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 死にたくはないし、こんな森の中でぽいっと一人にされるのは嫌。でも、流石に、命の恩人であるイタリさんに迷惑をかけるのは嫌だ。すごく、自分勝手だっていうのは分かってるけど。

 でも、イタリさんはなんでもないように、「問題ない」と言ってくれた。


「僕の出身は確かに東部だが、君が行くのは王都のある中央部。そちらにも僕の別邸がある」


 コマネさんやイタリさんが当たり前のように東語を話すから、てっきりそこに行くのかと思っていた。今も普通に話しているからそこで生活しているのかとばかり。出身地が同じ人間が会話していると、ついつい方言で会話してしまう、みたいな感じだろうか。


「それに、東部も、今では多少なりとも、亜人と交流がある。人間でなければ住民権を得て、住むことは出来ないが、観光客はいる」


 彼に迷惑がかからなければそれでいい。これからお世話になって面倒をかけるのは確かだが、彼が保護すると決めた以上の負担になるのは流石に遠慮したい。


 確かに、話が出来る人間しかいない場所、というのは魅力的だけど、今、わたしが行くべき場所じゃない。

 ……いつか、ちょっと、行ってみたい、という気持ちはあるけど。


「中央部、という場所に行くとして、わたしは何をすればいいですか? お屋敷の使用人、とか?」


 貴族としての階級が高くなればなるほど、使用人の質も求められると思うので、あまり高い爵位のお屋敷では働けないだろうが、それでも、前世の記憶があるため、ただの貴族令嬢よりは抵抗なく働ける。……前世の記憶があるせいで、こんな状況になっているのだが。


「……まだ、ようやく国境を超えたあたりなのに、もう働くことを考えているのか」


 呆れたように言われてしまった。……もしかして、今、ちょっと笑った?

 でも、改めて見ても、あまり変化が分からない無表情に戻っていた。気のせいだったのかもしれない。


「しばらくは客人として家にいるといい。ヴェスティエ共用語は、東語に近くはあるが、違う言葉だ。どこで働くにしてもある程度話すことが出来た方がいいだろう。教師は用意しておく」


 ……いや、もう、本当に頭が上がらない。彼にとっては、一度助けたなら最後まで、という程度の気持ちなのかもしれないが、わたしにとってはありがたすぎる。一度助けたなら最後まで、という心持の時点で立派なものだが。


 言葉を覚えて、ひとりでも生きていける術を一日でも早く身に着けて、絶対に彼へ恩返しをしよう、と、わたしは一人脳内で誓った。

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