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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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短編ホラー

木枯らし

作者: 壱原 一

小1の初冬。薄寒い曇りの放課後。


掃除のお手伝いを機に用務員さんに気に入られた私は、飼育小屋の兎や鶏にあげる野菜屑を融通してもらえるようになり、この日も野菜屑をもらって同じクラスのお友達数名と飼育小屋にたむろしていた。


存分に堪能して帰る際、同じ方面へ向かう4、5人の道連れの中に余り話した事のない遠い席の子が居た。


色白で淡い雀斑そばかすのある小柄で大人しい子。


私は家が店をやっていたので、私はその子の家を知らずとも、その子は私の家を知っていた。


道中その子が算盤教室裏の竹林を通り抜けると私やその子の家へ近道と事も無げに教えてくれて、感心して付いて行った。


*


算盤教室の辺りは、放課後そこへ通う子が出入りする外(ほとん)ど人の通らないひっそりした所だった。


2人してがしゃがしゃランドセルを揺らし、その子の先導で竹林へれる。


薄黄色の曇り空が少しずつ青味を増して()せ、鴉が長々と鳴いて飛び去る。湿った冷風が吹く度に、からからに枯れた笹の葉がさざなみの様な音を立てて上からまばらに降り注ぐ。


厚い落ち葉の絨毯を転ばないよう踏み締めながらその子と黙々と進むと、心寂うらさびしい竹林の只中に大人が1人座っていた。


地面にぺたんと尻を着け、山折りにした両膝を両腕できつく抱えている。


髪は吹き曝しにぼさぼさで、肌は赤らんでてかてかに乾き、見るも寒そうな薄着は土塊つちくれや葉屑で黒ずんでいる。


額や頬や首元に真新しい切り傷や擦り傷があって、その子と自分が近付くと、何とも心細げな顔ですがるように見上げてくる。


私がぎょっとする間に、その子はさっと枝を拾い、鋭く「こがらし」と言い放って迷いなく大人の顔を打った。


こがらし こがらし こがらし!


大人は引きった声を上げ、膝へ顔を伏せて隠し、一層小さく縮こまりつつ逃げ出す素振りは丸でない。


その子は絶句する私を少し朱の差した顔で振り返り、此奴こいつが居ると()かれる(・・・)から叩いとかないといけないんだよと事も無げに教えてくれて、その場へ枝を放り捨て、さくさくと進んでしまった。


啜り泣く大人を後目に放心してその子へ付いて行き、帰った後は何事もない。


ただその後間も無く用務員さんが退職してほっと嬉しかった記憶がある。


野菜屑をくれる時、私のすれすれに屈んで矢鱈やたらと顔を覗き込み、猫撫で声で腰を掴んで左右交互に揺すってくるのが厭だった。


どちらも印象深かった所為か、それらが浮かび上がって結び付き、根拠のない因果めいた何かを今でもぼんやり感じている。



終.

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