サークル企画 二本目 煮物
煮物
小鍋のふたを開けると、もわあっとした湯気と共に醤油の香りが漂ってきた。鍋の中にあるのはしょうゆベースの汁に煮込まれたかぼちゃとその上に乗っかる出汁を取り終えられた昆布だ。
「さすがおばあちゃんだな。見た目からしてうまそ……」
祖母の家に遊びに行ったときに鍋ごともらってきたかぼちゃの煮つけだが、やはり煮物の達人というべきか。見た目からして美味しそうだ。汁と昆布の色が濃いからか、かぼちゃの黄色と緑が一層鮮やかに見える。
温め終わったかぼちゃの煮つけを器によそう。
「せっかくだし昆布も乗っけるか」
少量の煮汁と一緒に昆布も掬ってかぼちゃにかける。今回は味見程度に留めるつもりなのでそこまでたくさんよそわなくてもいいだろう。
箸と一緒にテーブルにもっていき、置いてから手を合わせる。
「いただきます」
そう言ってからはふはふ言いながらかぼちゃを口に入れる。
「はふっ、あっ、あつっ。あんま⁉スイートポテトか⁉」
いつものことながらしょうゆベースで煮込まれたかぼちゃとは思えないほど甘いかぼちゃに思わずアメリカ人並みのオーバーリアクションをしてしまう。たぶんアメリカ人はかぼちゃの煮つけなんか食べたことは無いだろうけど。もったいねぇ、うまいのに。
「砂糖入ってるって言ってもこんなに甘くなるはずねぇのになぁ。不思議だなー……うんめぇ」
昆布と一緒に煮込まれているから、ただ出汁と一緒に煮込まれただけでは感じられないうまみがある。おばあちゃんの煮物は、かぼちゃの煮つけに限らずこういったひと工夫があるから好きだ。
味見程度で留めるつもりが、お代わりを取るために席を立ってしまった。
「あー、晩御飯食べれるぐらいには抑えないとなー」
といいつつ、再びかぼちゃの煮つけをつまむ箸を止めなかった。
気づけば結構お腹いっぱいになってしまっていた。
「結構たべちゃったな……ま、いっかー。美味しかったし。ごちそうさまでした」
あとでおばあちゃんに「美味しかったよ」と伝えようと決めながら感謝を込めて手を合わせた。