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第五話:始動

更新遅れて、ごめんなさい。大学が忙しくて…。すみません、言い訳です。頑張ります、はい…。

 ファヌエル城、謁見の間。

 そこに鷹紀達はいた。

「本当にお城だよ…」

「そ、そうですね」

 驚きの表情で辺りを見回す葵と華音。

「……」

 鷹紀にいたっては余りの事に言葉も出なかった。


 あの後、クラルトに案内された時雨達はこの城へとやって来た。

 その道中、彼らは戸惑いを隠せずにいた。

 それもそのはずだろう、彼らが通って来た道…。

 そこは、日本のどこを探しても存在するはずの無い町並みや建物、人々の服装、場所だった。

 家は木やレンガを主とした物や石造りの物、人の服に至っては自分達と似たような物だが、どこか民族衣装に近い感じのもの。

 だが、それよりも驚いたのはこの街の周りだった。 それは、街の周りに巨大な城壁があるという事に他ならなかった。

「…何よ…ここ」

 葵がやっとと言う感じで声を搾り出した。

「ここは、アイテール大陸にあるトラヴァス国の…」

「そうじゃないくて!!」 クラルトの声を遮り、葵は叫んだ。

「ここ…日本じゃないの…」

「ニホン、て何だ?」

「日本は僕らがいた国の名前です。知りませんか?」

「さぁ、アタシはそういうの全くだからな」

 ラルラは首を傾げ、クラルトを呼んだ。

「お前、ニホンって国知ってるか?」

「ニホン?ですか…。いえ、聞いた事の無い名前の国ですが」

「だってよ」

「そうですか…」

 落ち込む鷹紀の服を葵が引っ張った。

「あたし達これからどうなるんですか…」

 不安げに言う葵を見て、鷹紀も顔を曇らせた。

「く、玖潟先輩」

 不意に華音が鷹紀を呼んだ。

「どうしたんだい?」

「し、弥蒼さんが…倒れそうになってます」

「は?」

 華音の言葉を聞き、慌てて後ろを振り向くと、兵に肩を貸してもらいながら、今にも倒れそうな足取りで時雨が歩いていた。

「あんた、大丈夫なの!?」

「時雨君!」

 慌てて駆け寄る葵達だが、時雨はそれを右手で静止させた。

「…大…丈夫…だ」

 兵士の肩から腕を退かし一人で歩き出そうとする時雨。

「や、弥蒼さん」

「俺に…かま、うな…」

 だが、その足に力は無く時雨はその場に崩れる落ちるように倒れ意識を失った。


 扉の開く音が鷹紀達のいる間に響いた。

「待たせたのぉ」

 その音に葵達は後ろを向いた。

 そこには、高価なそうな服や装飾品に身を包んだ一組の男女が数人の兵を周りに従えながらいた。

 二人はゆっくりとした足取りで歩くと、葵達の前を過ぎ、階段を少し上ると椅子に座った。

「さて、ではまず名を聞こうかのぉ」

 男は顎の髭を摩りながら言った。

「あたしは、その…えと、羽原葵です」

「え〜、あの…玖潟鷹紀と言います」

「み、深嶋華音です」

 緊張した声で話す三人に二人は笑った。

「はっはっは、そんなに緊張せずとも良い」

「そうね、別に取って喰う訳じゃないんだから」

 にこやかに話す二人を見て緊張が解けたのか、三人は、ふぅと息を吐いた。

「ワシはこのファヌエル城の王、ヴァロン・カル・ディーネじゃ」

「私は妻のフィルナ・ロル・ディーネ。あと、娘のカティアがいるのだけど、あの娘どこに行ったのかしら?」

「あ、あの!」

 フィルナが辺りを見回していると、不意に鷹紀が叫んだ。

「その、時雨君は大丈夫なんですか?」

「おぉ、そうじゃったな。あの少年なら医者に見せとる、大丈夫じゃ」

 ヴァロンのその言葉を聞いて葵達は安堵の息を吐いた。

「では、次はこちらの質問に答えてもらおうか」

「あ、はい」

 ヴァロンの真剣な声に鷹紀は少し緊迫した表情になった。

(ここは、僕が話をするよ)

 鷹紀の言葉に二人は静かに頷いた。

「まず、主らがどこから来て、何の目的で来たのかを聞きたいのだが…」

 ヴァロンはそう言うと一人の兵から一枚の用紙を受け取った。

「こう言ったケースは初めてじゃからなぁ」

「僕らもです」

「そうじゃろうな。三番隊の報告書にもそう書いてあったわい」

 用紙を近くの机に置き、ヴァロンは更に問いただした。

「主らも分からないと言っておったが本当か?」

「あ、はい。僕らも気がついたら飛ばされていて、あの森にいました」

「ふむ、姿を見るまで半信半疑だったが、その服装や表情を見る限り嘘偽りではないようじゃな」

 それは癖なのか、ヴァロンの手が再度、顎の髭へと伸びた。

「僕らも最初は信じられませんでしたよ。けれど、あれを見れば誰でも信じるしかありませんよ。僕らの世界の住人ならば…」

「そうか、そういえば、あれは君らの世界では一つだったらしの」

「えぇ、まさか……太陽が二つあるなんて思いもしませんでしたよ」

「あの太陽は、一つは西から東へ、一つは南から北へ動いているのじゃ」

「そうですか、僕らも森にいましたからね。出た時はさすがに驚きましたよ…」 鷹紀の表情は暗く、どこか悲しげだった。

「でも、あれではっきりとしました。ここが…僕らのいた世界ではない、違う世界…異世界だと」

 その言葉に、葵と華音は顔を伏せた。

 今ここにいる事が嘘や夢ではないという事、現実だという事を打ち付けられた瞬間だった。

「…君らはこれからどうするつもりじゃ?」

 不意にヴァロンが喋った。

「あ、はい…。街で何とか働き口と宿を探して、元の世界に帰る方法を探そうと思います」

 すると、ヴァロンは髭を摩りながら唸り、口を開いた。

「城で働く気はないかのぉ」

『は??』

 瞬間、鷹紀達三人は間抜けな声を出した。

「どうかのぉ、フィルナ」

「あら、私は構わないわよ」

「だ、そうだが。どうする?むろん、働きながらじゃが」

「い、いいんですか?」

 再度、確認するかのように鷹紀は問いかけた。

「条件付きじゃがな」

「条件?」

 その時、扉の開く音が聞こえ、時雨と一人の女性が現れた。

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