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4-7 猫は仔豚に出会う

 若干雰囲気と顔の怖いメイドさんに連れられ(摘ままれ)て馬車に乗る俺。

 どう言う機能が働いているのか不明だが、馬車の中は妙に暖かく良い匂いがする。

 そして、椅子に座るドレスを着た―――子豚……?

 四肢の先の蹄と、小柄ながらふっくらした体。そして己が豚である事を主張する特徴的な豚っ鼻と、(しお)れたように垂れ下がった耳。

 やたらと瞳だけがキラキラしていて、無垢な赤ん坊のような美しさが瞳の奥で輝いていて、そんな豚さんの瞳がメイドの手に吊るされた(おれ)をじいっと追いかけて来る。


 なんで馬車に豚が?

 ドレスを着てるって事は、誰かのペットって事かな? 元の世界でもペットに服を着せる飼い主はいっぱい居たし。

 ただ、猫となった俺の私見を言わせて貰えば、服なんぞ鬱陶しいだけで邪魔だ。俺も元人間として「いつまでも裸ってどうなのさ?」と服を着てみた事があるが、全身の毛が絶えず何かに触れているのがイライラして落ち付かず、動く時には服がアホのように邪魔になる。と言う訳で、10秒で脱いだ過去が有ったり無かったり。


 まあ、そんな事はどうでも良いか……。

 ともかく、豚がドレスを着ている。若干……いや、かなりピッチピチになってるけど。


 って言うか、椅子に“座って”は居ないな。普通に4本足で立ってる。

 子豚の大きさはバレーボールくらいかな? まあ、それでも俺の倍っくらいある。


 俺が子豚の存在にクエスチョンマークを浮かべていると、メイドが俺の四肢を綺麗な布で軽く拭き、子豚の足元(?)の床に置く。

 あら? 馬車の中なのに、中々に良い床張りしてんじゃないの。流石“御高い”感じの馬車だわ。

 とりあえず、言うべき事を言っておこう。


「(飼い豚(ペット) ですか(オア)食用ですか(ポーク)?)」


 ビーフオアフィッシュ? くらいの気軽さで訊いてみた。

 まあ、訊いたところで伝わる訳―――


「ペットでも食用でもありませぇん……」


 そうか。


「ミ?」


 え?

 あれ? 今、俺の問いに返答しました?

 いや、ちょっと待って? それに今返答したの誰よ? メイドさんは無言のまま俺の後ろに立ってるし、外の騎士さん達も周囲の警戒でそれどころじゃねえし。

 いやいやいや、さっきの声はあれだよな? 馬車の中から聞こえた女性の声の片方。濁った声の方だ。

 その声の出所をキョロキョロと見回してみるが、馬車の中にはメイドさんと俺と子豚の3人……1人と2匹しか居ない。

 どう言う事だ? 透明化か? 存在を隠蔽する俺の【隠形】のような能力でも使ってる……?

 色々考えてみたが、その答えはもっとも単純で、見たまんまだった。

 馬車の中には俺を除けばメイドと子豚だけ、そしてメイドが喋っていないとなれば、答えは1つ―――


「喋ったのは(わたくし)です」


 子豚が言った。


「(喋ったぁッぁアアアアああああッ!!!)」


 一昔前の●ックのCMの子供を彷彿とさせるくらいの勢いで叫んだ。

 いや、おち、おち、おちちち、落ち付け俺。冷静になるんだ。

 スーハーッとゆっくり深呼吸を3回して、ようやく冷静さを取り戻す。

 はぁ……よし。


 ですよね。

 そうなっちゃいますよね。

 まあ、アレじゃん? よくよく考えたら、猫の俺だって喋ってるんだし、豚だって喋る事もあるんじゃん?

 ………いやいや、それで納得するのは無理がないか? 俺が喋ってるって言ったって、それは“猫語で”って話だ。それに対し、この子豚ちゃんは普通に人間の言葉を話している。同じ“話す”でも意味合いが全然違う。


「(え? 何? 豚がなんで喋ってんの?)」


 俺は猫である自分の事を棚に上げた。


「豚じゃありませぇん……」


 いや、豚だろ。

 誰がどの角度から見ても豚じゃん。

 ……そこでふと1つの可能性が俺の頭の中で浮かぶ。

 俺と同じように……俺以上に上手い事喋っている豚……って事は、もしかしてアレじゃない? この子豚ちゃんもしかして、俺と同じ―――転生者か?

 重要な事なので直球で訊いてみる。


「(もしかして、子豚ちゃんも死んで転生したのか?)」

「だから、豚じゃありませぇん……」


 その(くだり)はもう良い。と思ったが、若干泣きそうな目になりながら言うので、一応「ゴメンなさい」しておく。

 ついでに、子豚ちゃんが豚を否定する度に俺が何を言ったのか分かるようで、メイドさんが殺人鬼みたいね目で睨んで来るのが超怖い……。元々目力が強い人が睨んで来ると、股がヒュンってなる。


「(それで豚……じゃない、君は転生者なのか?)」

「転生……? 何の事でしょうか?」


 あれ? 違うのか?

 子豚ちゃんが嘘を言ってるって展開じゃなければ、この子は元々そう言う生き物なのかな? いや、そう言う生き物って、「喋る豚」ってどんな生き物だよ。


 色々思うところはあるが、椅子の上と下で話すのは疲れるので、子豚ちゃんが座って(?)いる椅子の上にヒョイッとジャンプで飛び乗る。

 我ながら猫らしい見事なジャンプだった。まあ、町の防壁ですら飛び越えた事のある俺にとっては余裕のよっちゃん●カですけどね?

 とかドヤ顔していたら、立ったまま俺と子豚ちゃんの会話(?)を見守っていたメイドさんが有無を言わさず俺をむんずと掴み上げる。


「姫様と同じ椅子に座るなどと!」

「ミャ?」


 姫?

 鬼の形相で怒るメイドが気にならない程その言葉が引っ掛かる。

 メイドに再び宙吊りにされた俺を不憫に思ったのか、子豚ちゃんが慌てて言う。


「ネリア、良いの。(わたくし)が無理に呼んだのだから」


 言われてメイドさんは一瞬「グヌヌ」と言う顔をして、それから渋々と言った感じで俺を子豚ちゃんの横に降ろす。


「姫様がそう仰るのでしたら」


 また姫……?

 え? 何? もしかしなくても、この子豚ちゃんの事を呼んでますよね?


「猫さん失礼しました」


 子豚ちゃんが小さな体を折り曲げてペコっと頭を下げる。

 豚なのにえらい礼儀正しいのね。


「実は、喋る猫さんを外で見かけたので、ネリアにお願いして連れて来て貰ったんです。強引な連れ方をして申し訳ありませんでした」


 そう言ってもう1度頭を下げる。

 ちなみに実際に強引に俺を連れて来たメイドさんは「猫相手に知った事か」とふんぞり返っている……ような気がする、雰囲気が。


「(いや、それは別に良いんだけどさ……。姫って?)」

「はい、私は一応、元ツヴァルグ王国国王の娘ですので姫と呼ばれるんです。……今は全然姫じゃないんですけどね」


 国王の娘だから姫。それは、分かる。

 じゃあ、なんで豚なのよ? え? 何? 両親も豚ってオチかしら? 国の1番偉いのが豚なの? 大丈夫なのそれ? 大丈夫じゃないよね?

 自分で考えても分からないので訊いてみよう。


「(ちなみに元国王様も豚なの?)」

「いいえ、お父様は牛です」

「(予想外ッ!!!?)」

「お母様は鶏ですよ?」

「(どう言う事!!? もう、俺現実が分からない!!?)」


 牛と鶏が配合されたら子豚が生まれたって事だよね? え? え? どう言う事!? どんな突然変異だよ!?

 いやいやいやいやいや! それ以前に国王が牛ってのがヤバいだろ!? その国どうなってんの!? コッチの世界だとそう言うの普通なの!?


「あ、でも、本当はちゃんと人間なんです。私もお父様とお母様も」


 え……?

 人間が獣になったって事?

 ……境遇的に凄い親近感だわ。


「こんな姿になったのは、この国を支配する魔王様……バジェット=L・ウェイル・ユラー様の御力なんです…」

「(魔王……!)」


 無意識に頭のスイッチが切り替わる。

 魔王の話は俺にとって重要だ。

 なんたって俺は



――― その魔王をぶち殺しに来たんだからな!



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