主人公達と不運なマスター
どうも、白河夜舟です。
幸せな悲劇、あるいは悲しい喜劇、あとゆるい日常×シリアスが大好物です!
多分、この物語もそんな感じになると思います。純粋なハッピーエンド?何ソレ?美味しいの?
人間は3回、死ぬことができる。
1つは肉体の死。
誰も逃れられぬ、未知なる恐怖の運命。
全てから解放され、永久の命を許される。
2つは心の死。
不完全な存在のまま、虚無に溺れる運命。
喜びすらも感じずに、過去の記憶に頼って笑顔をつくる。
3つは存在の死。
誰にも認められず、孤独に道を歩む運命。
自分が他者の記憶から忘れられるならば、
どうやって自らの価値を見つけるのか。
カフェ「夕暮れ」は、今日も客が来なかった。
「はぁ…紅茶もコーヒーも美味いのになあ」
その店のマスターはカップやグラスを磨きながら、ひとり愚痴り出す。
「仲の良い奴らは来ることは来るけど、アイツラ金払わねえしなあ…」
時は深夜。洗いものと明日の仕込みを終えたマスターは、ティーセットを取り出し椅子に座る。手に取った新聞を広げ、
「なになに…?「脱獄囚3人、片腕や片足を失い、植物状態で発見される」…物騒だねぇ」
蜂蜜色の紅茶を注ぎ、口に運び、ゲフと満足そうに息を吐く。
「やれやれ、こうしてるときが壮藤サンの至福の時だよ。…あと、昼寝」
はぁ…幸せだ。アイツラが無銭飲食やめればもっと。
壮藤がそう思った次の瞬間。
3人の人影が、ドアから飛び込んできた。
一人は30代前半ぐらいの大柄な男。大きな布切れしか羽織っておらず、体のいたるところに傷がある。
あとの二人は高校生くらいか。少年と少女が、おたがいを支えあうように立っている。
3人と壮藤は、互いに顔を見合せ―――
壮藤が事態を認識する前に、3人は床に倒れていた。
「お腹…すいた…」
「腹あ、減った…」
「もう…動けねえ…」
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」