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騎士団の訓練場は、王城の敷地内にあるらしい。わたしの身元が分からないから王城に連れていけない、と最初の頃にイタリさんに言われていたから、入っていいのかとひやひやしたけれど、イタリさんの婚約者という肩書があれば、騎士団の訓練場までは入っていいらしい。
婚約者という大事な席を、よく分からない女であるわたしにあっさりと座らせてしまうのはやっぱり理解できないけど、その上で、ちょっと便利だな、という考えが頭を一瞬よぎってしまったのは否定できない。
王城の敷地内は、円状になっていて、外周に城壁、城壁から一番近い場所に外から商品を搬入する場所や倉庫、下働きである下級使用人の家があり、その内側に騎士団の訓練場や庭園が、さらにその内側に側仕えなどの上級使用人の家や王宮勤めの役人の住まいがある。そして、中心部には王城そのものや、王族の住処が建てられている、という構造になっていて、かなり広い。王城の敷地内だけで一つの街のように見えた。端から中心部まで歩くことを考えたくない程度には距離がある。
外周の城壁ほどは立派ではないけれど、それなりの高さの壁が四つの区画を区切るように設置され、中心部に行こうとするごとに、入るための審査と資格が厳しくなっていくという。
今日、わたしとカゼミさん、そして付き添いのシノさんが訪れるのは、外側から二番目の区画。ここまでは平民でも許可があれば入れる場所らしい。
『さあ、到着いたしました。ここが騎士団のための区画ですわ』
カゼミさんから説明を受けながら、わたしは騎士団の訓練場があるという施設にやってきていた。
騎士団の訓練場は、大きな建物が一つあり、そこから伸びる小さめの建物が左右に二つあって、コの字、のようになっている。コの字の中心部分は石畳で整備されていた。ここで訓練をする、というよりは、何か式典があったりで、整列するときに使うのかな? 結構な人数が並ぶことができそうな広さではあるけど、運動に適した場所には見えない。
『こちらは騎士団の本部にあたる建物ですわ。騎士団長の執務室や医療室、会議室等の部屋が一つにまとめられていますの。見学の受付もこちらですから、まずはここに参りましょう』
カゼミさんの後をわたしはついて行く。兄であるヒスイ先生が騎士団の団員なだけあって、カゼミさんは差し入れ等を届けるのに慣れているらしく、迷う素振りがない。
ちなみに、大きな建物の左右にある小さめの建物は、それぞれ男女で分けられた寮らしい。基本的に騎士団員は全員ここで生活するのだとか。
……イタリさんは結構頻繁に屋敷に戻ってきてくれるけど、大変じゃないのかな?




