表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神隠しのサイカイは。  作者: 八戸之部花信
3/5

その名は太彦

結依は、近所に住む友達だった。女の子みたいな名前を嫌っていたけど、親が大好きな。


大人しい子供だったわたしと比べ、結依は活発な子供で。亜麻色の瞳を輝かせて、わたしを遊びに誘ってくれた。

わたしと同じ年の子は結依以外には近くに居なかったと

いうのもあるけれど、何よりも気が合うから一緒に居たのだと思っている。

結依と遊ぶのは楽しかった。

親同士が友達だったこともあり、川へ釣りに行ったり

カブトムシを採りに森に分け行ったり...


色々なことを一緒に経験した。


家族と同じくらいの時間を共にした。


数え切れないほどの思い出を作った。


何回も喧嘩して、でもその度にお互い泣いて謝りあった。


心友、だったのだ。


なのにわたしはあっさりと結依を忘れた。


のうのうと知らんぷりをして生きて来た。


忘れていた、記憶喪失になっていた、など

言い訳にすらならない。


取り戻さなければ。


何もしなかった数年間の贖罪を今こそ。


もう一度強く強く鈴を鳴らす。


それは神を呼ぶ音。


神を誘う唯一の音。


「結依の場所へ連れて行ってください。」

叶えて。

叶えてよ。


結依の代わりにでも何にでもなるから。




連れていったなら返して。


その日私はあの日以来初めて神様に祈った。


その願いは叶えられ、旅が始まる。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「.........い」


誰かの呼ぶ声。

そこでわたしはがばりと身を起こす。

「うわ吃驚した」

誰かの声が聴こえたような気がする。

無視で良いか。

わたしは草の上に寝転がっていたようだ。

そして妙に明るい。

可笑しいな、確か夕方だったはず。

「おーい、無視かー」

空を見てみると真っ青...雲ものんびりと流れている。

どう見ても夕方には見えない。不思議に思っていると、

「おい!」

という声と共に後頭部に走る衝撃と、遅れてやってきた鈍い痛み。

はたかれたらしい。

「無視すんなよ!お前な、善くないぞそういうの!」

声がした方に顔を向けると、そこにはちょっぴり涙目の

少年が此方を睨んで座っていた。

解せない。

寧ろ此方が睨みたいのに。

とは言っても無視したのは事実。此処は大人の対応を

しなければ。

「上から目線だな...」

あれ。今わたしは声に出しただろうか?

出していない。と、言うことは...


わたしはスッと手を持ち上げ、その手の平を思い切り

自らの頬に打ち付けた。


ぱちん、と小気味よい音がする。

「う、うわぁ!?どうしたんだよ?!」

そんな事したら痛いだろーが、と焦りながら心配そうに此方を見やる少年。


「なんで消えないの?」

「えっ何怖い」


夢なら消えるはずなのにな、と思いながら首を傾げる。

さっきわたしは声に出していなかった。なのに、

目の前に居る少年はまるでわたしの考えに対して放ったような言葉を発した。

つまり思考が読まれている。


「だから夢かと思って起きる為に叩いた、と。」


そういう事。

しかし起きなかった...。

じゃあ夢でも無いか。うーん?


「さしもの俺もそこまで存在を否定されると悲しいな...」

「それはごめん。」

「...お前、謝れるんだな」

「は?」

「聞き流せ」

...わたしだって悪いと思えば謝るし、自らの非を認めもする。そこまで傲慢では無いつもりで居る。


さて、そろそろこの少年に向き合う頃だろう。


改めて顔を見ると、結構整った顔をしていた。

淡い杏色の髪に、角度によって金色にも見える亜麻色の瞳。

顔かたちこそ似ても似つかないけれど、結依と同じ眼の色をしていると気づいただけで、信用出来る気がしてきた。

先程までの頭を掻きむしりたくなる様な自己嫌悪も

疑いの気持ちと共に穏やかに消えていく。


私は案外単純なのかもしれない。


そんな事を思いながら、私たちは向かい合って自己紹介をし合う。

それからこの場所の説明も。

少年はタヒコという名前だった。

字を尋ねると指で宙に字を描く。


───太彦。


何者だろうか、古風な名前だと思いつつ、太彦に倣って

私も名を描く。


九条 律葉、と。


「クジョーリツハね。」


良い名前だなぁ、と笑顔になる太彦。


それから、

「九条って事は平安の...いや平城の可能性もあるな...」とか、

「苗字と言い名前の律と言い...」

となんとも言えない顔をした後、ニヤリと笑って

「お前陰陽師になれるかもしれねぇぞ!」

と何かとんでもない事を言いのけた...と思う。


確信が無いのは、私がそっちの方の知識がほぼゼロに

近いような有様だから。


オンミョージ???


何それ美味しいの?そういえばゲームで見たような。


そんな程度のとても浅い理解だから、私にはいまいち

ぴんと来なかった。

理解のある人ならば、それなりに感動もするのだろうけれど...私に知識と理解は無い。

無知とは恐ろしい。


そういう事もあり、あまり私は反応しなかった。

けれども。

何やらこちらの反応を楽しみにしているのを隠す気もなく全力で顔に出す太彦が可哀想になってきた。

世の中の人はやはり驚くものらしい。


そんなきらきらした目で見られても...。


私も鬼では無い。こんなにガッツリとワクワクした様子を見せられては、さしもの私も気が引ける。

別に私には関係ない話だし、あちらから勝手に期待しているだけのことだから、何も責任等考えずにへぇ。で済ませれば良い話なのだけど...。やめろ見るな心が痛む。

そこで一計を案じ、


「え...わ、私陰陽師になれる可能性があるの...!?」


と少々、いやかなり大袈裟に驚いたふりをする。

ちなみにここまでの思考時間、0.5秒。

正確に計った訳では無いから予想だけど、経験からして

このくらいだろうと見当を付けた。

私は焦ると...そう、焦ると思考速度がかなり加速する

体質で、故に短時間でこの決断を下せた。

それはそうと、わたしには時間が無い。

速く行かないと。

そう決意を新たにして、わたしは立ち上がる。

焦る気持ちのままに、結依を探す為に。

そうして、わたしは...


初めて鬼を目にすることになる。

長くなった...!

しかもこれで書きたいとこまでは進んで無い...!

プロット見直さなければ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ