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先ほどまで、カゼミさんと恋の話をしていて、その中心にいたのがイタリさんだったからか、つい、意識してしまう。
イタリさんって、顔も整っている方だし、体格も鍛えているだけあってたくましいけど、何より背筋が伸びていて綺麗と言うか、姿勢が美しいよな……。他人が気になって、つい縮こまりがちなわたしとは違って、堂々としているというか……って、観察したら、失礼でしょ。
「わ、わた、わたしで良ければ、お出迎えくらい、いつでもします、けど……」
なんだかすごく、どもった声で提案してしまった。恥ずかしい。ちゃんと喋れる方の、東語のはずなのに。
――……でも、イタリさんなら、怒らないし嫌がらないんじゃないかって、思って、つい、言いたくなってしまったのだ。
両親や元婚約者の、アディジクトは、わたしが出迎えるとすごく嫌な顔をしたから。
まあ、普通に考えたら、話が通じない相手が、なんとなくへらへらと出迎えに来られたところで、気分がいいものじゃないのは分かるけど。おかえり、ただいま、のやりとりすらぎこちない。帰ってきたときの、ちょっとした雑談すらままならない。
一緒に住んでいなかった元婚約者はともかく、両親のように、疲れて我が家に帰ってきてまで、そんな娘の相手をしなくちゃならない、というのは、同情の余地もあるだろうが。
だからって、あんなに露骨に嫌がるのも、ちょっと酷い話ではないかと言いたくもなるけど。
イタリさんはどんな反応をするのだろう、と、ちらちらうかがっていると――。
「そうか。それは嬉しいな」
うっすらと、イタリさんが笑ってそう言ってくれた。ほんの少しだけ、口角が上がるだけのものだったけれど、間違いなく、笑顔である。
「それはそれとして。客人とはいえ、もう少し、自由にして構わない。普段、部屋から出ないんだろう? 気が滅入らないか」
笑みは、ほんの一瞬のことで、すぐに元も表情に戻ってしまったけど。
「い、いいえ。大丈夫です。あまりうろついて、使用人の邪魔になっても……」
「客人が気にすることはない。それも彼らの仕事のうちだ。見合うだけの賃金を払っている」
「あ、そ、そう、ですかね……? じゃあ、そうしよう、かな……、や、しようと思います……」
イタリさんが笑ってくれた、あの一瞬が、焼き付いてしまって、返事がおろそかになる。
脈が速くなったのは、わたしの提案が怒られないか、不安になって、緊張しただけ。
それだけ、のはずなのだ。うん。




