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 一通り街を見て、屋敷に戻ってきて、わたしは机の上に買ってもらった飴の瓶を置く。どんな味か気になるけれど、これは勉強のときに食べるために買ってもらった飴だ。もう少し、我慢しよう。一杯勉強して、頑張ったご褒美として食べるべきだよね。

 明後日から教師が来るらしいから、勉強を頑張らないと。


 それでも、買ってもらった飴の存在が気になって、ちらちらと見ていると、扉がノックされる。

 わたしは返事をする。部屋にはわたし一人しかいないので、わたしが自分で開けなければならない。

 扉を開けると、その先にはイタリさんがいた。


「どうかしました?」


 屋敷に戻ってきたときには「また夕食のときに」と言って別れたから、それまで会うこともないのかな、と考えていたのに、まだまだ夕食の時間には早い。というか、さっき、そう言われて別れてから一時間も経っていないと思う。


「すまない、これを渡しておこうと思って」


「……? ええと、とりあえず部屋に入りますか?」


 立ち話もなんだし、とイタリさんを招き入れる。ソファに座ってもらい、わたしも座ると、なんだか昨晩のことを思い出してしまう。


 「これを」とイタリさんが差し出してきたのは、小さな箱。――この形状、なんだか嫌な予感がする。

 手のひらに載るサイズの小箱は、ドラマや漫画で見る、指輪が入っている箱にそっくりだった。前世でも現世でも、こういう箱に入る、高い指輪を買ったことがないから、実物を見るのは初めてだけれど、創作物ではよく見る形状である。


 わたしが困惑していると、イタリさんはわたしに箱を開けるように促してきた。

 断るわけにもいかないので、わたしは言葉にしたがって箱をあける。中には、金色とも黄色とも言えるような色合いの宝石がついた、高そうな指輪がしまわれていた。


「代々伝わる婚約指輪だ。……形式上、とはいえ、婚約しているのなら渡しておいた方がいいかと思ってな」


 思ってな、ではない。え、この高そうなの、つけないといけないの? しかも、代々って……ものすごい価値のある指輪じゃないんだろうか、これ。


「こ、これ……つけないといけないんですか……?」


 恐る恐る聞くと、「サイズがあえば」という言葉が返ってきた。

 正直、こんな高そうなもの、所持していたくない。しかも、そのうち返上しないといけない、というのが分かり切っているのなら、なおのこと。仮にどこかへぶつけて壊してしまったらどうしうよう。


 百歩譲って、本当に婚約しているならまだしも、そのうち解消する、と言われている身でこんなものつけていられない。


「僕が指につけよう。手を貸してくれ」


 しかし、わたしのそんな考えを知らないイタリさんは、平然とした表情で、わたしに手を差し出してきた。

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