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神隠しのサイカイは。  作者: 八戸之部花信
4/5

根の国

今回は太彦目線で話が進みますが、視点は交互に替えるつもりです。

太彦さんイケメンや...。と思えるようなものをめざします。

...。

俺は太彦、こちら側に住むハイカラな神だ。

結構長い事生きているので、知識はかなりのものだが、俺は妥協なんてしない。つい100年ほど前にも知識の大幅な改造をしているし、日々こちら──こちらは根の国と呼ばれる妖魔神仙の住まう場所だ──に流れ着いてくる現代の書物を用いて学習もしている。

今風に言えばハイカラ、ではなくイケイケ、もしくはイケメンだろうか?

まぁそんな事はどうでもいい。

...いや駄目だ、俺がカッコよくてイケイケなのはこの世の確定事項だからな。

どうでも良くはないとして、コイツいきなり憑かれてやがる。

コイツ、というのはこの目の前に居る人間の少女だ。

高位の存在の1種、神である俺がコイツとか言うのは良くないんだろうけど、仕方ないんだよ。

だってコイツ俺に対する敬意も誠意もクソもねぇんだぜ?

心配して声を掛けてやったのに、初対面早々無視決め込んできやがったし...。

そりゃ心配するだろ、人間が根の国の田んぼの土手にぶっ倒れてたら...。

意識も無いし、死んでるのじゃないかと焦って声を掛けたのに。

まぁ無事で良かったけどよ...。

いや、無事でも無いな、と俺は意識を切り替える。

目の前に居る、友を案ずる少女。

その頭の後ろに────。


「ごめんね、太彦。わたし行かないといけないから、」


「────手を、離せよ」


先程とは打って変わって、態度を豹変させる少女。怒気と、憎悪と、殺気すら滲ませて、感じるのは只管に、焦り。


焦り、か。成程、こいつはやり易いな。余り手こずらなさそうだな、良かった良かった。



「離さねーよ。お前どこに行くつもりだよ、んな焦ってよぉ。」

「だから、言ってるでしょ!わたしは結依を探しに!」

「二重の意味でどこにいるかも分からないのにか?」

「それは...!」



怒りのままに、いや、焦りのままに叫び返そうとした律葉。叫び返そうとして...、その口を止める。

よしよし。

初めて憑かれたのに、自分で気付くとは上出来じゃないか。コイツ、見どころがあるぞ。

なんの見どころかって?知らねぇけどな。

あれ?と動きを止めた律葉の首に向けて手を突き出す。見 つ け た。

手に伝わってくる感触が、俺に確信を与える。

そのままぐいっと腕を引き戻せば、


「な、何それ...キモッ!」

「物理的には仕方ない事だと分かっちゃいるが俺の方を向いて言われると傷つくぞ!?」


実際仕方無いから反論しにくいけどな...。

俺が握って捕獲しているのは、1匹の蜈蚣(ムカデ)だ。


「正確には蜈蚣に見える鬼だけどな。焦鬼っつー妖怪だ。人を焦らせて正常な判断をさせなくさせる能力がある。同時に話も聞かなくなるから、仲間から孤立して弱った所を」


パクッ、と口で言いながら蜈蚣を近付ける。無言で顔を引き攣らせて仰け反る律葉。

面白い反応だな、気に入った。また何か捕まえたらいきなり近付けてみよう。

とはいえあまりやり過ぎないようにした方が良さそうだ。

こいつの言動から推測してみると、恐らくやり過ぎたら怒る人間だと思う。泣くとかそういう類いのこちらの心を刺してから返しの付いたヤツで抉り出すような事はしないだろうが、怒ったら怖そうだ。

神である俺が言うのもあれだが、触らぬ神に祟りなし。境目を見極めつつ、からかっていこうと心に刻んでおく。

話がズレた。

こんな他愛もない鬼など、武器なんて必要ない。素手でばきっと潰せばそれでおしまいだ。こめかみの軋むような、耳障りな叫び声が発せられるが、それも一瞬の事。蜈蚣の体は瞬く間に塵と化し、それすらも風に吹き消されて、後には何も残らない。これが根の国における普遍的な最期だ。

最も、一部例外が居ることは否めねぇけども...。


「太彦、なんで遠い目してるの?ボケた?」


「ボケてねーよ!」


いっちいっち言葉に棘が生えまくるなコイツ!

抉ってくるぜ精神を!

さすがに過敏反応だよ、となんでもない事のように言い放ち、しかしきりりと表情を引き締める。

ん?と疑問に思う俺の前で、律葉はすっと頭を下げる。


「ごめん、太彦。怒鳴りつけたりして。」


今だって助けてくれたのに、毒舌で。

ごめん。

そう真摯に謝り、さっき迄の態度が嘘のようにしおらしい態度を見せる律葉。情緒不安定というやつか?

最初は困惑したが、落ち着いてよく考えてみると腑に落ちる。

先程の毒舌も、傲岸不遜なあの態度も。

こちらの世界に来たばかりでどうしていいのか分からない、という不安の裏返しだろう。

...元々そういう性格という可能性もあるけども。

それでも、そりゃそうだ、と思う。

人間ならば、いきなりよく分からない所に飛ばされたら恐怖くらい覚えて当然だ。

俺も少し配慮が足りなかったな...。

それなら、目の前にいるこいつを安心させてやらねぇと。話を聞いた時から決めていたことだ、今話しても良いだろう。


「あー、まぁそういう訳で、こっちの世界にはああいう奴が腐るほど居るからよ、お前なんかすぐに食われちまうだろう。」

そこで、だ。

「俺が護ってやるよ。こう見えて刀も使えるし、結構強いんだぜ?」


え、と固まる律葉に笑いかける。

人間が、それも子供が一人きりで根の国を旅するなんて無茶だ。怖がらせるだろうからわざわざ口では言わないが、断言出来る、2日ほどで喰われるだろう。

それを見殺しにする程、俺は薄情じゃない。

それに、と続ける。少しの誇りと、明確な意思を持って。


「俺、道に関してはプロなんだよ。改めてよろしくな」


俺は人間が好きだ。

何があっても、護ってやるよ。


遅れてすいません...!体調が優れず、更新が止まりましたが、これからは頑張って更新して行きます!


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