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カゼミさんと中に入ると、すぐに受付が目に入る。手前にカウンターがあって、その奥に働く人たちの机がちらほらと見える。規模は小さいけれど、前世の市役所みたいな印象を受ける場所だ。
カゼミさんが先に受付の人と数度話すと、わたしの方を向く。
『アルシャさん、こちらはわたくしの友人のヘルンですわ。話は通してありますから、差し入れの手続きをしてみましょう』
『は、はい……!』
カウンターの前に立つと、『こんにちは』と実に聞き取りやすく、ゆっくりと共通語を話してくれた。少しそばかすが目立つ、素朴な見た目の女性――ヘルンさんは、とても優しそうにこちらを見て微笑んでくれている。
『こちらに名前と続柄、差し入れの内容のご記入をお願いします』
紙を渡され、一つひとつ、指で記入欄を示しながら説明してくれる。とてもありがたい。聞き取れはするけれど、こうやって丁寧に教えてくれると、それだけで安心する。
わたしの名前と、イタリさんの婚約者であることを書き、差し入れがサンドイッチと飴であることも記入。何も考えずに書くレベルには到達できてはいないものの、考えて書けば戸惑わずにできるくらいにはなった。
文字を書き進めていると、ふと、視線を感じる。
何か間違っていたかな、と思って顔を上げると、ヘルンさんの後ろで、机の前で事務作業をしていたのであろう何人かが、パッと顔をそらしたのが分かった。
……? なにかあったのかな。もしかして、何か間違えちゃったのかな?
もう一度、今書いたばかりの書類に目を通す。も、問題ない、よね……? ちゃんと書けてるはず。
ドキドキしながらもヘルンさんに紙を渡すと、数秒して、『はい、大丈夫です。受理りました』と言ってもらえた。
『ちゃんとできましたね。素晴らしいです!』
横からも、カゼミさんの誉め言葉を貰った。ちゃんとできてたのか、よかった。
『では、行きましょうか。先に訓練場に参りましょう』
ちゃんとできたことに安心して、胸をなでおろすと、カゼミさんが廊下の方を指さす。あっちに訓練場があるのかな。
『本日はいい天気ですから。室内訓練だそうですよ』
ヘルンさんが教えてくれる。確かに快晴だったけど……それなのに室内なの? 戦闘に天気は関係ないから、悪天候のときこそ外で訓練したりするのかな……。大変そう。
騎士の訓練って、一体どんなことをしているんだろう? ちょっと楽しみだな、と思っていると、また、視線を感じる。
もしかして、と思ってちら、とヘルンさんの後ろの方を見れば、やっぱり顔をそらされた気配が。
な、なんだろう……。わたし、何か変なのかな……!?




