七
これも夢だろうか。小説ではある筈だ。
確かラノベと書いた。――エッセイとも書いた。その間の子とも――なら、これも許される筈だ。
やっぱり旅がしたい。多少なりとも死を意識せねば、生きる事に努力出来ない。
然し……少し怖いな。こうなってみると。どうなるか分からないのは、何時もの事なのにな。
旅は自分の意思だからか。今のこれは、ある種神秘的の恐怖だ。
苛立ちに、皆殺しを僅か願った。これは衝動では無い筈だ。動機とは全く別の願いであるし、本当に瞬間的なものだった。皆殺しよりも醜悪な、只死んでしまえば良いのにと――。
きっかけが苛立ちだからか。でなければ、これも衝動になり得た。
然し衝動的とは、俗にそういうものを指すのではなかったか。ならば矢張り、差異は動機かそうでないかにあるのか。それもそれで寂しいな。
結局、楽に生きたいなら怠惰を受け入れるしかない。
退屈や罪悪、不便、それでも拭い去れぬ焦燥、不服、不満。――楽というのはつまり、楽しまなければならない、幸せにならなければならない、何かを得なければならない、そういう感情を排した、只管の憂鬱だ。実際、草木に隠された我が身に寝転がるのは、楽で良い。
そしてそんな憂鬱を邪魔するのは、悲しいかな何時も恐怖なのだ。認めねばなるまい。
口喧嘩を眺める心地、ははは、俺は強く生きよう、そう思える。
思い返せば、自分がそういう状況に陥った時も、相手をそういう目で見ていた。
君は確か人に関心が無いと言った。私はある意味で確かに人に強い関心を持っている。憐れだなと蔑む、憐れな関心だ。然し君の事は、心底から愛していた。だから君は、私に比べ、確りと人に関心を持っていたと思うんだよ。まあ君は賢いから、それも避ける口実か冗談か、少なくともこんな私の戯言が矢張り惨めで、面倒臭いのだろう。……だけどやめられないんだ。きっとこれが楽しい。
本当に、謝りたいとは思っている。謝れないのが辛いとも。
はははそう、私は君を人とは違う何かだと崇めていた。本当に憐れだ。ならばせめて敬っていれば、まだ、まだ良かったと思う。
語呂を気にして愛してると書いた。ははは、単に惚れていただけだ。気色の悪い、惨めな片思いだった。子供だったからなんて、言い訳にもならない。変わらない気でいる訳だしな、ずっと。
他人をきっかけに簡単に捨ててしまえる私が、一番惨めで弱い。そんな風に格好付けて何になる。只拗ねているだけじゃないか。それでも、やっぱり彼奴等よりはましだと思うんだ。こういう生き方が私には、一番楽しく、洒落たものに映る。私が私を惨めに思うのは、そうやって重ねた、生き方だからだろう。それも中途半端くれば、もう救いようが無い。
これも少し投げ遣りだな。反省とも後悔とも違う。ある意味理想に近付けたのかな。……惨め惨めと、まるで何も考えていない。
やっぱり何も彼も、少しづつ違っている気がするんだ。それでも考えたいと思っている筈なのに、推敲しようと思えない。何かを信じるのも、疑うのも疲れる。君以外の基準を新たに設けるには、まだ至らないらしい。
あの詩はね、そんな私の思いではなくて、作者と読者の、きっと私の理想を妄想した、そんな詩だったんだ。
不思議と、こんな思考の流れの果てに、創作意欲は齎された。だからこんな私も誰かのきっかけにはなるだろうと。
随分と大層に書けたものだ。ほんの少し娯楽に近付いただけの事じゃないか。……いや然しそれがまあ確かに、私に取っては大きな変化なのか。
――船頭ごかしの風は笞を携え、押された私は島嶼に呻く。願わく、浮かる心地の、幽に漫ろに上つ風をば。
光る森に白い海、全てが曖昧で神秘的な世界。気付けばそんな夢に居た。――変化だ。流れとも違うから、矢張り下手だなと――、兎も角、元より偽りだから可愛さも悪くない。恥じらいはするがそれが反ってまた可愛いだろう?何処迄説明しようか、それを考えるのはもっと先で良いと決めたんだ。今。……ははは、思えば、そういう趣旨で初めたものであった。これもまた流れだな。
だったらもう前書きを用いても良かったじゃないかと、……はぁ、矢張り退屈だ。好い心地だな。
というのをやっぱりやめて、前書きを用いて、可愛さを避けて、弱さを誤魔化して、いや甘えずに、何かを通して、あれとは変えて、そういうものはもうきっと書き終えただろうと――やっぱり私には無理だ。兎も角今は書き終えてみるしかない。
何故綺麗なとは書けなかった。
……と、もうこんな字数か。寧ろ丁度良かったな。小説は次へ持ち越そう。
もう少し、……手前を此処迄引っ張って来て、矢張り書き直して此処から次回へ、とは、どうすれば思える様になるのかさっぱり分からない。
まあ何れに、だな。何も彼も。……先延ばしにはしないさ。今進めている所だ。
申し訳ありませんでしたと笑っておくか。