第六話:悪夢
え〜、ヤバイです。今月中に後二話は更新したいです。
一―ここは…どこだ一一
一一俺は、一体一一
「止めてくれー!!」
一一誰だ、何を言っているんだ一一
「お願い、助けて…」
一一俺は、どうなっているんだ一一
「父さん!!母さん!!」
一一あれは……お…れ…?一一
一一じゃあ、ここは一一
一一何だ…手に温かい何かが一一
一一…これは血?一一
一一父さんと母さんから流れ出た血?一一
一一俺から出た血?一一
一一俺が…殺した?父さんと母さんを?一一
一一俺が…俺が…殺し……俺があぁぁ!!――
一一うわあああああぁぁぁ!!!一一
「!!!!」
突如、時雨は起き上がった。
「はぁはぁ」
顔は真っ青になり、背中は汗でびっしょりになっていた。
(今のは…俺の…)
「くっ」
瞬間、時雨の目の前が歪み、ベットから落ちそうになった。
「危ない!!」
バタンと扉の閉まる音が聞こえ、一人の女性が飛び込み時雨を支えた。
「大丈夫ですか?」
「…あ、あぁ」
時雨は女性の手を退かすと、ベットに腰掛けた。
「ここは?」
「ここはファヌエル城の医務室ですよ」
時雨の質問に女性はにこやかに答えた。
「…ファヌエル城?」
「はい。貴方はここに来る道中に倒れたので、兵達が運んだんです。覚えていませんか?」
「…いや、覚えていないな」
「そうですか。でも、無事で良かったです」
「…あぁ」
軽い返事をし、ベットを下りようとした時雨だったが、自分の上半身が裸だと気付き慌てて布団を体に巻いた。
「…貴様、見たか?」
「?」
「見たかと聞いているんだ」
「何をです?」
「…いや、見ていないならいい」
そう言い、立ち上がろうとする時雨を見た女性は悟ったのか、部屋をそそくさと出て行った。
「……」
部屋の壁に掛けてあった制服を手に取ると、時雨はシャツと上着に袖を通した。
カチャリと言うドアの開く音がすると共に、時雨が医務室から出て来た。
「あら?着替えは終わりましたの?」
「…居たのか」
「はい、貴方を皆様がいる所に案内するので」
「…分かった」
「では、行きましょう」
女性は歩きだし、その後に時雨も続いた。
すると、その前方から一人の兵が小走りで寄って来た。
「あ、姫!どこに行っておられたのですか!謁見の間で王と妃がお待ちです」
「…姫?」
兵の言葉に時雨は頭を傾げた。
「あ、申し遅れました。私、この城の王ヴァロンと妃フィルナの娘、カスティーア・リル・ディーネと申します。カティアとお呼び下さい」
カティアは深々と頭を下げた。
「…あぁ」
だが、そんな中でも時雨は大して驚いた様子も無く、歩き出した。
「時雨さん!」
そんな時雨をカティアは引き止めた。
「?…何だ」
「そちらは…皆さんが居る部屋とは逆の道ですが…」
「……」
無言で来た道を戻る時雨を見て、カティアは笑みをこぼし歩き始めた。
謁見の間にカティアと時雨の足音が響く。
「カティア。あなた、今までどこに行ってたの?」
「すみません、お母様。こちらの方の様子を見ておりまして…」
カティアの言葉にフィルナは時雨を見た。
「ふぅ…まあ、いいでしょう。早く着替えてらっしゃい」
「はい」
カティアは時雨に軽く頭を下げると部屋を出た。
「時雨君!」
途端に鷹紀達は時雨の所へと駆け寄った。
「大丈夫なの!?あんた」
「寝ていなくて平気ですか?」
「…あぁ、大丈夫だ」
それでも、疲れているのか時雨の声には力が無かった。
「そこの者達!!王の前で無礼であろう!!」
そんな時雨達を見た、一人の男が叫んだ。
その男の格好は他の兵とは違い銀色の鉄のような鎧では無く、黒と赤を主とした異なったデザインの鎧を来ていた。
「ローレグよ、良いではないか」
「しかし!」
「わしが良いと言っておるんじゃ。良い」
「…分かりました」
ローレグは一礼し、先程までいたヴァロンの一歩後ろの場所に戻った。
「ヴァロン王、そちらの方は?」
「おぉ、そうじゃな。この者はローレグ・マシュラ、わしらディーネ家の騎士じゃ」
鷹紀の質問にヴァロンは答えた。
「さて、話を戻そうかのぉ」
「そうですね。それで…条件とは一体?」
「うむ、それはじゃな。わしに君らの居たという世界の話をしてほしいんじゃ」
「…は?」
「それ…だけ?」
予想外の内容に鷹紀に続いて葵も間抜けな返答をした。
「うむ、最近は祭事も無くての、暇なのじゃ」
「私からもお願いするわ。この人たら、いつも暇だ、暇だって言ってるの」
「……分かりました。そんな事でよければ、喜んで引き受けさせてもらいます」 鷹紀はそう言い、頭を下げた。
「よし、決まりじゃ。話は明日からでよい。まずは部屋に案内させようか、おい」
ヴァロンは近くの兵を手招きして呼ぶと、鷹紀達を案内させるよう言った。
だが、そこを鷹紀は断った。
「あの、出来れば城内を見てからにしたいのですが…」
鷹紀の提案にヴァロンは快く頷いた。
「いいじゃろ、では…」
「では、私が案内します」 するとそこへ、着替えを終えたカティアが現れた。
「……!」
「…うそっ」
「…綺麗」
その姿に時雨を除く三人は驚きを隠せなかった。
三人が驚いた理由…それは、カティアの美しさだった。
その美しさは、この世のものとは思えない程の美しさで、言葉にするのも難しい程だった。
「私がこの方々を案内します」
「うむ、まぁ良いが…」
「王!!良いのですか、カティア様をご一緒にさせて」
そこへ、ローレグが割って入って来た。
「ローレグ、私はこの方々を信用に値すると思っております」
「…カティア様」
カティアの言葉にローレグは少し驚いた様子だった。
「ローレグよ、わしもこの者達を信用できると思っておる。大丈夫じゃ」
「…はい、失礼いたしました」
ローレグは申し訳なさそうに言った。
「では、客人達よ。また、夕食時に会おうか」
「はい、ではまた」
鷹紀達は礼をすると、カティアと共に部屋を出た。




