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 イタリ・ウィンスキー。


 それがわたしを助けてくれた、団長さんの本名らしい。がたごと、と荷馬車に乗って揺られながら、団長さん、もとい、イタリさんが教えてくれた。

 最初は荷物番の人がわたしと一緒に荷馬車の荷台部分に乗る予定だったが、コマネさんに、「団長が拾ってきたんですから、責任もって面倒をみてください」と言われていて、このような形になったのである。


 本当はわたしが馬に乗れれば良かったんだけど、意思疎通が出来ない人間を馬に乗せるようなことを父親も母親もしなかった。なので、乗馬の心得が一切ないのである。

 しかも今、それなりのドレスを着ているから、ただでさえ乗馬が出来ないのに、この格好では、と、荷馬車に乗ることになってしまった。


「あの、すみません。わたしの為にこちらに乗って貰うことになってしまって……」


 いたたまれなくて、わたしがそう言うと、イタリさんは「問題ない」と返事をしてくれた。


「下っ端時代に荷物番を経験している。久々ではあるが、支障はない」


 ……そう言うつもりで言ったんじゃないんだけど……。でも、わざわざそんな風に言ってくれるなんて、彼なりの、気にしなくていい、という気遣いなんだろうか。

 無表情で言ってのけるので、わたしが都合いい様に解釈しているだけかもしれないけど。


「……それにしても、あの……変なことを聞いて申し訳ないんですが、わたしたち、何語で話しているんでしょうか」


 今なら聞けるかな、と思って疑問をぶつけてみる。生まれて初めて、ちゃんと言葉が通じる人たちに出会ったのだ。聞きたいことは尽きないが、一番気になるのはこれである。


 てっきり、この世界の言葉は全て、分からないものだと思っていたのだ。

 イタリさんらが使う言葉は前世で使っていた母国語とそっくりな言語で、通じるけれど、でも、確実に同じ言語ではないはずだ。前世に、獣人なんか、いなかった。物語のなかにしか存在しない。


「……ヴェスティエ東語だ」


「……東語?」


 普通のヴェスティエ語、とは違うんだろうか。


「ヴェスティエ王国の東部は、長い歴史の中でも、亜人との交わりがなく、人間のみで構成されてきた地方で、ヴェスティエ東語はそこの出身の人間しか話さない」


 どうやら、かなり限定的な言語らしい。


 ……いや、亜人――おそらくはわたしたちで言う人間との交わりがないって、わたし、行って大丈夫なの? 言葉が通じても、わたしはまぎれもない人間である。

 保護、とは言ってくれたけれど、問題が起きるんじゃ……。

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