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第七話:友と闇

 廊下に時雨達の足音が響く。

「あ、あの」

 不意に葵がカティアに話しかけた。

「何でしょう?」

「な、何でお姫様があたし達の案内役を?何か理由があるんですか…」

「理由…ですか?そうですね」

 カティアは少し考えると、にこやかに笑いながら答えた。

「あなた方といろいろと話してみたかったからでは駄目ですか?」

「そんな、理由で?」

 予想外の答えに拍子抜けした葵だったが、カティアは笑っていた。

「私…こういう身分ですから、同い年や歳の近い友人が余りいないんです。ですから、あなた方とそういう関係になれたらと…」

 暗い表情で話すカティアに葵は近づき手を差し出した。

「羽原葵よ。葵でいいわ」

「え?」

「ほら、握手」

「あ、はい!カスティーア・リル・ディーネです。カティアと呼んで下さい」

「よろしくね、カティア」

「はい、葵さん」

 にこやかに笑う二人。

 そんな二人を見ていた、鷹紀と華音もまた、カティアに近づいた。

「玖潟鷹紀です。よろしく、カティアさん」

「あの、深嶋華音です。よ、よろしくお願いします、カティア…ちゃん」

「はい、よろしくお願いします」

 互いに自己紹介をし、笑顔を見せる四人。

 たが、そんな中でもただ一人、時雨だけはその輪に入らず端からその様子を見ていた。


「のぉ、フィルナ」

「あら、何です?貴方」

 自室に戻ったヴァロンはため息混じりにフィルナに問いかけた。

「わしの判断は、間違っていたと思うか?」

「…それは、あの子達の事?カティアの事?」

「…両方じゃ。仮に王とはいえ、わしの独断とも言える判断で今回の事を決めてしまった。じゃから…」

「でも、あの子達を信じたんでしょう?」

「…うむ。あの時、わしはあの子らの眼を見た。その眼がどうにも嘘をついている様に思えなくてのぉ」

 ヴァロンのその言葉にフィルナも笑みをこぼし、頷いた。

「なら、それでいいじゃない。私もあの子達が嘘をついていないと思ったから何も言わなかったのよ。貴方と私、そしてカティアも信じたのだから大丈夫ですよ」

「そうじゃな」

 フィルナの言葉に安心したヴァロンだったが、また心配そうな表情をしだした。

「だだ一人を除いて…だが」

 口調は変わり、表情も真剣なものに変わった。

「最後に現れたあの少年…。あの少年の眼からは何も見られなかった」

「やはり貴方も?」

「うむ、ただ一つ感じたのは…闇。何もかも覆い尽くす心の闇だけだった」

「…闇ですか」

「…この先、何事も無ければいいのだが」


「では、まずはどこに行きましょうか」

「そうだなぁ……訓練場みたいなとこ!」

 明るい表情で話すカティアに葵が答えた。

「訓練場…ですか?」

「あははは、駄目?」

「いえ、いいんです!ただ、意外な答えが来たので…」

 カティアの言葉に葵は苦笑した。

「皆さんも、そこでいいですか?」

「えぇ、僕は大丈夫です」

「わ、私もです」

 鷹紀と華音の返事を聞いたカティアは時雨の方を向いた。

「時雨さんは?」

「…好きにしろ」

 時雨はたいして興味もなさそうに言い放った。

「分かりました。では、皆さん私について来て下さい」

 カティアはそう言い歩きだした。


 一本の長い廊下をカティアと葵は隣同士で歩いていた。

「でも、何故訓練場なんです?他にも、いろんな場所が有りますよ」

「いやぁ、それは…」

 葵は人差し指で頬をポリポリと描きながら恥ずかしそうにした。

「家って薙刀とか柔道してるからね」

「何ですかそれ?」

「あ、そっか。えっと薙刀って言うのは…」

 葵は身振り手振りでカティアに説明した。

「楽しそうだね、葵君」

「そ、そうですね」

「ん?どうかしたかい?何だかいつも以上に落ち着かない様子だけど」

「い、いえ、そんな事は…」

 華音はもじもじと喋り、最後の方の言葉はほとんど消えていた。

「……」

 その遥か後方で時雨は一人考え事をしていた。

(あの声を聞いて、意識を失い、気がついたらこの世界にいた。そして、倒れ、あの夢を見た…。やはり、どう考えても…あの声が原因なのは確かだ。どうにかして、会話のようなものが出来ればいいんだが…)

「時雨君!早くしないと、置いて行くよ!」

「…あぁ、今行く」

 時雨は小走りで鷹紀達の後を追った。


「ここが第三訓練場です」

「第三って、他にもあるの?」

「えぇ、ここを含め、この城には訓練場が五つあります」

 訓練場内の階段を上りながら、カティアは葵の質問に答えていた。

「でも、そんなに使うものですか?」

 二人の後ろにいた鷹紀は不思議そうに聞いた。

「えぇ、私達の城には一〜十までの隊が有ります。二つの隊で一つの訓練場を使う為、最低でも五つは必要なんです」

「そ、そういえば、私達を捕まえようとしたラルラって人も隊長って呼ばれてました」

「ラルラですか?ラルラは三番隊の隊長ですよ。ここの隊は番号が少ない程、強いと言う事になっています」

 ラルラの話を三人は真剣に聞いた。

「それに、各隊の隊長になるには条件が必要なんです」

「条件って?」

「プシュケです」

「確か、ラルラって人が使っていたな」

「え!?ラルラが!!」

 カティアの表情が驚き変わった。

「カティア知ってるの?」

「はい、幼馴染みなんです」

「ところで、カティアさん。プシュケとは何なんです?」

「そうですね、では先ずこの世界の歴史からお話ししましょう。その方が良いので」

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