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5-20 彼女は彼ではない

 男?

 男って言いました?

 つまり、このオッパイバインバインで糸目のお姉ちゃんは、男って事ですかな?

 ……って事はどう言う事だ?

 冷静に状況を整理しよう。

 このビッチさんの言う事が本当だとすると、この人は男。って事は、オッパイは偽乳(ぎにゅう)特戦●で、股にはチン●が生えている。

 それで、欲しい物が「チン●」とな?

 つまり、この人は……


 同性愛者ホモか!?


 色んな意味で身の危険を感じた俺の思考を受けて、バッと【仮想体】が立ち上がってビッチさんから距離を取る。そしてさり気無く尻を守る。

 いや、いやいや、俺だって同性愛者の人が怖くないって知ってますよ? 性欲から切り離されたプラトニックに愛し合う方達だって知ってますよ?

 そんな事は分かって居るが、やはり自分とまったく違う価値観で生きている人は、やはり怖い……。

 そんな俺の反応を見て、無茶苦茶嫌そうな顔をしながら、ビッチさんが指差しと同時に大声で抗議して来た。


「おい待て!! お前絶対違う誤解してる!! とにかく座れ、何もしねえから!」


 何かする奴は大抵「何もしない」と言う。

 性欲で動く奴は「先っちょだけ」とも言う。

 警戒を全開にしながら、さっき座って居た場所より50cmビッチさんから離れた場所に座る。

 ビッチさんが無言で「何故距離を取る」と視線で抗議して来るが、コッチだって(アナ●の)命は惜しい。


「言っとくが、俺は男に興味は無いからな!」


 興味有る奴が正直に「男が好きだ」なんて言う訳はない。つまり「興味が無い」と言っているコイツは男に興味津津って事だ。

 座る位置を更に30cm後ろに下げる。


「何を言ってもどつぼだな……」


 頭を抱えて「はぁぁぁ……」と、今までで1番深い溜息を吐く。

 いや、溜息吐きたいのはコッチなんスけど……。


「とりあえず、ちゃんと説明するから聞くだけ聞け」


 聞くよ。

 もう今更、どんなカミングアウトが来ても驚かねえから。


「俺が召喚されたって話は覚えて居るだろ?」


 勿論。

 七色教の勝手で、不本意にも呼び出されたんでしょ?


「召喚された勇者には、神の加護で新たなる力が与えられる―――って話しだけど、実はそこには1つ落とし穴があってな」


 落とし穴?

 いや、別に特に何かリスクのような物が有るとは思えないが? まあ、勝手にまったく別の場所に呼び出されたって点だけで大きなリスクでは有るけども。


「神の加護ってのは、本来誰しもが生まれた瞬間に授けられる物なんだ。まあ、これが言うところの天の与えた才能(マスタースキル)って奴な? まあ、それが花開いて形になるのかは人によるがな。幼少の頃から芽吹く奴も居れば、一生種のまま終わる奴も居る」


 ふむふむ?

 マスタースキルたらが、どう言う物なのかは良く分からんが、持って生まれた能力って事かしら?

 レティの【神の門の塔(タワーオブバベル)】が多分それだな。

 あれ? 持って生まれたって意味なら、俺の【収集家(コレクター)】もそうなのか?


「で、そこで召喚の話。召喚の儀式ってのは、ただの転移の術式じゃない。元居た場所にある体を1度分解して、召喚元で新しく体を再構成する為の術式らしい。その“再構成”をもう1度生まれたって判断されるらしくって、それでもう1つ神の加護が貰えるって訳よ」


 なんじゃそら?

 ええっと……肉体を1度データ化させて、召喚元でまた物質化(マテリアライズ)してるって感じか? いや、コッチの世界の魔法文明が良く分からんけど、まあ、多分そんな感じだろう。


「ここで、さっきの落とし穴。肉体を再構成するって言っても、元通りにする訳じゃ無く、召喚された人間が最大限に能力を発揮できるように、“最適化された肉体”にして再構成するらしい」


 え……? なにそれ?

 召喚されたと思ったら、まったく別の肉体になってるって事?


 ………


 ……………


 …………………


 いや、それ俺じゃん!!?

 サラリーマンが子猫になってるよ!?

 何それ!? って事は何か!? 俺が子猫になったのは七色教の連中が俺を召喚しやがったからか!!?

 コンチキショウが!!

 そのお陰で、この世界のラスボスやら、同格の化物連中に怯える羽目になっとるやんけ!!

 いや、いやいや、一旦落ち着け。

 話聞いてる時に冷静さを失うなんて、元営業職として恥ずべき事だ。

 今は俺自身の事は横に置いとけ。

 それよりもビッチさんの事だ。

 召喚された事で肉体の変容が起きるのだとすれば―――もしかして、この人、男じゃなくて“元”男なんじゃ……?


「はい、それ! そう言う事! 俺は、元々は男だった。けど、召喚された時に女の体の方が能力を発揮できると判断されて最適化されたって訳」


 じゃあ、今は完全に体は女なの?


「そうだよ。なんだ文句あんのか? 証拠見せたろかコラ」


 ビッチさんが服を脱ぎにかかる。

 だが、丁重にお断りしておく。

 バインバインのおっぱいには興味あるが、もしこの人の言う事が嘘で、股にチン●が付いて居たら俺の精神が大ダメージ。もし体が女だったとしても、それを見た俺が変態扱いされてやっぱり精神が大ダメージ。

 どっちの結果だったとしても俺がダメージ食らう未来しかねえじゃねえか。

 ……まあ、それはともかく。

 この人が手に入れたい物の正体は分かった。

 女の自分を満足させてくれるチン●か。


「何でだよ!! 違うだろッ!!? 性別を元に戻す為の魔道具だよ!! 男に興味ねえってさっき言っただろうが!!」


 ああ、はいはい、そっちね? うんうん、分かってた分かってた。

 つまりこの人は、女の体が嫌で、男に戻りたい訳ね。


「そう、そう言う事!」


 なるほどね。

 そりゃ、まあ、元男としては、女の体のままってのは色々アレだろう。

 俺だって突然チン●が無くなったら大騒ぎだ。取り戻す方法が有るのなら、血眼になってでも探すかもしれない。

 ………いや、猫になっても人間に戻ろうとはそこまで必死になってないし、もしかしたら、俺だったら女としての生を受け入れるかもしれんな……。

 まあ、“もし”の話は良いや。

 で、そのビッチさんの求める性別を戻せる魔道具とやらが、魔王の城にあんのかい?


「らしいって情報を、七色教の連中が教えてくれた」


 言いながら、袋から出した芋を料理ナイフを使って慣れた手つきで剥いて行く。

 ってか、七色教の情報って信用出来るの?

 俺は七色教を爺ちゃん先生から習った程度の知識しかないが、一応世界を良くしようとする人類にとって善の組織って認識だ。

 だが、ビッチさんの話を聞くと、どうにも様子が違う気がする。さっきも「動きがおかしい」なんてセリフが出てたし。


「正直、微妙なところだなぁ……。今までも何処何処(どこどこ)に有るって情報を渡されて、色んな魔族屋敷や隠れ家に侵入したけど、結局見つからなかったし。まあ、代わりに有用そうな魔道具一杯貰って来たけど」


 え……アンタ、そんな泥棒紛い……っつか、直球で泥棒な事をしてたの?

 まあ、相手が魔族だからグチャグチャ言うつもりも、説教するつもりはないが。いや、だって、俺も結構似たようなもんですし……。


「ただ、七色教の連中が言うには、今回は信憑性が高いとさ。まあ、どの程度その言葉が信用出来るのかは怪しいところだが」


 ビッチさんは、正直七色教をそこまで信用して無いって風だな? でも、そこ以外で情報を集める事が難しいから、仕方なく言われた通りに動いてるって感じかな?

 納得したくないが、納得するしかない。そんな言いようの無い苛立ちが言葉の端々から伝わって来る。


「飯作ったら、少し周囲の様子を見て来る。お前は先に食ってろ」


 うん?

 うん、分かった。

 正直、【仮想体】に食った振りさせるのもしんどいし、飯は1人で……1匹で食う方が気が楽です、はい。


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