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 今婚約って言った? 気のせい? 急に言葉が通じなくなった? たまたま、わたしが前世で使っていた言葉と同じ東語だったけど、コンヤク、の部分だけ意味が違うの? そんなことある?


 イタリさんの言ったことが理解できないまま混乱しているわたしをよそに、イタリさんは「それでは」と帰ろうとする。

 わたしは慌てて彼の腕を掴んだ。


「婚約って聞こえましたけど、あれですか? 結婚の約束ですよね? 男と女が夫婦になるやつですよね?」


「そうだが――ヴェスティエ王国は同性婚も認められているので、その説明には若干の不備がある」


 淡々と、そんなことを言うイタリさん。いや、いまそこはどうでもいいよ。


「な、なんでそんな話になっちゃったんですか……?」


「……今日はもう遅い。君も疲れているだろうから、早く休んだ方がいい」


「い、いや、気になって眠れないですよ!」


 確かに、さっきまでうとうとしていたけれど、眠気はすっ飛んでいった。あのベッドだったら、確かに気が付いたら寝ているかもしれないが、今確実に、わたしは睡眠よりも説明が欲しい。


「しかし……」


「そ、それにほら、本当に婚約したのなら、夜に二人っきりになったところで大丈夫でしょう?」


 わたしが食い下がると、少し考えた素振りを見せた後、「それもそうだな」とイタリさんは納得した。……この説明で納得する、ということは、本当に婚約した、ということなのか。

 元の国に居た頃も、たぶん、わたしの知らぬところで勝手に話が進んでいたのだとは思うが、事情が聞けるなら聞いておくことに越したことはない。


 イタリさんが部屋に入り、ソファに座る。わたしも後をついて、適当にソファへと座った。ソファは一つしかないので、隣同士になってしまうのだが、なんとなく、少し間を開ける。ぴったりよりそって座る仲でもないし。わたしなんかが近くに座ったって、迷惑なだけだろう。


「それで……どうして婚約なんて話になったんです?」


 わたしはイタリさんが説明しだすのを待ちきれなくて、自分から聞いてしまった。流石にこんな一大事、おとなしくしているわけにはいかない。


「――最初、君の両親たちは君のことを認めなかったそうだ。確かにアルシャという娘はいるが、ミステラヴィスに向かう道中で命を落としたという報告を受けている、と」


「――……」


 たしかに、あのとき、イタリさんが来てくれなかったら、わたしは両親の元へ行った報告通り、死んでいたかもしれない。よくて、行方不明扱い。


「だから、一度目の話し合いのときでは、君は死んだアルシャ嬢になりすました村娘、ということになった」


 ……違う、けど、そう言われても仕方がない。わたしは、わたしを証明できるだけの、言葉も証拠も持ち合わせていないのだから。

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