めいくあっぷ・ひーろー!
プリ●ュアとか詳しくないのにノリで書いたからもし呪文とかかぶってたら申し訳ない。
「きゃあああああ!!!」
今日も街のどこかで誰かが悲鳴が上げる。同時に胸に提げたリボンチャームのペンダントがわずかに震えた。
『モモカちゃん! 石映公園の方に新しい怪人が出たみたい!』
「わかりました、行きます!」
妖精の声に従って悲鳴の上がった現場に駆け付ければ、そこには凶悪な顔で公園を荒らしている怪人の姿があった。遊んでいた子供たちは皆逃げたあとなのか、周囲に人の姿は見当たらない。
人目がないことを確認して、即座に胸の前で手を組み唱えた。
「エンハンスメント!」
魔法の呪文を唱えた瞬間、自分の身体が光を放ち変化しはじめる。
首に少しかかるぐらいの短かい黒髪は淡い桃色に色を変えながら一気に背中に届くほど長くなり、自動的にハーフアップに結われていく。
普通のスニーカーを履いていた足が光につつまれると、一瞬あとにはつま先の丸いピンクのパンプスとフリルの多い白ソックスに。
コンビニ向かうために着ていたラフすぎるジャージの上下も、同じく光に包まれたあとはあちこちにレースがあしらわれたハイウエストスカートの愛らしい衣装に変わる。
最後に組んでいた手を包んだ光がレースの白手袋になったところで腕を広げれば、隠れていた胸元にどこからともなく現われた大きなピンクのリボンが蝶々結びで結ばれて、変身完了だ。
「高鳴る愛の桃色リボン! ダイヤモンドピンク!」
決めゼリフをびしっと決めれば、そこに立っているのはさえない一般人の卯田桃夏ではなく、戦う美少女・ダイヤモンドピンクになっているのだった。
当然、声に気付いた怪人がこちらを振り向く。額に角の生えた巨躯につり上がった白目、口から長い牙というビジュアルは正直怖すぎて今すぐ家に帰りたいがそうもいかない。せめてさっさと終わらせよう。
「何なんだテメェ! 何しに来た!」
「平和を守りに! 公園を荒らすあなたの悪事、見過ごせません! 永遠に浄化してあげます!」
ビシっと指をつきつけると、怪人は不愉快そうに顔をしかめた。もとより私は怪人とコミュニケーションを取る気はないので、それにはまったく構わず胸元のリボンを勢いよく引き抜きながら走りだす。
ひらひらのリボンは腕を振ればたちまち形を変えて、元のリボンと同じ色のピンクダイヤモンドがあしらわれたステッキに代わる。走る勢いのまま大きく踏み切って怪人の背丈よりも高く跳び上がった私は、それを構えて叫んだ。
「くらいなさい! ハートシェープ・ブリリアント!」
私の呪文に応えて、ステッキからハート型の光線が飛び出し怪人にクリーンヒットした。怪人はなさけない悲鳴を上げながら吹き飛ばされ、滑り台に激突しついでに頭を打ったらしい。怪人のくせに戦闘開始から5秒で半泣きになっている。悪いけど手加減はできないから心の中で謝っておこう。ごめんなさい。
ふらふらしている怪人の近くに着地すると、怪人はびくっと怯えをみせつつ、果敢に私に襲いかかってこようとした。怪人が繰り出す渾身の突進には焦らず騒がず足払いで対処する。変身ヒーローになりたての頃だったら悲鳴を上げて逃げ回っていただろう一撃だが、経験を積んだ私の前にはあっさり敗れるのだった。
さて、こんなにあっさりやられてくれたことだし今がチャンスだ。地面に倒れ伏した怪人の前に仁王立ちして、最後の呪文を高らかに唱える。
「ちょっと早いけど、これでおしまいです! ヒーリング・クラスター!!」
頭上に掲げたステッキから、まばゆい光と衝撃波が怪人に降り注ぐ。私が繰り出せる最大の必殺技にして浄化技だ。ちなみにこれもピンク色。余談だが、私はあまりピンク色は好きではないので機会があればぜひテーマカラーのチェンジを要求したい。
目に痛いピンク色の光と衝撃波を浴びた怪人は、白い霧となって霧散した。こうなったら一件落着だ。今回も無事に戦闘を終えられてよかった。
変身を解きジャージ一般人に戻って息を吐き出すと、ポンッと音がして胸元のペンダントから妖精が現れた。
ウサギともクマともつかない丸い長い耳を生やした桃色の動物っぽい姿の妖精は、満面の笑みで話しかけてくる。
「モモカちゃんてば、今日もカワイくて強かったよ! さすがあたしの見こんだヒーローだねっ!」
「やめてください……ボク、今だに変身するだけで恥ずかしいんですから」
妖精は不満げな顔をするけど、美少女に変身して戦う事を楽しめる男はこの世に少ないと思う。ボクは言うまでもなく、多数派の方だ。
「もーまたそんなこと言って! せっかく可愛い顔してるんだからいいじゃない!」
「地面に埋めてあげましょうか?」
「やめて! あたしに乱暴しないで!」
きゃあきゃあ言いながらペンダントの中に戻る妖精を見つつ、ため息をつく。
いくら顔が女顔だからって、体つきが華奢だからって、ボクは卯田桃夏というれっきとした男なのに。
数週間前に「正義のヒーローになって平和のために戦ってください!」という妖精の言葉を断りきれず頷いてしまったのが運のつき。
妖精と契約した後に「変身できるのは女の子だけだから、変身の間だけ女体化するけど許してね☆」なんて言われるなんて誰が想像できただろう。
「はやくお役御免にならないかなぁ……」
そんな正義のヒーロー失格な台詞を呟いて、もう一度深いため息をつきながら、ボクはコンビニに向かって歩き出すのだった。




