表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

「うん、でもたまに砂糖と塩入れ替えて作っても誰も何も言わんでしょ。ツッコミ待ちしてるのに。」

「てかマジでお前ら全体的に鈍いよ。今年料理当番の時何回かイタズラしたのに気がつかんかったし。」


榊原がうんうんと頷くのに、僕とカズとハイターはちらっと顔を見合せた。ほら、榊原は今のところエイプリルフールに気がついているのかいないのか分からない感じの言動してるし。気がついた上で嘘をついてくるのか、流れを読んで嘘をついてくるのか、それとも本当になんかイタズラを白状してくるのかが読めないのだ。


「え、いつもフツーに飯作ってくれるじゃん。」

「うん、でもたまに砂糖と塩入れ替えて作っても誰も何も言わんでしょ。ツッコミ待ちしてるのに。」

「……え?まじ?全部普通に美味かったよ?」

「胡椒アホほど入れた時も誰も気がついてくれなかったし。そろそろネタバラシしてもいいかなって。あれほんとに誰も気がついてなかったのか気を使われてたのかどっち?」


榊原がケロリとした顔で尋ねる。馬鹿舌の自負がある一同が一気に悩み出した。かく言う僕も何食っても「うまい!」って言ってる節あるから分からんぞ。


「ガチで気づいてない気づいてない、」

「豚肉っていって牛肉出しても三人とも気が付かんかったし。」

「それは気が付かないかも。」


思わず肯く。ハイターとカズが同時に僕の頭を叩いた。イッタァ。


「いやお前は気が付かなくても私達は気がつくわ。」

「流石に……さすがに気が……え?マジ?」


榊原がちらっと時計を見た。丁度十二時を回っていた。


「じゃあ今日のチャーハン砂糖と塩入れ替えるわ。」

「は?マジか。やばいもん作んなよ。」

「前回のチャーハン美味しかったんじゃろ?」

「いやまぁ気がつかんかったけど……」


いつも通りの顔で立ち上がってキッチンに入っていた榊原に、残された僕らは目線を交わす。


これどっちや。


奴は手際がいいので、20分くらいでチャーハンは登場してしまう。だから僕らがなんとなく落ち着かないままスマホだの漫画だのに手を伸ばしている間に、しばらくすればキッチンから炒め物の匂いがした。気のせいか甘い匂いな気がしないでもない。


「あい。出来たよ。」

「……前回と同じ?」

「砂糖と塩入れ替えた。」

「うーーーん聞いた上で食いにく……」

「前回作ったチャーハン普通に食ってたじゃん。」


榊原は一人で手を合わせてさっさと食い始める。顔色ひとつ変えないから、ならまぁ、とまず僕がスプーンを掴む。


一口。


「……どう?」

「……チャーハン。」


僕はそれだけ言ってもぐもぐ食べ始めた。カズもスプーンに手を出す。一口分口に入れて、カズが一瞬固まった。眉がきゅ、と中央に集まる。


「え、どういう顔?」

「美味しい?」


ハイターがソワソワしながら聞いたのに続けて、榊原が平然と尋ねる。


「チャーハンすね。」


カズも僕と同じ答えを返した。


「えー、分かんないもんなのか。」


全員に毒味させて満足したのか、ハイターがなんの警戒もなくパクリとチャーハンを口に突っ込んだ。


「んぁえっっっっま!?!!?」


途端発された奇声に、三人一斉に笑い出す。無理やり平然としていた顔を崩して口を覆った。甘いのなんのって!


「んはははははは、やっば、ゲロ甘い、」

「きっっつ、やべぇよこれ、食べもんで遊ぶな榊原!」

「あははは、馬鹿め、分かるだろ流石に砂糖と塩入れ替えたら!」


榊原が今日イチで声を上げて笑う。


「えーっ!?何、榊原どこまで嘘!?」

「午前中まで。午後はネタバラシの時間でしょ?」

「チャーハンっつったじゃん二人とも!!」

「チャーハンはチャーハンだもん嘘ついてないよ!」


肩を揺らしながら榊原がもう一口チャーハンを運ぶ。あっま、と笑ってから行儀悪く頬杖をついてニィと笑った。


「流石に料理でわざとなんかしたことはねぇよ。でもほら、12時過ぎて『砂糖と塩入れるか』って言ったのはガチってことにしよっかなって。」

「面白がりよって。」

「嘘つき始めたのはハイターじゃん。」


言えばぐぅ、とハイターが言葉を失った。つまり榊原もエイプリルフールと分かった上で、ペロッと嘘をついていたのだ。そんでそれを午後になったら引きずりつつイタズラにシフトした、と。


「あ、待って一個確認していい?」


カズが元気よく手を挙げた。目線がこっちを向いている。


「何?」

「閉じ込められたんは嘘よね?」

「んははは、嘘だよ!」


僕がゲラゲラ笑いながら言えば、榊原が神妙な面で


「来年は誰かのドアお湯まるで塞ぐか……」


と呟いた。勘弁してよ、って笑ったのを、そう、ここをね、この会話を思い出したのよ。さておきクソ甘チャーハンは一年経った今でも覚えているレベルの強烈な味だった。勿論、全員食い切りましたがね。


んでさ。これを打ち込んでいるのが自分の部屋なんだけど。


ドアの鍵が回らねぇんすよね。


回しても回しても抵抗があって動かねーの。誰、有言実行してガチで外からおゆまる押付けたの。開かないんだけど。しかもこれだいぶガムテでしっかりとめたでしょビクともせん。


――これ十二時までこのままだったりする???

※この話はフィクションです。エイプリルフールなので存在しない記憶の話をしました。実際の人物、及び俺とはなんにも関係がありません。Happy April Fool! ※

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ