『【審判の檻(ジャッジメントジェイル)

 カテゴリー:天術

 属性:超神聖/封印

 威力:-

 範囲:D

 使用制限:特性【勇者】

 効果を受けた対象の時間を停止し、あらゆる事象から隔離する』


 お、お? 【審判の土(ジャッジメントグランド)】以外は、かなり有用な奴じゃない?

 特に【夜の帳(ナイトアウト)】は、隠密行動や幻惑能力を振り回す俺には、重宝する事間違いない。

 この天術を咬ませておけば、敵に察知される可能性をほぼゼロに出来る上に、魔眼の幻惑を回避される可能性も大分減らせるって事だ。


 で、だ。

 

『【星の加護を持つ者 Lv.9】

 カテゴリー:特性

 レアリティ:★

 能力補正:全能力(効果:大)

 付与スキル:???(レベルアップで解放)

 効果:属性“虹”を解放

    アクティブセンサー

    ???(レベルアップで解放)

    ???(レベルアップで解放)

 備考:通常経験値ではレベルアップしない。

    レアリティ★のアイテム入手でレベル上昇』


 ありゃ? レベル1つ上がるごとに項目を解放かと思ったけど、1つしか解放されてねえや……。レベル上がるごとに項目解放の条件厳しくなるタイプかコレ。

 まあ、ともかく―――全能力補正は非情に有り難い。

 コッチは子猫で、能力値が根本的に雑魚だから、能力上昇はどれだけあっても困らない。ただ―――アクティブセンサーがあるせいで、コイツは【全は一、一は全(レギオン)】発動中にしか使えねえんだよなぁ……。

 まあ、でも、これで魔王スキルの必殺技感が増すと思えば……うん。



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