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第十八話:終戦

だいぶ遅くなってしまいました。すみません

 殴り飛ばされた時雨が顔を上げた視線の先には、真っ黒なローブを着た男が立っていた。

「お、おお!!何者か知らんが助かったぞ!!」

 安堵の表情を浮かべ駆け寄る王だったが…。

「…近寄るな」

 男が王に手をかざした瞬間、王は上から押し潰されるかの様にその場にはいつくばった。

「ぐぉっ!!き、貴様!」

「ち、父上」

「二度と、俺に寄れない様にしといてやるよ」

 瞬間、鈍い音をたてて王の両足が有り得ない方向に折れ曲がった。

「ぐあぁぁぁ!!」

「ひいぃぃ!」

 その光景を見た王子はその場にへたりこみ、股間を濡らした。

「…さて」

 男は振り向いた先…。

 そこには、両手に剣を持った時雨がいた。

「…何者だ貴様」

 時雨が男に聞いた。

「さぁな…だが、確かに言えるのは、このクズ共の仲間の仲間ではないということだ」

「そうか」

「…だが、貴様の敵でもあるがな」

 刹那、男は時雨との距離を縮めた。

「ちっ」

 それに反応した時雨は右手の剣を振るうが、男も腰の鞘から剣を抜き取りそれを防いだ。

「…甘いな」

 防がれた瞬間、時雨はもう片方の剣を振ろうと腕を上げた時だった。

 時雨の剣が急に重くなり、手から滑り落ちた。

「なっ!」

「…隙有り」

 男の蹴りが時雨の腹部に直撃した。

「ぐっ!」

 よろける時雨の頭部に回し蹴りが入る。

「かっ!」

「…潰れろ」

 男が手をかざした途端、時雨の体中が重くなり、その場に倒れた。

「ぐうぅぅぅ!!」

「この重さに耐えるか…。なら、もっとだ」

 時雨の耳にミシミシと骨の軋む音が聞こえた。

「…っ…ふ…ざけ…る…なぁ!!」

 時雨の叫びに反応した血が男の足元から槍になり飛び出す。

「ちぃ!」

 男はそれをバックステップで避けた。

「死んで…たまるか…。貫け!!」

 無数の血の槍がまるで波打つ様に男へと放たれた。

「…潰れろ」

 だが、それは男に届く前に全て潰され砕け散った。

「…何者だ。貴様は」

「……」

 軋む体を支えながら、時雨が聞くも男は答えない。 それどころか、剣を握り再度時雨に迫って来た。

「…来い」

(奴と接近戦をすると、こちらが不利だ)

 辺りの血を集め、時雨は巨大な壁を間に作った。

(今のうちに距離を…)

 刹那、壁は無惨に押し潰され男は時雨のすぐ後ろに迫って来た。

「ちっ!ならば!」

 時雨は両手に残った血を液体化させ、自分の周りに高速回転させると立ち止まった。

「こいつでどうだ!」

 振り向き、男の持つ剣を弾いた。

「確かに…少し厄介だな」 男は両手を時雨にかざした。

「だが、関係ない。…潰れろ」

 ズシンと時雨の体が地に押し潰される。

「く…ぉ…」

「…潰れろ、その内なる存在と共に」

 男の言葉に時雨は反応した。

「貴様…奴を…ぐっ…知って…いるの…か」

「あぁ、貴様以上に知っているぞ。その存在も、何故貴様の中にいるのかも」

「…何…だと…ぐあっ!」 更なる激痛が時雨を襲った。

「…お喋りは、ここまでだ。…死ね」

「ぐあぁぁぁ!!」

 眼や口から吹き出す血。 そしてまた、体中が裂け、血が溢れ出ていた。

(ふ、ざける…な…。やっと、糸を掴んだ…んだ。父さん達…の…。だから…死んで…たまるか……死んで…)

「た…まる…かぁ!!!」 瞬間、血の槍が男のかざしていた右手をかすった。

「!?」

 いきなりの事にたじろいだ男は時雨から距離を取った。

「たまるか…。死んで…たまるか…」

 その隙に立ち上がった時雨だったが、その体はもうボロボロで立っているのがやっとだった。

「ちっ、大人しく潰れていろっ!!」

 男が左手を時雨に向けた瞬間、今までとは桁違いのスピードの血の槍が男の左手を貫いた。

「なっ!?」

(速い!)

 男がそう思った途端、次の攻撃が既に男へと迫った。

「くっ!」

 かろうじてそれを避け、体勢を直した男の視線の先には血で出来た人形が三体、迫って来ていた。

(くそっ、何だコイツは。さっきとはまるで別人だ) 男は人形へと右手をかざした。

 だが、その右手は地中から出て来た血によって手首を繋がれ固定された。

「しまっ!!」

 その瞬間、二体の人形は男の体に取り付くと液体化し拘束した。

「…貫け」

 時雨の声に反応した三体目の人形が、その形を槍へと変え男を貫こうと迫った。

 だが、寸前のところで槍は血に戻り、男の拘束も又解けた。

「…気絶したか」

 男は地面に倒れてた時雨を見て、そう言った。

「…やはり、貴様は危険だ。死ね、その内なる者と共に」

 男が時雨に手をかざした瞬間、上空から何かが男を襲った。

「くっ!」

 男は辛うじてそれを避けるとその方向を見た。

 そこには真っ黒な羽を生やした一人の男がいた。

「…ファヌエルの者だな」 男は上空から降りて来た男にそう言った。

「あぁ、そうだ。ファヌエル城、一番隊隊長、ソルウェ・ラバンだ」

 ソルウェは男に剣を向けた。

「貴様は何者だ。見たところ、我が国の者でもアーマスの者でもないようだが」

「…さぁな、俺はただそこにいる奴に用があっただけだ」

 男が指さす先にいた時雨の姿にソルウェは息を飲んだ。

 余りにも生きているのが不思議なくらいの出血に傷や打撲が体中にあったからだ。

「…っ!貴様!」

 ソルウェは男に切り掛かろうとしたがそこにはもう男はいなかった。

「…逃がしたか」

 そう言ってソルウェは時雨に近づいた。

「おいっ!おいっ!!」

「…ぅ…ぁ…」

「よし、まだ意識はあるな。次は…」

 ソルウェはポケットをごそごそと漁り、細長い紐付きの筒を取り出した、

 そして、それを引っ張ると上空に赤い煙りと共に爆発音が鳴り響いた。

「これで、戦争が終わる」 ソルウェの視線の先には両足を折られ、地面にはいつくばる王と股間を濡らしたまま気絶している王子の姿があった。

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