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7話: ―夢― 十余六<とお あまり むっつ>
ここは、どこだろう。
真っ暗で……いや、もしかしたら光に眩んでいるのかもしれない。
何も見えない。
どうして?
ああ、そうだ。
今日は月食みの日だった。
光じゃなく、闇に包まれているんだ。
だから何も見えないのは、おかしなことじゃない。
「ずいぶん冷静でいらっしゃる。しかも他の者とは違って頭も良いようですね」
誰……?
そこに、誰かいるの?
「ええ、居りますよ。いつでも貴女のそばに」
でも、私は貴方を知らない。
「思い出せないだけです。思い出す必要もない」
どうして貴方はここに?
「貴女を迎えに」
迎え……?
「……」
迎えって、一体どこに……。
「どうやら、邪魔が入ったようです」
邪魔? 何のこと?
「今日のところは引き下がります。また、いつの日か――」
待って、貴方は……
「この地を……故郷を出てはなりません」
玉髄御前……?
「時が来るまでは留まるのです」
玉髄御前、どちらに行かれるのですか?
「それまでは、私が御守り致します」
「どうか、御息災で」
「どうか……、しあわせに」