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現代のRPG  作者: 琴救(きんぐ)
2/7

save②―職業を選んで下さい

 富士宮フロンティア高等学校、略して"FF校"には変な噂が漂う怪しい部活動が存在する。

 その名もRPG部。その風評は校内の生徒の情報によると、

 

 "生徒会とよく揉めているらしい"

 "入ったら二度と退部できない"

 "入るやつの気が知れん"

 "てか、青春終わってるよな"

 "ゲームやりたくなってきた"

 

 など様々である。

 俺、御器所 武はその高校生活ドン底な部活に入部してしまったのだった。

 

 でも、いいんだ。俺は後悔していない。彼女の笑顔さえ守れれば…

「武くんもこの部活に入ってくれて、うれしい。よろしくね♪」

 この人は鶴舞 十美さん。クラスのマドンナにして俺の憧れ。RPG部ではその包容力からヒーラーもとい"僧侶"の役割を担っている。彼女が何故、こんな部活に自ら入部したのかいまだに分からずにいた俺だった。

「よーし、そんじゃさっそく新顔の職業を決めんぞー!」

 このやけに偉そうでテンション高いのが本郷 勇渚さん、自称"勇者"。俺と同じ二年生らしい。

「うむ、確か余っているのは戦士枠、遊び人枠、踊り子枠だったな。」

 この人は栄 智和 先輩。整った顔立ちの眼鏡をかけた知的なイケメン。この部活では"賢者"と呼ばれている。

「踊り子…ハッ! 少々"賢者モード"に入ってもいいか?」

「後にしてー。」

 そして変態である。

「いやー、みんな青春してるね。羨ましいな。僕もこんな高校生活を送りたかったよ。」

 顧問の日比野先生。見た目は高校生、中身は独身で童貞の30歳。付いたあだ名が"魔法使い"。

 このように鶴舞さんを除く、変人に囲まれた上、変な称号まで付けられようとされていた。

「んじゃ、メンドーだから踊り子でー。」

「全力で断る。」

 えーっと唸る自称勇者。面倒臭いとは何事だ。しかも、一番酷いやつじゃないか。

「そもそもなんで、2年の本郷さんが仕切ってるんだよ?」

 こういうのは三年生が仕切るものではないのだろうか。 

 わざわざ職業という称号を決める必要性も理解できないが、この自称勇者に任せたらもっと酷くなることは目に見えていた。

「え? だって私、勇者だし。リーダーポジだし。」

 いやだから、非常識な単語を常識みたいに軽々しく言うのは止めて頂けませんか。

「勇渚ちゃんは自分はこの部の部長だって言いたいんだよ。」

 鶴舞さんがフォローしてくれた。

 そこも変な言い回しをせずに部長だと言えばいいのに。

「じゃあ、なんで本郷さんが部長なんだよ?」

「それは私が、勇者だから!」

 あれ、おかしいな。本郷さんの言ってることが全然分からないぞ。誰か説明して下さい。

 賢者、栄 智和先輩がこの状況を見兼ねて、解説を入れてくれた。

「RPG部の部長は代々立候補制だ。先代がその勇気ある者を"勇者"と呼んで称えたのが始まりらしい。」

 つまりはあれだ。よくそんな面倒な役職に立候補できるよな、マジ勇者だわ的なノリで決まったと。

 尊大な本郷さんなら、自ら立候補しそうだ。それで"勇者"なわけか。

「その職業は全部でいくつあるんですか?」

 ついでだから聞いてみた。

「全部で9つだ。」

 職業枠は"勇者"、"戦士"、"武闘家"、"僧侶"、"魔法使い"、"賢者"、"遊び人"、"盗賊"、"踊り子"の9種類。

 それと幽霊部員が二人ほどいると先輩賢者は話してくれた。

「あー、言い忘れてたけど。遊び人枠は永久欠番な。すげえ先輩がいたからさ。」

 "遊び人"ですごい人とはどんなOBだよ。少し気になるな。

「そうなると、消去法で職業は戦士となるが、それで構わないか?」 

 どの道、俺には選択の余地がなさそうだ。

「わかりました…それでお願いします…」

 何で俺がこんなことに振り回されなければならないんだろう。鶴舞さんを連れ戻すはずが自分まで部員になってしまって。

 落ち込む俺の傍らに鶴舞さんが声をかけてくれた。

「私、武くんには戦士が似合ってると思うな。ほら武くんって昔、剣道やってたでしょ?」

 中学一年の頃まで続け、ある理由で止めてしまった剣道。そんな前のことをまだ覚えていてくれていたんだ。

「武くんなら、きっとこの部で活躍できると思うよ!」

「鶴舞さん…!」

 鶴舞さんと一緒なら、どんなにヘンテコな部活でも頑張れる気がした。彼女の優しさという回復魔法のおかげで俺は元気を取り戻した。

「いよーし、新パーティーの結成だー! 暴れるぞー!」

 浮かれる自称勇者様、まだどんな活動をするのかの説明を受けてませんよ。

 俺の戦い?は続く。

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