※出逢い
始まるお(*´▽`*)
日が当たらないのに、いつもうっすらと明るいダンジョン、迷宮。モンスターが死んでも死んでも復活する迷惑な所。
ボクはとても鬱なテンションで両腰に吊るしてある、おしゃべりな魔剣と聖の話を聞いていた。
『ギャハハハまさか本当にいいやがるとはなあ!馬鹿ジュノぉ、ギャハハハハ』
右腰に吊るしてあり、とても口の悪い魔剣、フレイア。こいつの口の悪さは尋常じゃない。本当に、ああ言えばこういう…!って言いたくなるような魔剣である。
『ううう…!フレイアが嘘をつくからあ…!』
反対の腰に吊された聖剣、ジュノが呻く。真面目で天然でどじっ娘である。
「あぁ…。鬱だあ…。」ポツリと呟くとフレイアが下品な笑い声を、それはそれは嬉しそうにあげる。この野郎…!
『ごめんねサキちゃん…。』
『ギャハハハ奴隷が増えてよかったじゃねえか、ギャハハハ!』
「くそう…。はあ…。」
二つの剣の持ち主、ボクことサキヤはため息を一つ。あの変態がさらに変態になるなんて…。
ことは昨日…。
ボクは迷宮F七十九回でストーカーに出逢った。
うまくあしらうことができず、困っているボクに、ジュノは…。
『私に任せてください!追い払って見せます!』
自信満々の声で言われ、もう面倒だったボクはジュノに任せてしまった。任せてしまったのだ。
この二つの剣には、たくさんの能力があって、そのうちの一つに身体を分け与える。いわゆる憑依みたいなものがある。ボクは身体をジュノに受け渡し、ストーカーを追い払ってもらうことにしたのだが…。
ジュノはいきなりストーカーの腕をとった。
「サキヤ様っ?!」期待に目を輝かせる少女。恐らく十代後半であろう。その歳でストーカーってどうよ、と言いたくなるような少女である。
頬を赤く染め、期待に満ちた目で見つめる少女をジュノは背負い投げた。
背負い投げた。
綺麗に地面に叩きつけられた少女。
仰向けに倒れる少女に近づき…。
髪の毛をつかみ…。
「ボクにさわっていいと思ってるの?この薄汚い×××××××××××××××××××××××××××××××」
余りにも酷くて思い出したくもない。
それを聞いた少女は。
「サキサさま…!この薄汚い雌豚にお仕置きを…!」
なにかに目覚めていた。
その後、身体の支配を無理やり返してもらい。少女の鳩尾にグーを一つ。
意識を奪ったあドラゴンでも破れないロープで縛り上げ、転がして逃げてきて今に至る。
鬱だ…。変態とか死ねばいいのに。
なんだかんだでぼやきながら歩くこと1日、やっとF三十二回。
F三十にはゲートと呼ばれるワープアイテムがあり、そこまでたどり着けば外に出られる。
やっと外だー!
思わずスキップしそうなぐらいテンションがあがったときだった。
「そのアイテムを寄越せ、殺すぞ。」
なんか恐喝現場にたどり着いてしまった。
恐喝されているのは、綺麗なお姉さんでした。
耳が尖ってる…。エルフかな?
エルフというのは人間より魔法に特化した…。人間である?ボクには違いがいまいちわからない。フレイアに言ったら鼻で笑われたけど。
数人の男がエルフのお姉さんを囲んでいた。
「…ふーん…。死ぬのは君たちだと思うけど?」エルフのお姉さんの声が響く。
ハスキーボイスがなんかいい!
『声フェチ変態野郎が…。』
『サキちゃんが変態でも私はついていくから!気にしないで!』
「えぇ?!いつからボクは変態認定されてんの?!」
「………。」
「………。」
「……あ。」
見事に気づかれた。
しかも、かなり痛い目で見られてるぅ?!
えっとこうなったら…!
呆然てしてる一人の男の顔に膝を入れる!
「ぶはっ?!」
「お姉さん、助太刀いたすっ?!」
「「「………。」」」
「あー…。ありがとう?」
何故か凄く微妙な空気に。
あれ?なんか目がしょっぱい…。
さて、ボクはなんだかんだで腕には自信がある。
この迷宮は今のところF百三十四回までは確認されている。その先はまだ不明である。
しかし百三十四回というのは、かなり凄腕な冒険者を集め、パーティーを組み、全員が全員死ぬ気で頑張ってたどり着いた階層である。
ボクはソロ、一人で百三十まで行ける。ただしかなりボロボロになるし、探索も長時間は無理だけど…。
初級者、冒険者になりたてだと、行けてもF十分回ほどである。中級者で三十ほど、上級者が五十ほど。
つまりだ、数値だけでみると、ボクは化け物並みであって、不意討ちや手加減やハンデを与えない限り、たかだか三十二回のチンピラに普通なら負けるわけがないわけで…。
エルフのお姉さんが呪文を完成させるまでの十秒ほどで、男たちはみんな地面にキスをしていた。
「……。」
魔法の継承を辞めて、こっちを見つめるお姉さん。ヤバい、なにか言わなきゃ…!
美形に見つめられて焦るのは世界の常識だよね?!
焦りすぎたボクはアホなことを口走った。
「あの、えっと…?お茶でもどうですか?」
『アホが…。』
フレイアがなんかいってるけど聞こえない。