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魔法学校に筋肉は不要ですか?  作者: おんぼろ
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邂逅

《黒鉄仁、非日常への兆し》



ーーチュン……チュンチュン……


小鳥さえずる午前4:30。あたりは未だ闇の中、重たい身体が一際重く、夏だとは思えないほど冷え切った空気は意識を覚醒させるなと言っているようだ。


「……なんて言ってられんわな」


そう呟きベッドから強引に身を起こし風呂場へ向かう。朝の冷水シャワーは意識を強制的に覚醒させる。その後、身支度を済ませ日課のランニングをおこなう。

いつも通りのサイクル。いつも通りの朝。ただ、その朝はいつもは見ることがない光景が広がっていた。


「アァ……ヤットミツケタ……」


声の主は身長は3メートルはあるだろう巨人だった。俺、黒鉄仁も身長は2メートルを超え、三白眼に発達した犬歯、鬼のような見た目から『鬼の黒鉄』と避けられたりしているが、目の前のはそんなんではない。

明らかに人間では無い。


「サァ……アタシニコロサレナサイ……」


あまりに規格外なモノを見た時、人の思考は停止するんだなぁ。デカイし怖いし速いし意味がわからない。ただ、一つ。俺は死ぬんだ。それだけはわかった。

こんな訳のわからない体験で死ぬのか。笑い話にならないなぁ。などと思考を放棄し、命を放棄しかけた所でーー


「ーーライトニング!!」


聞き慣れない女性の声と共に眩い雷光が巨人の身体めがけ降り注ぐ。


「アァァッッッ!!イ……タイジャナイノ。コムスメェェェ!!!!」


巨人が咆哮と共にそう叫ぶと少女は間髪入れず魔法を叩き込む。


「生憎だけど、悪の使徒なんかと交わす言葉は持ち合わせて無いの。……アンタ!いつまでボサっとしてんの!!」

「……?……ッ!」


困った。死んだものだとばかり思っていたので声が出ない。というか、人に避けられすぎて永らく人と話していないからなんと喋ればいいかもわからない。本当に声って出なくなるんだなぁ。ーーなどとどうでもいい事を考えていると少女は苛立ちを強め


「アンタ死にたいの?!早くどっかに逃げないと死ぬわよ!!」


あぁ、その通りだな。しかし困ったもんだ。足が硬直しちまって動かない。笑えるだろお嬢さん。


「コザカシイ……シネッ!!コムスメッッッ!!」

「ーーやばッ!」


巨人は目に見えない何かを放ったのだろうか。少女の身体は重力を失い宙を舞い、鈍い音を立て墜落する。


「サァ……ツギハ……アナタヨッ!!アハ。アハハハハハハハハハハハハハ」

聞くだけで肌が泡立つような笑い声をあげながら巨人が俺の腹をめがけて拳を放つ。


「?!?!?!」

「ラクニハコロサナイ……コロサナァァァイッ!!!!」


ーーーー驚いた。腹部を殴られて身体は浮くんだな。それも衝撃だったが、それより衝撃なのは


「……あれ、痛く無い」


率直な感想がこぼれた。来るべき痛みが、地獄の苦しみが、死が……来ない。今まで人生の大半を山奥で暮らし、祖父と二人暮らし。喧嘩なんてしたこともなく、作品の中でしか知らなかった痛み。アレがこない。


「サァテ…。ツギハドウシヨウカシラァ」


ゆらりと楽しむように俺を見下ろしながらニタリと邪悪に笑む。吹き飛ばされた少女は意識を取り戻したのか何やら叫んでいるようだが、それが理解出来るほど冷静では無い。

死んだかと思えば生きてるし、痛すぎて痛みが無いのか、それとも無傷なのか。とりあえずわからない。混乱しながらも本能が必死に生きようとした結果ーー


「へ……へやあああああああ!?!?」


緊張のあまりに声がひっくり返りながら拳を放つ。人生で初めて生物に向けられた拳はーー



容易に巨人の赤黒い臓物を撒き散らした





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