不幸の星に生まれし二人の少女たち
二話目です
宜しくお願いします!!
入学式。新入生たちがひとつの空間に集まり、壇上にあがった教諭たちが一言一言想いを込めて、未来ある子ども達にくどくどと説教をたれていく儀式である。
長々と意味を感じない話を垂れ流すものだから、毎度おなじみあくびをする者、下を向く者、眠くなる者や寝る者が出てくる。
そういう退屈な場所ですら俺には安らぎがない。半径1m内の女子たちがちらちらと目線を送ってくるのが手に取るように分かる。
そりゃあさ体質とはいえ、好意的に見られるのは嫌ではないさ。でも決して彼女たちには当たってはいけない。そう、それは外側にある金属レールに触れてはならない“いらいら棒”のように。
式を終えると案の定廊下で、クラスの女子たちにこれでもかと囲まれた。
「名前は?」
「どこ中~?」
「誕生日はいつ??」
ここの学校は県下有数の進学校で、地元からもかなり離れているから、知り合いはほとんどいない。
点数はギリギリだったが、近くの高校だけは避けたかったので、ここを選んだのだった。
知り合いがいない分、俺の過去を知る人間はいないから、平穏に過ごしてやろうと思ったが、その計画は見事に潰えたのだった。
ほら、クラスに向かっている近くの男子たちが「なんだなんだ? 芸能人か?」と呟きながら、目を見開いてこっちを見てるし。
さっさとこの場から離れなければ。
「みんな、HRへ急ごう。俺のせいで遅刻になるのは後味悪いだろ」
そう言うと彼女たちは、一目散に自分のクラスへと駆け込んでいったのだった。
◇◇◇
HRを終えた新入生たちは愉しそうに部活見学をしにいく。いかにも野球部に入りそうな者、先輩たちの姿を見て歓声をあげる者、いろいろな部活を見学する者、と三者三様。
自分が活躍する姿を想像しながら、新たなこの生活に胸を膨らませて、三年もある長く未知な青春を夢見る。
が、俺は部活には入れない。入ったら青春以前に人間関係がごちゃごちゃになるのは、火を見るより明らかだ。
先輩たちの部活風景を同級生達が眺める様子を眺めながら、ひとり寂しく静かに帰っていたら、
「そこの君、イラスト部はどうだい??」
「え、いや俺は……!」
「遠慮せずにぜひ見学だけでもさ!」
と、なかば強引にメガネをかけた男の先輩が俺を校舎に引き戻す。
まずいまずいまずい!! もしまた中に入ったら……、
「きゃーー!!! なにあの子!? めっちゃ可愛いんだけど!!」
と黄色い歓声が上がり、俺のところに近くの女子たちが同級生、先輩関係なく近づいた。俺を引っ張ってきた先輩はこの状況に困惑して、立ち止まってしまったから余計にそうなった。
ダメだ! 囲まれてもう逃げられない! 彼女たちの声が大きくて、言っても彼女たちには聞こえない。やばい、どうしよう。
さっきのイラスト部の先輩はいつも間にか手を離してるし。
避けスキルは多少はあるが、ここまで近いと避けるにも限度がある。
どうしよう、このままじゃいつか誰かの手に当たるかもしれない……。
「ちょっと、押さないでよ!」
「私も見たいから空けなさいよ!」
と、集まってる女子たちが内部分裂を起こ始めた。隣に目を向ける。その瞬間にわずかに通れる隙間ができた。俺は急いでその隙間から脱出する。
出られた!!
「きゃっ!」
俺は脱出に必死であろうことか目の前のギャルにぶつかってしまった。
「あ、ごめん!!」
やばっ、ミスった!!! ………え?
「痛った~~。あんたちょっと気をつけなさいよ!!」
と普通に怒る彼女。俺はさっき確かにこの目の前の女子に当たった。しかし反撃しに来ない。しかも、
「も~。なに、あんた? 有名人かなんか知んないけど、あんま調子のってたら、ただじゃおかないし!」
と目の前のギャルが睨む。長髪で艶やかな茶髪に縦ロール、周りよりかは少し短いミニスカート、最近よく見るルーズソックスを履いている。可愛いよりも美人より顔立ちだった。
いや、それより俺のフェロモンが効く範囲内(体質)にいるのに彼女には全然効いてない。初めてだ。こんな子に出会えたの……。
「は!? ちょっ……!? なんでいきなり泣いてんの!?」
「ごめん……。嬉しくってつい……」
「ええ……。よく分かんないんだけど…」
この機会を絶対に逃してはいけない。
「さっきはごめん。俺は102組の星徹って言うんだ。ここから結構遠い町から来てるからここには友達がほとんどいなくてさ。部活に入ろうかどうか色々悩んでいたところなんだ。君は?」
「は? でも、あんためっちゃくちゃ女子に囲まれてたじゃん? ユー◯ューバーかなんかじゃないの?」
「いや。あれは多分なにかと誤解してるだけだと思う」
怪訝そうにじろじろと見ていた彼女だったが、少し表情を柔らかくして、
「……。あたしは104組の西野……みづき」
「西野さんは、部活はどこに入るか決めたかんじ?」
「いや、まだ探してるとこ……」
「ちょっと~、私を置いて誰と話してるのー?!」
と、さっきまでいざこざしていた女子群。彼女達は俺と西野さんを交互に睨む。
まずい、俺はともかく西野さんまで巻き込んでしまった。彼女に迷惑は絶対にかけてはいけない。一体どうしたら……、
「どいてくださ~~い!」
奥から通る可愛らしい女の子の声。可愛らしく走るも、なかなかの速いスピードでこっちに来る。その後ろには多くの人だかりが。
「カホちゃ~~ん!」
「サインをお願いします!!」
「ファンです!!」
男子の低音ボイスが重い足音とともに鳴り響く。
「やだ、こっちも人だかりが…? え?! 危ない!!」
女子たちの集まりを回避した先にまさか俺がいたとは思わず、彼女はまっすぐ俺にぶつかった。
むにゅっと柔らかな弾力のある感触が胸板に当たるとともに、背中は残酷にも冷たく固い床に当たった。
「いてっ!!」
「あ、ごめん大丈夫!??」
と真ん前から心配の声が。黒髪を垂らして暗い影になっても分かる、目はぱっちりとした二重に高くはないがすらっとした鼻立ち。
そして眉を下げながら彼女は俺の顔をじっと見つめる。
今日俺は初めて自分の体質に影響されない二人の女子に出会うのだった。
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