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 ふと、目についたのは、人だかりだ。妙に子供だけが集まっている。


「あれなんですか?」


 なにか配っているようだけど……飴、かな? 少し遠いから見えにくいけど、なんとなく、リンゴ飴みたいな形のものに見える。


「ああ、あれは薬飴だな。基本的に子供に配るものだが、大人でも頼めば貰える」


「薬飴?」


 聞き覚えのない言葉だ。いや、まあ、元の国で耳にしていたとしても気が付かなかっただろうから、聞き覚えがなくて当然なんだけど。形状が棒に刺さっているだけで、のど飴みたいなものだろうか。

 それにしても、貰える、ってことはタダで配ってるのかな、あれ。子供がお金を払っているようには見えないし……。


 つい、様子を観察していると、イタリさんが子供たちの群れの方に歩いていく。

 わたしは急いでついていった。歩くのが早すぎる。脚の長さが違うのは当然のことだが、元々の早さもイタリさんのほうが早い。


 先についたイタリさんが、配っている人に何やら話しかけている。

 ようやく追い付くとずい、と飴を差し出された。


「欲しいんだろう?」


 別に欲しくて見ていたわけじゃないんだけど……。でも、折角の好意なんだから貰っておこう。

 受け取った飴は、りんご飴サイズの飴がついていてると思っていたら、中が空洞になっていて、なにか小さな玉が入っていて、棒を揺らすたびに動いている。……これ、どうやって作ってるんだろう。


 気になって思わず中の玉を動かしていると、「お姉ちゃん食べないの?」と近くにいた子供に声をかけられた。周りの子供は皆食べていて、わたしだけが玉を動かしている。

 なんだか恥ずかしくなって、食べようと思うものの、食べ方が分からない。これ、どう食べるのが正解なんだろう。舐める……とか?


「上の方に少しくぼみがあるだろう。そこに歯を引っ掻けて噛むんだ」


 わたしが困っていることに気が付いたのか、横からイタリさんが声をかけてくれる。

 わたしは言われた通りに歯を引っ掻けて、ぐっと噛む。すると、ぱきっと飴が割れた。

 飴なだけあって甘い。咀嚼すると、口の中でぱりぱりと小気味いい音が立つ。噛んでも思ったよりは歯につかない。


「そのまま、飴を傾けて、グラスで水を飲むように中の錠剤を口に入れながら飴を食べ進めるんだ。飴ばかり先に食べると錠剤が落ちるから気をつけろ」


 言われた通りに食べる。錠剤はなんの味もしなかった。無味無臭。錠剤、とか、薬、とかいうくらいだから、独特の味があるのかと思ったら、そんなことはなかった。ああ、でも、この薬自体が無味無臭だから、飴で味付けしてるのか。面白い食べ方だ。

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