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 騙していると思うと心苦しいけれど、わたしもこうしないと生きていけないというか……。


「――ちなみに、喧嘩をした場合、だいたいは飴を送って仲直りをするんですのよ」


 わたしが黙ってしまって、何かを感じたのか、カゼミさんがそう教えてくれた。


「飴は平和の象徴ですもの」


 ――平和。イタリさんも、そんなことを言っていたっけ。獣人と人間の共存の象徴、とか、なんとか。


「どうして飴が平和の象徴なんですか?」


 確かになにか送りあうものがあればいいのは事実だけれど、別に飴じゃなくたっていいような気もする。


「いい質問ですわ。――今でこそ、『獣人』は獣の耳としっぽくらいしか特徴を引き継いでいませんが、昔はもっと獣に近い姿だったんですの」


 そう言って、カゼミさんは説明をしてくれる。


 昔の獣人は、獣が二足歩行しているような姿で、今のような姿になったのは人間の血が混じるようになったから、だという。

 獣に近い姿の頃は今よりもっと力強く、農作業を得意としていて、その頃から砂糖の生産がさかんだったらしい。

 ――でも、今のように飴細工を作ることが出来なかった。なぜなら、獣の手足で、そんな細かい作業をすることは難しいから。


 そこで登場するのが人間である。

 獣人が生産した砂糖で、人間が飴や飴細工を作る。だからこそ、この国では飴細工は人間と獣人、両方が手を取り合って協力しないと出来ないもの、という認識で、平和の象徴、となるのだとか。


「今でこそ、『獣人』の飴細工職人もいますが……でも、やっぱり『人間』の仕事、という印象が強いですわね」


 成程。そういう歴史があるのなら、飴が平和の象徴、というのも納得である。少なくとも、この国の人に取っては、飴はそれだけ大切なもの、ということなのだ。

 ……べっこう飴とか作ったら、イタリさんも喜んでくれるかな。あんなカラフルで綺麗な飴を作ることはできないが、べっこう飴の作り方くらいなら知っている。前世で、小学校の頃に作った。……調理実習だったか、理科の実験だったかはちょっと忘れちゃったけど。

 でも、作り方くらいは流石に覚えている。難しくないし。


「プレゼントに飴は鉄板! とりあえず飴さえ送っておけば感謝の気持ちだろうが謝罪の気持ちだろうが、ちゃんと届くこと間違いなしですわ!」


 カゼミさんもこう言っているし、外さない……よね?

 今度、時間があるときに作ってみようかな。……客人に台所を貸してくれるかは微妙なところ……だけど。もし無理なら、わたしが独り立ちしてから送ればいいか。

 うん、そうしよう。

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