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冒険者

幕間的なお話となります。

戦士の剣が空を切る。

魔法を付与されていたが、体に当たらなければ意味がなかった。

「おのれ、卑怯な。」

戦士が思わず口にした言葉に、死霊が過剰に反応した。


「ひ・・きょう・・だと?」

ようやく言葉を思い出したかのように、死霊は空洞の瞳を戦士に向けていた。


「卑怯だと・・・。卑怯はお前だ、ゲルマン!」

憎悪の矛先を向けるように、死霊は戦士の体を突き抜けていた。


死霊に体を突き抜けられた戦士は、そのまま床に倒れこんでいた。

「ちがう。ゲルマンじゃない。どこだ?ゲルマン。」

死霊は自身の目の前にある炎の塊を破裂させていた。


その瞬間、戦士の体が痙攣し、二度と動かなくなっていた。


「治療を」

魔術師が素早く指示していた。


女司祭が、戦士に駆け寄り、呪文を唱えるも、悲しそうに頭を振って叫んでいた。


「だめ!あの攻撃は魂を抜くものだわ」

女司祭は、全員にその危険性を訴えていた。


「しかし、ゲルマンとはいったいなんだ?こいつは何を求めている?」

暗殺者アサシン風の男が、小さくつぶやいていた。


「そこにいたか、ゲルマン。」

その呟きに反応したのか、死霊が暗殺者アサシン風の男に向けて、急降下していた。


「あぶない!」

女司祭が叫ぶ前に、暗殺者アサシン風の男は自身のみに危険を感じたのか、素早く身をかわしていた。


「ゲルマン。のがさん。」

しかし、死霊は体を分裂させて、暗殺者アサシン風の男の体をとらえていた。


「なんと、そのようなことまで・・・。」

魔術師は目の前で起こった事態に驚きの声を上げていた。


暗殺者アサシン風の男も戦士と同じく、床に倒れてしまった。


「また・・・ちがう。ゲルマンめ、どこまでも卑怯な・・・・。」

相変わらずいろいろな方向を見ながら何かをつぶやく死霊だった。


「このままでは・・・何とかならんか!」

剣士が攻撃をしつつ、状況の改善を求めていた。


しかし、その答えを剣士は聞くことができなかった。

剣士の放つ剣圧をものともせずに、死霊がその手を伸ばして、剣士の体をつかもうとしていた。

しかし、自らのうでに手がないことを知ると、死霊はその手を作り出していた。


そして再度剣士の体をつかんでいた。

その瞬間、剣士の体から青白い炎が立ち上り、死霊の手と共にはじけ飛んでいた。


ゆっくりと倒れる剣士の体。

そこにもはや生命の営みは感じられなかった。


「カレン。あなたは逃げなさい。あのものは私が何とかします。あれがここから解き放たれると、ここ一帯が壊滅するでしょう。何とかしますので、あなたは早く逃げるのです。」

魔術師が女司祭に撤退を指示していた。


もはや、パーティは女司祭と魔術師のみになっていた。


しかし、魔術師のその声に、真っ先に反応したのは死霊だった。


「カレン?カレン?どこだ?カレン?僕だ。カレン?出てきておくれ。無事だったんだ?よかった。よかったよ。」

そう言って探し回る死霊に向けて、魔術師は呪文を詠唱していた。


死霊はしばらく探し回っていたが、探しきれないと判断したのか、より一層の憎悪を燃やして魔術師をにらんでいた。


「よくも、よくも。お前がカレンを隠したのか?だせ。カレンを返せ。」

死霊の手が魔術師の体に届くよりも早く、魔術師の詠唱が完了した。


封印シール

魔術師の足元に魔法陣が浮かび上がり、その中に死霊が吸い込まれていった。


「おのれ、またしても邪魔するのか!カレンを返せ!」

死霊の呪詛の言葉は、自身の体と同じように、魔法陣の輝きの中に吸い込まれていった。




「アドルフ。あなた。いったい何をしたの?」

女司祭が駆け寄り、崩れ落ちた魔術師を抱きかかえていた。


「カレン。私はこの死霊を封印するのに、自身の生命を生贄にしたんですよ。ここに祠を立てて、この魔法陣を目立たないようにしてください。この魔法陣が消されたときにまたあの死霊が復活します。それと、ラトヒを覆うように結界を張っておいてください。あなたなら可能でしょう。しかし・・・カレンを返せですか・・・。まるで私が、あなたを・・・」

魔術師の言葉は最後まで語られることはなかった。


「アドルフ。あなたの意志は私が必ず・・・・・。」

そう言うと、女司祭は仲間の亡骸を集めようと振り返った。


そして彼女は自身の目を疑った。


「そんな・・・。いくらなんでも・・・・。」

その視線の先には、先ほど息絶えた戦士が、ゆっくりと起き上がる姿があった。

剣士、暗殺者アサシンとつづき、女司祭は、素早く聖水を魔術師にかけていた。


苦悶の表情と叫びを残し、魔術師は灰となっていた。


「ごめん。みんな。」

女司祭は、涙をぬぐい、仲間に向けて魔法をかけた。


解邪ディスペル


一瞬にして灰になった仲間たちを眺めながら、女司祭は泣き崩れていた。


次は6/28 0時を予約します。

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