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 それにしても、寡黙、寡黙かあ……。


『寡黙、は、静かな人……?』


『そうですわね。言葉が足りない人、無口な人、という意味ですわ』


 『よく覚えていましたね』と隙あらばカゼミさんは褒めてくれるが……イタリさんって、寡黙だろうか?

 確かに少々言葉足らずで、必要なことしか言わない印象があるけど、逆に言えば必要なことは一杯話してくれるし。静か、と言うほどでもないと思う。


『イタリさん、一杯、話すくれる……ううん、えっと、話して、くれる? くださる? ますよ?』


『話してくれます、か、話してくださります、ですわね。……えっ、あのイタリさんが?』


 先に教師としての説明をしてくれたカゼミさんが、時間差でショックを受けている。


『おしゃべり、とは少し違う、けれど……ちゃんとお話、してくれます』


 本当に無口で、必要最低限しか話さない人ならば、もっと会話が成り立たなくて、あったときに気まずい思いばかりしていると思う。

 でも、イタリさん相手にそう思うことはあまりないのだ。

 そりゃあ、マナーや常識が分からなくて、相手をうかがうことに居心地の悪さを感じることはあるけれど、でもそれって、イタリさんに限ったことじゃないし。

 むしろ、元の国にいたときのほうが、ずっと嫌だった。会話そのものが存在しないのだから。


『イタリさんと話をするのは、楽しい、です?』


 なんだかすごく教科書的な文章になってしまった。間違いはないんだろうけど、友達との会話としてはどうなんだろう。

 と、思ったのだが。


『あら、あらあらまあまあ』 


 カゼミさんはにっこにこでこちらを見ている。とても上機嫌だ。

 ……もしかして、こういう、恋愛話、好きなのかなあ。


『……カゼミさんは好きな人、いるんですか?』


『わたくしはいませんわ。そんなことより、もっとお二人のお話が聞きたいです』


 恋愛話をしたいのかと思って聞いてみたが、バッサリと切り捨てられてしまった。

 わたしの話って言われても……。


『貴族階級と騎士階級の恋だなんて、まるで物語のようですわ』


『こ、恋、違う!』


 わたしは慌てて立ち上がり弁明する。わたしと恋をしているだなんて知れ渡ったら、なんかこう、イタリさんの格が下がってしまうような気がするのだ!

 イタリさんには、もっと、ふさわしい女性が……! 女性、が……。


 イタリさんの隣にいるのは、わたしじゃないほうがいいはずなのに、じゃあ、どんな人がいいんだろうって考えても、上手く想像することができない。

 この間、街に出たのは、わたしにどんな店があるのか紹介するためだったので、デートでも何でもないんだけど、ああいうことを、他の女性としているイタリさんを考えるのが、なんか、ちょっと、嫌、なのだ。


 ……わたしってば、イタリさんに懐きすぎちゃったのかな!? 

いくら初めて言葉が通じる相手に出会って、嬉しくなったからといって、これは駄目なんじゃないだろうか。

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