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6-1 黄金の勇者と猫は監禁される

 どうも皆様、猫の俺です。

 現在俺は、絶賛監禁中であります。

 遡る事10日前、エルギス帝国を支配するバグの野郎を俺はぶち殺した。

 そのすぐ後、七色教会の使いを名乗る“双剣の勇者”の双子と、“短剣の勇者”のクソビッチニューハーフにとっ捕まった。

 その後、持っていた旭日の剣を取り上げられ、警察に連行される犯人の如く3人に連れられて、帝国内にある大きめの七色教の教会の……えー、網走? とか、なんかそんな感じの名前の所に来た。

 そんで、何やら嫌な臭いを漂わせる太った神官的な野郎に「神の意思に従いたまえ」的な事を延々と説教され、最終的に「七色教の下に付け」とか言われた。

 それに対して俺は「え? 馬鹿じゃねえの?」と思いつつ、相手は一応神職ですし、丁寧に「テメェのケツ舐めて出直せや」と否定の意思を示した。

 途端に、この倉庫のような部屋に放り込まれたって訳よ。


「ミャァ」


 御世辞にも綺麗とは言い難い部屋だが、汚屋敷な魔族の家に比べれば最低限の清潔さはある。

 それに、最終目標が猫としての食っちゃ寝生活の俺としては、監禁生活は結構快適かもしれない。

 部屋の中で日がなゴロゴロしてても文句は言われないし、黙ってても飯が出る。例え魔族や魔物が襲って来ても、ここの人達が勝手に退治してくれるらしいし、魔王が来たって俺が逃げるまでの時間は、屍の山になって稼いでくれるでしょうしねぇ。

 まあ、強いてクレームをして良いと言うのなら、窓が無いから日光浴をしながら、干された布団のようにグッスリ出来ない事。それと、飯がクソの如くマズイ。

 そう、その飯が問題だ。

 扉に開けられた穴から毎日差し出されるスープや麦や野菜やら……。その料理全てに、


――― 毒が盛られている。


 あまりの不味さに、食った振りして収集箱に入れたら


『【毒 Lv.3】

 カテゴリー:素材

 サイズ:小

 レアリティ:E

 所持数:1/60』


 となった。

 七色教に従わないのなら死ねって事かしら?

 最初の食事が運ばれて来た時に、器の下に隠すように何か文字の書かれた紙が挟まっていたが、この世界の字が読めないから何が書いてあったのかは不明。

 まあ、多分「食事の前に神にお祈りしろ」とか、そんな感じの事だろう。

 つっても、【毒無効】持ってる俺には全然意味が無いんですけどね。

 毒の量は致死量ではない。だが、排泄される事無く、体の中に徐々に溜まって行き、いずれは死に至るタイプの奴らしい。

 元の世界で、食べ物にヒ素を盛って徐々に人を弱らせて殺そうとしたって事件を思い出す。

 ……まさか、自分が被害者側になるとは思っても見なかったけど。

 連中の計画では、監禁した俺を毒で徐々に弱らせ、毒で身動き出来なくなったところで「我等に従うのならば助けてやるぞ?」とか言うつもりなんだろう。

 七色教は、何が何でも俺を仲間に引き入れようとしている。それが叶わないなら、誰にも気付かれないように、文字通り闇に葬ろうとしている。

 ……え? 何? アンタ等本当に神の教えを説く人達なん? 本職は暗殺者とかじゃないよね?


 まあ、何をどう説得だか恐喝だかされても、俺は死んだ父方の婆っちゃに「宗教とスパ●ボの命中回避のパーセンテージは信用するな」ってきつく言われてるから、従う気なんて欠片もねえけどな。


 今日も1日ゴロゴロして過ごすかぁ、と伸びをしていると不意にログが流れる。


『【ダブルハート】の再使用が可能になりました』


 お、やっと来た。

 今日のゴロゴロ計画は御流れになったなこりゃ。

 俺がここで10日も過ごしていたのは、何も脱出出来なかったからではない。【ダブルハート】が使えるようになるまでは、出来るだけ安全な場所に居たかっただけだ。

 さっさと脱出してレティの所に戻るって手も考えたが、もし俺が無茶出来ない状況で何かに襲撃されたらレティ達に被害が出るかもしれない。

 その点ここは良い。誰がどれだけ死んでも俺の良心がちっとも痛まない。

 なんたって、ここの連中は俺に毒盛って来る奴らだからな。


 さぁってさて、逃げる前にバグとの戦闘でパワーアップした俺の能力もう1度確認しとこ。

 目を閉じて、瞼の裏のログを上にスクロールさせる。


『【魔王 Lv11】の特性レベルが上がり【魔王 Lv.12】になりました』

『【魔王 Lv.12】の特性レベルが上がり【魔王 Lv.13】になりました』

………

………

『【魔王 Lv.17】の特性レベルが上がり【魔王 Lv.18】になりました』


 はい、【魔王】のレベルが18になりました。

 いやー、死ぬ寸前まで追い詰められた甲斐がありましたね。

 一気に7つも上がりましたよ? やっぱり、ギリギリ限界のところまで追い詰められるような戦いをするとレベルがむっさ上がるね。

 ついでに、


『魔眼【欺瞞と虚構(ザ・フィクション)】のランクが3に上がり、【偽物(イミテーション)】に進化しました』


『【偽物(イミテーション)

 カテゴリー:魔眼

 レアリティ:D

 ランク:3

 魔力消費:50

 視界の中に偽物を創り出します。

 1度創り出した偽物は、視界の外に出ても消える事はありません』


 魔眼もレベルアップで言う事無しですな―――と言いたいんだが……このランク3の魔眼、ぶっちゃけ微妙なんだよなぁ……。

 正直、俺としては【欺瞞と虚構(ザ・フィクション)】の方が使いやすいんだよねぇ……。

 ああ、そう言えば魔眼はパッと見で普通の目ではないと、魔眼を知ってる人間には直ぐにバレる訳だが、その隠し方がようやく分かった。

 今まで俺が持っていた魔眼は【紛い物の幻(フェイクミラージュ)】と【欺瞞と虚構(ザ・フィクション)】の2つだった。ただ、【欺瞞と虚構(ザ・フィクション)】が完全上位互換だったから切り替えるような事は無かった。

 しかし今回始めて魔眼の切り替えを行ったのだが、その際魔眼を何もセットして居ない状態にすると魔眼特有の、目の奥のキラキラとした輝きが消えて、パッと見では普通の目にしか見えなくなる事に気付いた。

 と言う訳で、今は魔眼を何もセットして居ないから、両目とも普通の猫の目になっている。

 これで、俺は見た目的には完全にただの猫って訳ですよ。


 そいで、今回の最大の収穫は、何と言ってもコイツだ。


全は一、一は全(レギオン)


 俺専用の魔王スキル。

 このスキルの売りは、何と言っても収集箱(コレクトボックス)の中身が充実すればする程強化されて行く事に有る。

 武器を集めれば手数と火力が増え、防具を集めれば俺の防御力が上がる。そして、支援系や回復の天術や魔法を集めれば、オートで俺にその効果をかけ続けてくれる。

 まさに俺を……“収集家(コレクター)”を象徴するスキル。

 

 で、だ。

 この魔王スキルを手にした事で、ちょいとばかり俺の中で心境の変化があった。

 今までの俺の“収集”は、基本的にアイテムを集める事で身体能力強化のボーナスを貰う為の物だった。

 しかし―――この魔王スキルは収集箱に入っている“アイテムの種類数”ではなく、“アイテムの総数”がそのまま能力の強さに直結する。

 そこで俺は、今俺の手持ちのアイテムを限界まで持っておこうと考えた。

 だが、ここは倉庫と言う名の檻の中、アイテムを集めることなど出来ない―――と、普通なら諦めるでしょ?

 今までに多彩なスキルを取得して来た俺に隙は無かった。

 

 まず、えー……とりあえず鉄の剣を収集箱の中で魔力を過剰に込めて叩き折ります。

 すると、“アイアンソード”が“破損した武器2つ”に変わる訳です。それを【自己修復(オートリペア)】にかけます。

 “破損した武器”がそれぞれ1つの武器として修復され、アイアンソード2本が手元に残ります。

 ね? 簡単でしょ?

 こんな感じの事を繰り返し、手持ちの武器防具を大量生産してA~Fまでの武器を全部限界数まで作った。

 修復に時間がかかるレアリティ高いアイテムも、監禁生活のお陰で時間は腐るほどあったしね?

 俺はこれを「不思議なポケットの法」と名付けた。

 「ポケットを叩くとビスケットが2つ」って奴だ。

 いや、もうそれビスケットが砕けてるだけやん? と、今までにきっと何万人も思っていたツッコミを入れて置く。


 あ、そう言えば、収集箱のアイテム全部の所持限界数が倍になってるんだよなぁ?

 素材系は30個だったのが60個まで持てるようになってるし、武具や装飾品は10個だったのが20個に。まあ、流石にレアリティ★のアイテムは1個しか持てないけど……つうか、そもそもこの世に1つしか存在して無い唯一(ユニーク)の武具だからか。

 で、何で増えてるのって話だが……魔王スキルのお陰か?

 いや、でもスキルの説明にそんな効果乗ってないしな? ログを確認してもそれらしい記述はどこにも無いし。

 ………もしかして、【収集家】の能力自体が強化されたって事なのかしら?

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