再会③
私はすばやく振り返った
彼を"ルイーズ様"と呼んだ従者は、私の顔を見ると、すぐさま姿勢を正した
「ルルナティア王女様、ご一緒だとは知らず申し訳ございません。此度は姉上様のご婚礼誠におめでとうございます。」
深々と頭を下げる
敵意は感じられなかったし上級従者の様がうかがえた
「ありがとうございます。」
私も丁寧に返した
「で、モーリス、なにかあった?」
ルイーズと呼ばれた彼は従者に尋ねる
「は、はい…実はですね…」
モーリスは口元を手で隠し、ルイーズになにか囁いた。ルイーズの顔がクシャと崩れた。
「分かった」
「申し訳ありません…」
モーリスが小さくなっている
「仕方ないなぁ。じゃあ、案内して。」
"どうしたんだろう。なにか困っているのだろうか"
「あの…なにか、困り事…ですか?」
そう聞いた私にルイーズは優しく微笑んだ
「たいした事ないよ。ごめん、行くね。…またね、ルル」
"!?!"
ひらひらひら、彼は片手を軽く振ると、モーリスを従わせてテラスを出ていった。
「はぁ~~…結局、いったい誰??
ルルって、ルルって、なぜ初対面で愛称呼び!?……ん~っ、もぉっ!」
なんだか、ムカムカしてきた
「ほんと、誰?またねとか言われても、名前も知らないのに、うんまたね?とか言えなくない?……もぅっ」
手摺にもたれかかって、夜空を見上げた
ここからは会場の声は聞こえない
静かだ
"はぁ、なんか喉かわいちゃったな…戻ろう"
私はルイーズに手を引かれてきた廊下を一人会場へ戻った
「ルル様、これで失礼しますね。なにかあればお呼びください」
「うん、ありがとう。あ、ねぇ、エヴァ、王家筋に銀髪っていたっけ?」
「銀髪の殿方ですか?」
「そう」
「そうですね、思い当たるのは…大広家…でしょうか。現当主はハンス·アンドモード様ですね」
「そっか、ハンス叔父様か…」
「お仕事上、なかなか登城はされませんからね…」
「ありがと。引き留めて、ごめんなさい。もう休むわ」
「はい。では、おやすみなさいませ」
パタンッ
エヴァとメアリが部屋を出たのを確認して、私はベッドへダイブした。きっとエヴァに、はしたないと注意されるから、いつも2人がいなくなってから。
「ん~」
毎夜、ふかふかベッドの上で大好きな異世界小説を読むのが私の日課
この国には魔法が存在しないから、魔術師が活躍する話は憧れなのだ
3、4頁すすんで、ふと今夜のことを思い出した
"ルイーズ…"
エヴァが言うようにハンス叔父様は銀髪だった
けど、ハンス叔父様にルイーズなんて子息、いたかしら…?"
「まあ、いっか。あんな自分勝手で失礼なの、もう会うこともないだろうしね」
そんな私の考えは甘かった…
その後、私の生活はルイーズに振り回されることとなるのだから