地獄の上のクモ
放課後、9月なのに33度快晴という常夏コンクリートジャングルを3人でアイスを片手に学校の最寄りの駅に向かっていた。僕と秀介は青いシャーベットアイス、橋本は「北海道濃厚ミルクイチゴ~~~~アイス~~~を添えて」的な戦隊ものの全合体ロボみたいなアイスを食べていた。それ、駅までに食えんの?
「「で、おまえ、市川と付き合ってんの?」」
やっぱり聞かれた。
「あー、朝の続き?」
また、僕は質問に質問で返した。秀介はすかさず
「そう!朝は逃げられたからな。で!どうなの」
とぐいぐい問い詰めてきた。
「本当に付き合ってないよ。朝も説明したけど、ゲームしてただけ。市川からしたら、友人ですらないかもしれない。」
「ほんとうに?」
「本当に」
アイスを溶かしながら、橋本が聞いてきた。
「楽しかった?」
「黙秘権を行使します」
「付き合ってる?」
「付き合ってない」
「かわいい?」
「黙秘権を行使します」
「付き合ってる?」
「付き合ってない」
橋本の鋭い質問を完璧な回答で裁ききったところで、
「ん、お前がそこまで言うならそういうことにしとこう。でも、俺らはお前の周囲への弁明の手伝いはしないからな。巻き込まれたくないからな。」
秀介のきっぱりとした宣言に、アイスを食べながら橋本はそれな!と言わんばかりの手の動きを見せた。薄情な奴らだとは思わない。僕も二人の立場なら同じ選択をするだろう。