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第二話:異の世界

 朝の日差しがそそがれる部屋の中を目覚ましの音が鳴り響いた。

「……さい」

 時雨はもぞもぞとベットから手を伸ばし音を切った。

「…う、ん……朝か」

 時雨はゆっくりとした動きでベットから降り、リビングへと向かった。


 リビングのテーブルの上にはパンが二つほど置いてあり、一つは口へ、一つはカバンの中へと無造作に突っ込むと、時雨は身支度を整えた。

「…じゃ、行ってきます。父さん、母さん」

 部屋の一角にある小さな仏壇の前で、そう言うと、時雨はマンションを出た。


 昼休み、校舎裏でパンを食べていた時雨の所に、葵と華音。

 そして、この間、玖潟と呼ばれていた少年が歩いて来た。

「ヤッホー」

「こ、こんにちは」

 だが、時雨の反応は薄く、むしろうんざりした様子だった。

「……はぁ」

「何よ、そのため息は。せっかく、来てあげたのに」

「頼んだ覚えは無い」

 葵の言葉に間髪入れずに時雨は答えた。

「はは、面白いね君」

 すると、一人傍らでそのやり取りを見ていた玖潟が笑いだした。

「…誰だ?」

「あ、そうだったね。僕は生徒会で書記をやっている、三年の玖潟鷹紀って言うんだ。よろしく」

 時雨の目の前に鷹紀の手が差し出された。

「……」

「はは、何でって顔をしているね。実は昨日、羽原君に言われてね。あんな風に知り合ったのも何かの縁だから、自己紹介でもして、お互いを知ったらどうだってね。だから、ほら」

 鷹紀はもう一度、時雨の前に手を差し出した。

「…はぁ…時雨だ。…弥蒼時雨」

 小さなため息をつき、時雨は手を握った。


 それから数分後、校舎裏には時雨達四人の姿があった。

 しかし、そんな中でも時雨は他の三人の会話には参加せず、眠っていた。

「え〜、ホントかなそれ」

「ホントですって!確かに見たんですよ!」

「で、でも、本当なら凄いですよ」

「だよね!」

 すると突然、時雨が起き上がった。

「…うるさくて寝れるか」 そう言うと時雨は立ち上がりその場を離れて行った。

「…悪いことしたかな」

「そう、みたいですね」

「…追いかけよっか」

 葵の言葉に二人は頷くと、急いで時雨の後を追った。


『強盗ですって』


ーーうるさい!ーー


『子供が奇跡的に助かったらしいわ』


ーー止めろ!!ーー


『かわいそうに』


ーー俺を見るな!!ーー



「っ…」

 突然、時雨はその場に倒れ込んだ。

(くっ、なんだって今更…。それに、今の頭痛は一体…)

「ぐっ!?」

 瞬間、強烈な頭痛が瞬間を襲った。


『お前は疫病神なんだよ!!』


(だ、黙れ…)


『あんたなんか産まれて来なければよかったのに!』


「…うる…さい」


『俺の視界に入るな!!』


「ぐっ!…はぁはぁ…くそっ!」


『誰が助けてって、頼んだんだよ』


「!?ぐ!あぁぁぁ!!」 時雨は頭を押さえ、絶叫した。

(くそっ、もう忘れたんだ!過去の事なんだ!割り切ったんだ!だから、出て来るな!!)

 時雨の視界がどんどんと歪み霞んでいった。

「時雨!!」

 その時、葵達が時雨の元へ駆けつけた。

「大丈夫かい?物凄い汗だけど…」

「あの、ど、どこか痛むんですか?」

「…俺に…かまうな」

 心配そうに声をかける二人を振り払うと時雨はゆっくり立ち上がろうとした。

「っ…」

 だが、強烈な頭痛が時雨を襲い、その場に崩れるように倒れた。

「ちょっ!?」

 慌てて時雨を支える葵。《…は来た…今…へ》

「くっ」

 時雨の頭の中に声が響く。

(また、なのか…)

《さぁ…来い……我が…へ》

(お前は、一体…誰…なん…だ…)

 そこで、時雨の意識は途絶えた。



「…きて!起きて!!」

「…う…ぅぅ」

「ほら、起きなさいって!!」

 バチンという音が響いた。

「…っ」

 頬を摩りながら時雨は起きた。

「たくっ。この非常事に、よく寝てられるわね」

「…?…どういう意味だ」

「周りを見れば分かるわよ」

 葵の言葉に時雨はゆっくりと辺りを見回した。

 辺りには沢山の木々があり、そこはどう見ても森だった。

「…何故こんな所に…。俺達は学校にいたはずだが」

「そう、あたし達はさっきまで校舎裏にいたはずなの。なのに、気がついたらここに…。今、華音と玖潟先輩が辺りの様子を見に行ってるわ」

「…あいつらもか?」

「ええ、あたし達四人。知らない間にここへ連れて来られたみたいね」

 葵の話を聞きながら時雨は、もう一度辺りを見回した。

(眠っていた時間からして、そう経っていないはずだ。だとすれば、学校近くの森か?いや、あの学校は街中にある、だから周辺に森なんてない…ならば、ここはどこだ?……そうだ、携帯を)

 時雨はおもむろにポケットから携帯を取り出した。(時刻は…十二時半過ぎ…。という事は、あれから五分と経っていない!?だとすれば、ここは一体どこなんだ…)

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