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第十三話:驚愕

「邪魔だぁ!!」

 ラルラが相手の兵士を吹き飛ばす。

「死ねぇ!」

「ウゼェ!」

 瞬間、後ろから迫る兵士を蹴り飛ばし、ラルラは辺りを見回した。

(クソッ、数が多い!)

「もらったぁ!」

「ーっ!」

 一瞬の隙を見せたラルラに兵士が数人迫る。

「させん!!」

 刹那、兵達の体が斬られ、切り口から炎があがった。

「…クラルト」

「何、気を抜いているんですか。隊長!」

「ハッ、吐かせ!」

 ラルラは獣人化し、爪を鎧の隙間を通して相手の両肩に刺し、両腕を切り裂いた。

 また、クラルトも腕だけを獣人化させ、鎧ごと相手を斬った。

 その瞬間、炎が燃え上がり兵士は焼死体と化した。

「うおぉぉ!」

 すると、二人の正面に一人の兵士が突っ込んで来た。

「チッ、このっ!」

 ラルラが突っ込もうとした瞬間、その兵士の首が切り落とされた。

「…誰だ?」

 ラルラがその背後を見た。

 そこには、血まみれの薙刀を持った葵がいた。

「お前…」

「ラルラ…あたしも決めた。戦う事を…背負う事を…」

「……」

 何かを言おうとしたラルラだったが、葵の強い瞳を見た途端、何も言えなくなった。

「ー!葵!」

 その時、葵の背後で兵士が剣を振り下ろした。

 だが、その剣は空を斬り地に叩きつけられた。

「なっ!」

 驚く兵士の背後で葵は薙刀を首もとに振り下ろした。

「おまっ!?プシュケが使えるのか!!」

「うん、この世界の人間じゃないあたしに何で使えるかは分からないけど…。使えるのなら、あたしは使う。皆の為に…カティアの為に…」

「…そうか。あぁ!そうだな!」

 ニカッと笑うラルラにクラルトが話しかけた。

「隊長!私は一度、マスウェルの所へ行きます!」

「ああ!ここはアタシと葵で十分だ!」

 ラルラのその声を聞くや否やクラルトは走り去った。

「ラルラ、マスウェルって誰?」

「アタシの隊の支隊長だ」

「支隊長?」

「あぁ、後で教えてやるよ。それより、今はこっちだ!」

 ラルラの見据える、その先には数十人の兵達が見えた。



 その頃、医務室でも事は起こっていた。

「何や…これは」

 アズは驚いていた。

「はっ……くぅ…」

 そこには、手から何か光のようなものを出している華音とそれに包まれている患者がいたからだ。

「お願い…死なないで…お願い!」

「……ぅぅ」

 その時、死んだはずの俺の指が動き始めた。

(もう、あんな思いはしたくないの…)

「だからっ!」

 華音が手に力を込めると光が赤く輝き始めた。

「か、華音!」

 突如、アズが叫んだ。

「!!」

 いきなりの事に驚いた華音は光を消してしまった。

「ア、アズさん…なんで…なんで邪魔をするんですか!!この人は!」

「大丈夫や」

 声を荒くする華音の頭をアズはそっと撫でた。

「え?」

「ほら、見てみ」

 二人の視線の先。

 そこには、寝息をたてて眠る俺の姿があった。

 体中にあった傷や骨折等も無く、綺麗になっていた。

「華音、あんたはまだプシュケをよう使いこなせん。治療型のプシュケは珍しい上に扱いがむずいんや。これ以上この人にしたらどうなるか分からん、だから止めたんや」

「…アズさん…私…」

「えぇ、次からはやり過ぎないように気ぃつければいいんや」

「…はい」

 落ち込む華音をアズはそっとなだめた。

「さて、患者はまだまだおるで。いけるか?華音」

「はい!」

「えぇ、返事や」

 笑顔になるアズだったが、その心境は驚きだった。(プシュケはまたまだ謎の多いもんやから華音が使えるのも納得は出来る。それより気になるんは、その能力や。あれはただ、治す能力やない、何かもっと別の力のような気がするわ)



「葵!!」

「分かってる!」

 しゃがむ葵の上をラルラが跳び、敵を切り裂く。

「こいつ!!」

「はっ!」

 振り下ろされる剣を刃の部分で受け止めた葵は、一瞬にしてその場から消え、兵士の背後を切り付けた。

「ふぅ、数が多いわね」

「泣き言か?葵」

「そんな訳無いでしょ!」 剣をかわし、葵は顔面に柄を突いた。

「葵!!」

「何?」

「今のうちに言っておくぞ。アタシのプシュケはな吹き飛ばす力だ」

「吹き飛ばす力?」

 迫ってくる兵達を倒しながら、ラルラは話した。

「そう、アタシが右手を叩きつけた奴は大きさや重さに関係無く、吹き飛ぶってことさ!こんなふうにな!!」

 瞬間、ラルラは一人の兵士を数十メートル吹き飛ばした。

「ひ、怯むなぁ!!」

 兵達は叫ぶと二人に迫った。

「葵、そこで見とけ。これが隊長格の力だ」

 ラルラはそう言うと、超スピードで敵に突っ込んだ。

「……」

 葵は言葉を失った。

 敵に突っ込んだラルラはその速さで敵を翻弄し、次々と敵を切り裂き、蹴り飛ばし、吹き飛ばした。


 数分後、周りの敵をあらかた倒したラルラは葵の所へと戻って来た。

「…凄いわね」

 驚きの表情で葵が言う。

「ハハハ、一番隊、隊長のソルウェなんかはもっとだぜ。アタシなんかまだまだだ」

「そう?」

「あぁ、奴はやべぇぞ。アタシにも手におえねぇ」

 ラルラは苦笑しながら言った。

「さてと、そろそろ城に戻るぞ」

「え?どうして?」

「敵の増援が来ない。それに、アタシも消耗しているからな。一旦、帰らないとマズイ」

「え、でも!」

「じゃあ、このまま戦って、体力が尽きて、殺されるのか?」

「そ、それは…」

「焦るな葵。こういう戦いは一日で終わるもんじゃない、今からそんなんだと後で倒れるぞ」

「…うん、分かった」

「ありがとな、じゃ、帰るか」

「あ、待って」

 城に向かって歩きだそうとするラルラを葵は止めた。

「行くならあたしのプシュケで行こう」

「あ、そうだな。確か、葵のは瞬間移動だったな」

「うん、多分掴まっていれば大丈夫だと思うんだ」

「ま、要は試しだな」

「そだね」

 葵はラルラが掴まるのを確認すると一瞬で移動した。

 だが、移動したのは葵だけでありラルラはその場に取り残されたままであった。

 そのうえ、移動した葵も五十メートル程しか進んでいなかった。

「あ、あれ?ラルラ!ごめん!無理みたい!」

「あぁ!そうみたいだな!つーか、何でそんだけしか進んでねぇんだ!?」

「分からない!それに今、そっちに戻ろうとしたけど!何故か出来ないし!!」

「…分かった!今、そっちに行く!!」

 少し考えたラルラは走って葵のもとに行くと口を開いた。

「ねぇ、どうしよう。アタシプシュケ使えなくなったのかな」

 焦る葵にラルラは話した。

「ん?あぁ、大丈夫だ。ただ、単に条件付きのプシュケなんだと思うしな」

「条件付き?」

「あぁ、ここじゃなんだからな。城に帰ったら教えてやるよ」

「…うん」

 葵は少し不安げに返事をするとラルラと共に歩きだした。

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