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3-19 塔へ

 朝も早よからクルガの町を出発し、馬の背でパカポコ揺られる事数時間。

 ようやく、俺達の眼前に目的地である“なんとかの塔”が出現した。


 出発の際、妙に馬達が暴れて大変だったりしたが(多分俺の気配にビビった)、馬での移動は(おおむ)ね順調で静かな物だった。

 魔族は残ってたとしても、もうこの国の魔族に襲って来るような元気は無いだろうし、魔物は俺が一緒に居るから怯えて近付いてすら来ないし。

 あまりにも静かなものだから、アザリア達が「何かあったのかしら?」と皆して首を傾げていたくらいだ。

 で、若干馬上での揺れにウンザリして居た頃、森を抜けた。


 塔―――。


 魔王の居城にされていた、元々は神様への祈りを捧げる為の塔。

 天まで届く―――とまでは行かないが、4,50mくらいの高さは有りそうだ。元の世界で言えばそこまで騒ぐ高さではないが、コッチの世界の建造物の大きさを考えれば、確かに「神様の所まで届いている」とか思われていたのかもしれない。

 まあ、それを悪の権化のような魔王に奪われてれば世話ないけど。

 塔まで30mくらい近付いたところで、アザリアが馬上で俺を抱きながら辺りを見回す。


「剣の勇者はどこでしょうか?」


 おっと、そう言えば勇者モドキは“てんいじゅつしき”で先に来ているって設定でしたっけ。

 アザリアの言葉に、皆も視界を巡らせて金色の鎧を探す。


「待ち草臥(くたび)れて先に塔に行っちまったんじゃ……」

「一応私達が行くまで待って置くように言ってありますが……無い、とは言い切れませんね。あの人、勝手に動くの大好きですから」


 勝手に動くの大好きな訳じゃな………い、とも言い切れないか、うん。

 まあ、仕方無いよ。だって俺、束縛嫌いの猫だし。


「勇者様なら、きっと呼べば来てくれますよ!」


 ユーリさんが信じ切った顔で言うが、そんなワンコのような扱いをされるのはそれでそれで微妙なんですが……。

 でも、姿見せない訳には行かないし、呼ばれて飛び出てなんとやらだ。

 近くの木陰にいつもの手順で勇者モドキを創る。

 そしてヒョッコリ黄金の鎧が木陰から出て来る。


「あっ、居た」

「相変わらず気配も無く現れるな……」

「ゆ、勇者様…! えっと…その、ほ、本日もお日柄も宜しく」


 ユーリさんだけが堅苦しい挨拶を始めたが、多分突っ込まない方が良さそうなのでスルーする。

 馬から降りて迎えてくれた皆に金色の鎧がコクっと小さく頷く。


「お待たせしました剣の勇者、一々言う必要は無いですが、一応アレが目的の豊穣の塔です」


 うん、見れば分かる。


「今まで魔王が居座って居ましたから、中がどうなっているかは分かりません」


 話の流れ的に「じゃあ、行きましょう」と言いそうな雰囲気。

 それはちょっとまずくない?

 俺の目的はアザリア達とは違い、塔の調査ではない。まあ、広義の意味ではあっているかもしれないが。

 俺が塔に来たのは、塔に残っているであろうレアなアイテムの回収だ。

 出来るなら現物も貰ってしまいたいが、それだと色々後が面倒臭い。ですので、最悪収集箱の登録だけでも良い。

 しかし、収集箱への登録は俺自身が触れなきゃいけない上に、収集箱に入れるとアイテムが消える。それを人に見られるのは何かと具合が悪い。と言う訳で―――俺1人だけ先に行って、アイテムをピックアップ出来ないかと考えました。

 黄金の鎧が、手を向けてアザリアの話をぶった切る。


「え? なんですか?」


 何とか「先に行く」と伝えようとジェスチャーで頑張ってみる。


「だからなんですか? 無駄に時間がかかるから喋って下さいって言ってるじゃないですか!」


 クワっと微妙に鬼の顔になったアザリアに怒られた。

 その形相に、腕の中で(おれ)が「ミャッ!?」とビビると、鬼の顔が即座に引っ込んで母親が子供に向けるような優しい顔になった。


「驚かせてゴメンね、猫にゃんに怒ったんじゃないよ」


 ……うん……まあ、ええ……はい、怒られたのは俺です。

 俺の困った困った感が反映され、【仮想体】が考え込むような仕草をする。

 そんな姿を憐れんだのか、ユーリさんが鼻息荒く手を上げる。


「はい、なんですかユーリさん?」

「わ、私が勇者様の言いたい事を当てて見せます!」


 ジェスチャーで言葉を伝えようとしてる俺が言うのもなんだが、なんかクイズ番組の1コーナーみたいな感じになって来てるよね……まあ、良いけど。

 とりあえず、やる気を出して【仮想体】の言葉を汲み取ろうとしてくれているユーリさんに従って、もう1度ジェスチャー開始。


「えっと……さき…に、ええっと……行く? あっ、『先に行く』って言ってるんですね!?」


 大正解!!

 思わず、ユーリさんの肩をポンっと叩いて、もう片方の手で称賛のサムズアップをしてしまう。

 それに対しユーリさんは、【仮想体】の手(正確には手甲)が触れている自分の肩をチラチラ見て顔を赤くしている。

 うむ、恥じらう女子は可愛らしいですね! 俺が人間だったら何か別の展開があったのかもしれませんが、残念ながら俺はこんな子猫なのでスイマセンね。

 そして、アザリアにはユーリさんの俺の言葉を読む力を学んで欲しいですね、ええ。え? じゃあ、俺が喋れるようになる努力しろって? いや、それはあれでしょう。だって俺猫ですし。猫が喋ったら絶対気持ち悪いし、うん、本当。決して俺がその為の努力をするのが面倒臭いとかそういう事じゃないから、ええ、本当本当、うんうん。


「え? なんですか? 剣の勇者、貴方先に塔に行きたいんですか?」


 うん。


「じゃあ、何の為に私達を待ってたんですか……」


 それはね、別に先に来てた訳じゃないからだよ―――と真実を話せる訳も無いので、とりあえず「アザリアが待ってろって言ったからだよ」と言う事にしておく。

 そう言う視線を【仮想体】に送らせていると、流石にアザリアにも伝わったようで。


「ああ、はいはい、そうですよ! 私が待ってて下さいって頼んだんですよ! だって仕方無いじゃないですか、貴方みたいにパッと移動できる訳じゃないんですから! 大体転移術式なんて便利な物を使えるなら、私達を連れて行ってくれたって良かったじゃないですか!!」


 一言一句、返す言葉が見つからない程にその通りですな。

 まあ、根本的なところで“てんいじゅつしき”なんて物持ってないんだけど。

 アザリアがプリプリ怒りだしたので、逃げる様に……様にって言うか逃げる為にアザリアの手の中からスルッと脱出して【仮想体】の腕に跳び移る。


「あっ、猫にゃん!」


 じゃあ、先に行って来るから待っててね。と手を上げてそそくさと塔に向かう。


「もう! 話は終わってませんからね!!」


 ……絶対後で説教祭りだな……超絶面倒臭い。

 アザリアはもうちょっと(おれ)に向ける優しさを【仮想体(おれ)】にも向けた方が良いと思うの。

 ……まあ、良いや。気持ち切り替えて塔の探索に意識を集中しますか。


 近付く程に巨大に見える塔。

 人の目で見てもデカイのに、子猫の目で見る更に大きく感じる。

 何の素材で出来てるんだろうこの塔? レンガ……じゃないよね? 長い年月で薄汚れて居るが、表面が陶器のようにツルっとしていて、大理石やらの“御高い”石を連想させる。

 塔は、巨大な円柱がドスッと地面に突き刺さったような姿をしていて、10m辺りで1周り小さい円柱になり、30m辺りで更に小さい円柱になっている。

 ………改めて見ると、ウェディングケーキみてぇな形してんなこの塔。丁度色も良い感じに白いし。


 出入りできそうな場所は、1番下の扉だけか……。途中には窓らしき物が有るけど、小さくて人の体は通れない。まあ、でも猫の俺なら窓から脱出する事は出来そうだ。高所からの落下も【アクセルブレス】を発動して重力無効にすれば怖くないし、緊急時の脱出路として頭に入れておこう。


 ヨシ! んじゃ、レアアイテム求めて塔の探索を洒落込みますか!



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