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宮廷魔術師

ようやく主人公の登場です。

「デルバー。相変わらず精が出るな。また、あれか?」

老魔術師が突然目の前に現れていた。


「アブラハム老師。突然で驚くではないですか。許されているとはいえ、そうたびたび使われては、そのうちお叱りを受けますぞ?」

わしは少しおどけて見せていた。


宮廷内にあって、移動に魔法は厳禁だった。


唯一その特例により許されているのが、目の前の人物。

先王の教育係にして、筆頭宮廷魔術師。

思わずそんな肩書きを思い出していた。


「まあ、その時はさっさとお主にこの椅子を渡すまでだ。」

そう言ってアブラハム老師は片手をひらひらと動かしていた。


「付与術師室長ですか?いりませんわ。固そうじゃし。」

わしは両手を上げていた。


「おぬしも欲がないな。座り心地は悪くないぞ?ただ、締め付けが悪くてな。身動きが取れん椅子じゃわ。」

肩をすくめるアブラハム老師の顔は、確かにいやそうだった。


「そのような椅子には興味ありませんな。それにわしはそんなところに座っていいものでもないしの」

思わず本音が出てしまった。


「お主、まだあのことを気にしておるのか・・・。あれはおぬしが責任を感じることではなかろう?」

心配そうに見つめるアブラハム老師の顔に、わしは申し訳なく思ってしまった。


「確かにそうかもしれません。じゃが、それでもわしが何とかできとったかもしれんのです。そう思うと、いてもたってもいられんのです。」


それしか方法が思いつかん。

責任はないと言われて、はいそうですか。と割り切れるほど、わしの頭はやわらかくはなかった。


「わしが、こうしている間にも、あのバカ兄弟子は死霊術の奥義とやらを目指して、どこぞをさまよっているに違いないのです。さっさと連れ戻してやらないと、師匠に顔向けできので。」

まったく、どこに行ったのか。


名前を変え、姿を隠す兄弟子の行方は、全くと言っていいほどつかめなかった。

唯一の手がかり。


不死者アンデッドの噂。


これを頼りにするしかなかった。そのために、冒険者組合にも情報を買うようにしていた。


「おぬしも頑固だからな。まあ、無理はするな。わしの力が必要なときはいつでも言うがよかろう。もっとも、おぬしの場合、王にいうた方が早いかもしれんがな。」

そう言って笑うアブラハム老師だった。


「その件に関しては、老師のお口添えがあったからこそですが、逆にわしの自由も奪ってますので、感謝は致しませんぞ。」


現国王の教育係にわしを推薦したのも、この老師だが、そのおかげで、気軽に宮廷から出られなくなってしまった。


そして、探索の際には、いちいち面倒な書類を書かなければならない。

今も、その書類のために、こうして遅くまで残っているというのだ。


感謝もするが、恨みもする。

そんな感じだった。


「それで、今回はどこに行くつもりだ?」

話しを切り替えるかのように、アブラハム老師はわしの書類を眺めていた。


「ほう。ヴィンター公爵領、ラトヒか・・・・。いわくつきのところじゃな。」

その口ぶり、何か知っているということか。さすがは筆頭。


しかし、そう思っても、口には出せない。残念な思いをするからだ。


「ふむ。おぬしの考えを当ててみようか?」

老師は意地悪そうな笑顔を見せていた。


「結構です。だいたい、知っていても教えない。といわれて、毎回聞くほどわしも愚かではないですぞ?自分で調べることに意義がある。それは認めます。だったら、思わせぶりな態度を取らないでほしいものですな。」

鼻息荒く、告げていた。


「ふむ。それは残念だな。弟子のそういう顔を見るのが、楽しみの一つなのじゃが。」

悪趣味な爺さんだ。


こんな爺さんになってはいけない。


「フム。おぬしの心の声にこたえてやろう。なってはいけないと思うほどなってしまうもんじゃ。知っていることを隠して調べさせるのと、知っていることを明かして調べさせるのと、どちらの行動が意欲を湧かせるか考えてみるがよかろう。わしは意地悪をしているわけではない。むしろ、調べられることを教えておるのじゃ。調べればわかることのみを教えておき、後は見守るのだ。これが大事なことなのじゃよ。」


正論だった。

ただ、それはまやかしの正論だ。


「で、本音はどうなのですかな?」

わしは素直に聞いていた。


「本音というか?そうじゃな。おぬしが聞きたいのであれば・・・、そうじゃな。面白いからに決まっておろう?この世のことは、驚きに満ちておる。それを知ることがわしの最大の楽しみじゃ。おぬしがどんな思いで調べるのかを想像するだけで、楽しくなる。そして、その成果を聞くことで、わしの知らないことを知ることができるかもしれない可能性に楽しみを感じる。弟子の成長をみる。わしの興味はそこに尽きる。」

得意げに語るその姿は一片の罪悪感もなかった。


勘弁してほしかった。


それでも、老師の導き方はたいしたものだった。

これまで、その弟子たちは広く世に出て活躍している。わしの師匠も元をたどれば、この老師にたどりつく。


「もういいです。今回は少し長くなるので、書類もたくさんあるのです。いい加減に仕事させてくれませんか?老師の相手もつかれますので。」

丁寧にあしらった。


「つれないの。デルバー。よし仕方ない。1つだけ教えてやろう。あそこは、疫病で壊滅したとあるが、それは嘘じゃ。後は自分で調べるがよかろう。さぞかし怨念が深いとみるぞ。」

そう言ってアブラハム老師は瞬時に消えていた。


「疫病じゃない?怨念?」

さっぱりわからなかった。一夜にして壊滅した街、ラトヒ。当時拡散を恐れたヴィンター公爵が街全体を燃やし尽くしたと記録にはある。そこがウソなのか?疫病というのがウソなのか?そもそも壊滅したというのがウソのなのか?


「余計に混乱するじゃないか!」

書類の山に拳を振るい、思わずわしは吠えていた。


次は12時を予定します。

はい。あと2話までしかかきあげていません・・・・。

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