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#11.

今日も読んでくださって感謝です!

いただいたDM, いつも大切に拝読しています。皆さんの応援がものすごく力になるので, その勢いでもう一話アップすることに決めました!(笑)

これからも楽しんでいただけたら嬉しいです。皆さん, 良い週末を!

猛烈に疲れている。


今すぐにでも横になって眠りたい。プリシラは、疲れ切った目をこすりながら、細い溜息をついた。


リュエンの腕をある程度復元した後、プリシラ自身も空き部屋に行って寝ようとしたのだが、あまりにも具合が良くなさそうな彼を放っておくことができず、後ろ髪を引かれた。


結局、今日だけは無理をしようと決めて、椅子に座ったまま、うたた寝を始めたのはいつのことだったか。


額をくすぐられるような感覚に、プリシラは閉じていた目を開けた。まだ薄暗い夜明け時、眠気のあまりベッドに突っ伏してしまったのか、視界いっぱいに白いシーツが広がっていた。


半分夢心地のまま顔を上げると、自分を見つめる朱色の瞳と目が合った。伸ばされたリュエンの手が、プリシラの頬に触れていた。まだあまりにも冷たく、血の通っていない手。


それでも、彼がかつての記憶の中の姿に近づいたことが嬉しかった。彼の手に頬を預け、プリシラは微笑みながら声をかけた。


「リュエン。よく眠れた?」


プリシラの挨拶に、どこか呆然とした表情を浮かべていたリュエンの目が徐々に大きく見開かれ、信じられないというような視線で自分の腕とプリシラの顔を交互に見つめ始めた。


彼の顔に初めて現れた、確かな「表情」だった。プリシラが面白そうにその様子を見守っていると、リュエンが口を開いた。


「貴殿が、どうやって……? この腕は……。」


(まだ、上手く喋れないみたいね。)


無理もない、三年間も言葉を奪われていたことを考えれば、適応速度は早い方かもしれない。

顔いっぱいに戸惑いを露わにしたリュエンは新鮮だったが、このまま困惑させておくのも忍びなく、プリシラが答えた。


「覚えてないの? すぐに戻るって言ったじゃない。腕はないと不便だから、あなたが眠っている間に応急処置だけしておいたのよ。」


廃屋での出来事を思い出したのだろうか。リュエンの顔から戸惑いが消えた。彼は自分の両腕を見下ろした。困惑は去ったが、依然として信じがたいといった様子で、指先が震えていた。


「……。」

「あなたなら分かるでしょう? 治癒スキルで、表面だけそれらしく再生させた状態よ。中は空っぽだから、物を握ったり力を入れたりはできない。当分は気をつけて。」


プリシラの今の実力では、欠損部位を一度に完全に再生させるのは不可能だ。特に両腕は範囲が広すぎ、構造も複雑なため、難易度が極めて高かった。


本来、傷というものは内側から少しずつ再生させる方が効果は早いが、欠損部位の場合は汚染の問題などもあり、表面を先に塞いでしまう方が効率的なのだ。


プリシラは、自分の頬に触れていた彼の手を、そっとベッドの上に戻した。


「一ヶ月……いや、半月もすれば日常生活は送れるようになるわ。リハビリをすれば、以前のように動かせるようになるはずよ。」

「そのようなことが……可能なのか?」

「たぶんね。これほど大きな部位を治療したことはないから、確実とは言えないけれど。でも、可能になるように努力してみるつもりよ。それに。」


席を立ったプリシラは、乱れたリュエンの毛布をかけ直しながら言葉を続けた。


「健康になるには、まずは体力を回復させるのが先決よ。まだ起きるには早い時間だから、もう少し寝ていなさい。」

「貴殿は?」

「私?」

「貴殿も、疲れているはずだ。」

「そうね。治癒は私の専門分野じゃないし、いろいろあって猛烈に疲れてるわ。だから、私もこれから休むつもりよ。」

「どこで?」

「隣の部屋。あ、そういえば言ってなかったわね。役所で偶然、知り合いに会ったの。良い家を紹介してもらったから、すぐに契約したわ。」

「家?」

「ええ。これから私たちが一緒に暮らす家よ。」


私たちが一緒に暮らす家。


声に出してみると、感慨深かった。そうだ、この家は、これから私たちが共に生きていく場所なのだ。


私たちが幸せになるための家。


まだ何もない家だが、飾り付けることを考えるだけで、喜びで笑みがこぼれた。体は疲れていても、気分は最高だった。


「隣の部屋には、ベッドが、あるのか?」

「あるわ。私もぐっすり休めるから、心配しないで自分の体を大事にして。」


彼女の答えに、リュエンの顔に微かな安堵の色が浮かんだ。彼の朱色の瞳がプリシラへと向けられる。やはりまだ疲労が残っているのか、横たわる彼の表情が朦朧としてきた。


「すまない。世話になってばかりだ。」

「分かっているなら、早く元気になって返しなさい。」

「元気になって返す、か……。」


見えるか見えないかというほど微かに口角が上がる様子に、わけもなく心がざわついた。やつれた姿だというのに、酷く美しい。男がこれほど美しくていいものだろうか。


(リュエンと一緒にいたら、本当に私、おてんば娘みたいに見えちゃいそうね。)


短くなった髪をいじりながら、プリシラは閉じ始めた彼のまぶたを優しく撫でた。


「朝に会いましょう。おやすみ、リュエン。」


プリシラの手に自分の手を添えながら、リュエンが答えた。


「朝に、会おう。プリシラ。」



***



リベリア自治区の朝は早い。


夜明け前から、せっせと朝の商売の準備をする商人たち。今回こそは一段上の階層へ行こうと意気込む冒険者たち。


魔の森へと向かう狩人たち。


それぞれが奏でる音色は騒々しく慌ただしかったが、一つに混じり合うと、どんな音楽よりも甘美に響いた。いつだったか戦友の一人が、「度を越した騒音は子守唄のようなものだ」と言っていたが、まさにその通りだった。


こんなに穏やかに眠れたのは、いつ以来だろうか。騒音を子守唄代わりに深い眠りを貪っていたプリシラは、どこからか漂ってくる香ばしい匂いに目を覚ました。


「お腹空いた……。」

「起きて開口一番、言うことが、お腹が空いた、か……?」


独り言にしては少し大きかったプリシラの呟きに、聞き心地の良い美声が重なった。びくりと驚いたプリシラが反射的に顔を上げると、彼女の前には息を呑むほど美しい男が立っていた。


病的と言えるほど痩せ細っているにもかかわらず、その顔立ちは彫刻のように精巧で、朱色の瞳はどんな宝石よりも透明な輝きを放っていた。朝日のように柔らかなプラチナブロンドの髪と、白い肌。


古びたシャツとズボンを身に纏っているだけなのに、その美貌は色褪せることがなかった。呆然と目の前の人物を見つめていたプリシラは、一拍遅れて口角を上げながら答えた。


「おはよう、リュエン。よく眠れた? 早起きね。」

「早い……とは、言えないと思うが……。」


リュエンが窓の外を眺めながら言葉を濁した。彼に続いて窓の向こうを見ると、なるほど、太陽は中天に昇っていた。どうやら、相当寝坊してしまったようだ。


「一時……いや、二時かしら? 私、こんなに長く寝たの、生まれて初めてだわ。」

「私も同じだ。」


プリシラが言葉を終えると同時に、お腹が「ぐぅ」と盛大に鳴り響いた。宝石のように輝く朱色の瞳が、プリシラへと向けられる。

顔を赤らめたプリシラは、もごもごと言い訳をした。


「お腹も空くわよ。昨日の朝から何も食べてないんだもの。スキルを使うと体力も消費するし。」

「昨日の朝から?」

「ええ。ここに着いてすぐに、あなたに会ったんだもの。」


リュエンに会い、舌を再生させ、役所へ行ってライディスに会い、契約して、リュエンを家に連れてきて、また治療して……。ご飯を食べる暇なんてどこにもなかった。


プリシラの答えに、リュエンは少し目を見開き、彼女に近づいて頬に手を添えた。


驚いたプリシラは固まってしまったが、リュエンは気づかなかったのか、あるいは気づいても気にしなかったのか。真剣な顔で彼女をじっと見つめられ、赤くなった顔がさらに熱を帯びていくのを感じた。


「リュ……リュエン?」

「貴殿は食事を摂って、もう少し休んだ方が、いい。」

「そんなに、見苦しい?」

「いいえ、誰よりも美しい。だが、酷く疲れて見える。休まなければならない。」


美しいだなんて、一体誰が?


生まれて初めて聞く言葉に、さらに赤くなった顔が茹で上がったようになった。リュエンは自分が何を言っているのか分かっているのだろうか。


(あ、もしかして私が助けてあげたから、こう言ってるのかしら?)


プリシラがリュエンに望んでいるのは、対等な関係であって、このような……上官に送る世辞ではない。

彼の手をそっと離しながら、プリシラが答えた。


「ありがとう。でもお世辞はいいわ。あなたの言う通りもう少し休むから、まずは何か食べましょう。」

「お世辞。」

「そうよ。美しいだなんて……そういうのはいいの。リュエン、食べられないものはある? 具合が悪かったんだし、柔らかいものを食べた方がいいかしら?」


席を立ったプリシラが伸びをしながらリュエンに問いかけた。


「いや、それより、あなた起きていいの? あなたこそ、もう少し休むべきじゃない?」


そんなプリシラの様子に、リュエンの顔に微かな不満の色が滲んだ。しかし、それはあまりにも一瞬の出来事だったため、プリシラが気づくことはなかった。


「私は大丈夫だ。食事は、用意してある。」

「え……え? 用意してあるって……あなたが?」

「ああ。」


淡々と答えたリュエンが、プリシラの部屋を後にした。呆然とその背中を見送っていたプリシラは、はだけそうになった服の裾を整えながら、独り言を漏らした。



「ガエル魔導王国の『白い悪夢』が……朝食を作った、ですって……?」

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