4-3 人殺し(まあ、別に気にしないけど)
人を殺してしまった―――と、本来ならば落ち込んだり悩んだりするところなのだろうが、今まで散々異形とは言え人型の魔族をぶっ殺しまくったから、特に罪悪感とか湧かないし、良心も痛まない。
『【人間 Lv.1】
カテゴリー:特性
レアリティ:F
能力補正:無し
効果:天術使用可
神聖属性強化』
お、特性取れたじゃん………って、人間弱ッ!? 能力補正無しなの!? レアリティが最低ランクだし!?
………何コレ?
効果もさぁ……“天術使用可”? そんな物無くても普通に使えますし。
まあ、でも神聖属性強化だけは一応利点なのかな? いや、でも俺“超神聖属性”なら武器と天術持ってるけど、普通の神聖属性は持ってないし、やっぱりコレも意味無いな……。
ヤバいな……元人間として言いたくないけど、人間超絶役に立たない……。
本当に言いたくないけど、そりゃ、魔族に世界支配されるわ……。
ん? ちょっと待って。
特性で天術が使えるようになってるって事は……もしかして天術って人間用の魔法って事なのかな? だとしたら、俺の手元に天術が少ないのは当然だ。だって、俺人間と敵対するって無かったからな。
っと、まだログが流れてる?
『条件≪人間と魔族を両方殺す≫を満たした為、以下の特性が解放されました。
・特性【処刑人】』
『【処刑人 Lv.1】
カテゴリー:特性
レアリティ:D
能力補正:筋力(効果・中)
効果:人型の敵に対してのみ、スキル・魔法・天術の防御を無視
魔力消費時の支払い全て倍』
【処刑人】……響きが凄い恰好良い……。
けど、効果は結構微妙……。人型特効はとても良いと思うが、引き換えに魔力消費倍は痛すぎるだろ?
能力補正も効果が“中”なら圧倒的に【魔王】の能力補正の方が優秀だし。
いや、っつうか色んな面で【魔王】の特性が優秀過ぎて、他の特性がほぼ産廃だよ。特性の装備枠がもう1つ増えたりしない限りは、【魔王】1択でしょ。
よし、ログの確認が終わった。
馬車の方は【仮想体】に任せて大丈夫そうだな? ぶっちゃけ俺が直接フォロー入れなきゃならないような状況にはなりようがないし。
さってと、じゃあ俺はあっちに挨拶してくるか。
コソッと木の枝から降りて移動を開始する。
……まあ、俺の移動の事は横に置いておいて、とりあえず【仮想体】の方の話。そちらの様子も【バードアイ】で見ているのでぬかりない。
先程賊の1人を【スラッシュ】で真っ二つにした事に、未だ皆様驚きから立ち直ってないらしい。
「お、おい……今の【スラッシュ】……か?」「詠唱は…? それに天術名の発声も……」「いや、そんな事より、なんなんだよあの威力は!?」「そうだよ! 体が真っ二つになるなんて、明らかに異常だろうが!!」
ええ、なんかスイマセンね?
詠唱とか何とかは無いんですよ俺。だって唱えて無いし。収集箱から取り出してるだけだし。
威力が異常? 【魔王】の魔力でぶっ放すとあんな感じになるんですよ、本当スイマセンね。
「奴に天術を使わせるな!」
リーダー格らしき男が言うや否や、賊が二手に分かれて片方が騎士達と睨み合い、もう片方が【仮想体】に突っ込んで来る。
あらら。ちょっと脅かしたら距離取って天術使うと思ったけど、逆の展開になってしまったか。
まあ、向かって来るならしょうがない。「人間相手だから穏便に済ませよう」なんて真っ当な心は俺には無い。むしろ、「ぶち殺して経験値にしてやる」とか思ってるのが俺だ。
そうだ! 丁度良いからアレ試してみるか?
【属性変化】
収集箱から取り出した武器や防具に、属性を後付けで付与できるスキル。
クルガの町から旅立って暫く経つけど、使う機会無くてまだ試して無いんだよねこれ。
突っ込んで来る賊達に向かって、【仮想体】が鉄の剣を抜く。
属性付与―――まずは、ベーシックに“炎”だ。
鉄の剣の刀身が一瞬で鮮やかな赤に塗り替えられ、剣の内側から炎が溢れだして刀身を包み込む。
「……なんだ!?」「エンチャント!?」「まさか、魔法剣か……!?」
魔法剣……か。響きは好きだが、別に魔法付与してる訳じゃねーんだけど……。
魔法剣ってのは、アレでしょ? 武器による攻撃に、そのまま魔法の威力が乗っかる奴でしょ? 【属性変化】はあくまで属性値を付与するスキルだ。その効果は、俺がスキルを止めるか、収集箱にそのアイテムを引っ込めるまで持続される。
まあ、とりあえずどんな感じなのか使ってみよう。
グッと一瞬の溜めから、弾き出されるように【仮想体】が踏み出す。
全身鎧の鈍重さを嘲笑うかのように高速な一歩目。
ドンッと土煙が巻き上がり、一秒もかからず賊の1人との間合いが詰まる。
「ぇ……?」「……速――ッ!?」
反応を許さない高速の踏み込みから、足を滑らせながら横を通り過ぎ、擦れ違いざまにその胴体に炎を纏う剣を押し当てる。
肉や骨の硬さの抵抗を感じる事も無くメリッと刃は胴体にめり込み、そのまま容赦なく剣を振り抜く―――。
剣に付与された炎に巻かれ、燃えながら男の上半身が空中を舞い、残った下半身も真っ二つにされた衝撃に燃えながら後ろに吹っ飛んで行く。
『【人間 Lv.2】
カテゴリー:特性
レアリティ:F
能力補正:無し
効果:天術使用可
神聖属性強化』
特性のレベルが上がったけど、【人間】の特性はレベルを上げる旨味が欠片も無いな……。
「ヒッ!?」
隣に居た賊が、仲間が燃えながら真っ二つになった事にビビって動きが止まる。
敵が目の前なのに動き止めちゃダメだよお兄さん。
『【属性変化】により、付与属性を“雷”に変更します』
鉄の剣の刀身が一瞬色を失い、次の瞬間には金っぽい黄色に塗り替わる。そして―――そこから迸る雷光。
動きの止まった男の腹部を剣が貫く。
「ゴゥえッ……!?」
即座に貫いた刃から雷が男の体に流れ、パチンっと空気が弾ける音と共に体がビクンッと1度跳ねて、全身所々を黒い炭にして男は絶命した。
うーん……なんか、属性付与してもしなくても大して違いが無いように思える……。
俺が強くなってるからってのもあるが、人間の体が脆過ぎる。魔族ならもうちょっと頑張ってくれるのに。
「ォああああッ!!」
物凄い気合いの入った叫びと共に【仮想体】の背後から賊の1人が襲いかかる。
え? 何? 背後から攻撃するなら叫ばない方が良いんじゃない? まあ、どっちにしても【バードアイ】で場を俯瞰で見ている俺には意味無いけど。
【仮想体】が、後ろに突き出すように真っ直ぐな蹴りを放つ。
迷わず突っ込んで来ていた男はドテっ腹に蹴りの直撃を受ける。
グシャッと男の腹の中で内臓が潰れ、次の瞬間―――蹴りの威力を受け切れなかった体が悲鳴を上げるように、腹に穴が開いた。
「ゲブぁッ!!!?」
あ……体貫通しちゃった……。
これでもかなり手加減したのに。カウンター気味に決まったのが悪かったな。
今更ながら気付いた。
俺……自分じゃあんまり実感なかったけど、“普通”の奴等に比べればクソ程強くなってるんじゃない?
事有るごとに苦戦して死にかけるから、どこか自分が世間的には精々“そこそこ”な部類だと思っていた。けども、俺が喧嘩している相手は魔王だの最強だのの肩書ばかりな訳で、そいつらとやり合う俺が“そこそこ”なレベルな訳ねえんだよ、うん。




