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現代のRPG  作者: 琴救(きんぐ)
4/7

save④―いざ魔王城へ

 前回のあらすじ。土曜日に部活へ集まった俺達5人は自称勇者、本郷勇渚さんに"魔王城"へ乗り込むと宣言された。

「作戦は"ガンガンやろうぜ"な!」

 本郷さんはウキウキしながら、武器である"勇者の剣(笑)"と書かれた竹刀を手に廊下を歩いていた。

 "魔王城"がいったいどこなのか、休日を返上してでも行かなければいけないのか。疑問が山ほど残る俺だが、これも鶴舞さんの気持ちに応えるためだ。

 何をどのようにガンガンすればいいかなんてこの際、考えるのは止めよう。というよりも頭が痛くなる。

 

 そうしてたどり着いたのが。

 

 ―― 生徒会室 ――

 

「……」

 "魔王城"というからには、やっぱり"魔王"が存在するのだろう。となると思い当たるのはあの人物だな。

 生徒会室の引き戸が開き、中から美人の先輩が現れる。

「また、貴方なのね。勇渚…」

 本郷ほんごう 真緒まお、FF校の生徒会長にして学年成績トップ。FF校の生徒なら誰しもが知っている有名人だ。

「出たな、魔王!」

 生徒会長に"勇者の剣(笑)"を向ける本郷さん。真緒だから、魔王なのか。これもほとんど悪口だな。

 待てよ。本郷ってことはこの二人の関係はもしや…

「真緒は勇渚の実の姉だ。」

 賢者、栄 智和 先輩が耳元で囁いた。

 才色兼備な生徒会長、本郷 真緒。ゲーム脳なヘンテコ部長、本郷 勇渚。似てなさ過ぎて全然結び付かなかった。

 そして、本郷さんは生徒会長に向かって要求を突きつける。

「私のパーティーにもっとゴールドをドロップしろ!」

 

 訳 "私の部活にもっと部費を増やせ"

 

 先輩賢者が囁く。

 具体的な活動かと思えば、そんな理由のために俺は休日を台無しにさせられたのか。やるせないな。

「何度も言ってるでしょ。部費を上げて欲しかったら、実績を示しなさい。」

 至極真っ当な意見である。

「あなたはそれをしてきたの?」

 生徒会長の視線があまりにも冷ややかで、本郷さんと俺は身震いした。本当に"魔王"様だ。

「と…とおみん…回復魔法を。」

 鶴舞さんに助け船を求める本郷さん。しかし、彼女が振り向いた先には誰もいなかった。

「鶴舞さんなら、急用を思い出したって大分前に帰っていったよ。」

「とおみん、カムバァァッック!!」

 叫び声空しく。魔王生徒会長が本郷さんの首根っこを掴み、さらに責め立てる。

「いい加減にしないと、潰すわよ。貴方の部活。」

「や、やめろー、クソ姉貴!」

 その一言が魔王様の癇に障り、自称勇者は敢えなくノックアウトさせられた。それはもう容赦なく。

「潰すことにするわ。貴方の部活♪」

 笑顔が怖い人を初めて見た気がした。それくらい生徒会長は、俺の中の恐怖を上書きした。

「どれどれ、ここは先生の出番かな。」

 先ほどまで空気だった魔法使い、日比野 先生が俺達の前に立ち、生徒会長を説得する。

「本郷さん、あまり妹さんを苛めてはいけないよ。」

 こうして見ると、先生は先生なんだなと改めて認識させられる。見た目が若いから俺達と同じ生徒みたいな感覚だったからだ。

「でないと、彼氏ができないよ。」 

 その余分な言葉により、この場の空気が凍りついてしまった。

 30歳、独身である童貞の魔法使いが放った氷結魔法は、魔王様に絶大なダメージを与えた。

「…セクハラで訴えます。」

「あぁぁ、それだけは勘弁して!」

 日比野 先生はバカだった。

 開始10分もかからずにパーティーは半壊してしまった。残ったのは俺と栄先輩のみ。

 RPG部がなくなるのは一向に構わないが、部活を無くして鶴舞さんが悲しむのは嫌だな。どうにか考え直してくれないだろうか。

 そこで立ち上がったのは賢者、栄 智和先輩だった。

「真緒、どうか考えを改めてくれないだろうか? 勇渚にはこの部活が必要なんだ。」

 頼りになるのは先輩だけだ。お願いします。

 生徒会長は栄 先輩を静かに見つめ、ゆっくりと口を開いた。

「勇渚を選ぶの?」

 生徒会長のまとう雰囲気が変わった。あれ、様子がおかしいぞ。

「智和が生徒会に入ってくれたら、止めて上げてもいいわ。」

「…それは出来ない。」

 二人は知り合いのようだ。しかも下の名前で呼び会うほど親しい関係と見受けられる。

 もしかして修羅場というものだろうか。すごく気まずいのですが。

「…わかったわ。この件は保留にする。でも覚悟はしておいて。」

 生徒会長はそう言い残し、寂しそうに生徒会室の中へ戻っていった。

 栄 先輩はただ黙ってその後ろを見つめていた。

「…先輩。」

 そんな先輩の姿が見てられなくなり、俺はつい声をかけてしまった。

「なんで、勃ってるんですか!」

「すまない。少々、興奮した。」

 "賢者モード"へ入りに行った先輩を見送り、俺は現状を把握した。

 気絶している自称勇者が一人。セクハラと言われ黙々と立ち伏せている童貞の魔法使いが一人。目も当てられない悲惨な光景だ。

 富士宮フロンティア高等学校には青春の墓場と言われる部活動、RPG部が存在する。そこは確かに噂通りの変な場所であった。

 これは……先が思いやられる。

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