ファイアーファイター
火の中に飛び込んで人を助け、鎮火させる行為ってすごくリスキーな行為ですよね。あなたは誰のためならそれができますか?
その後は一生懸命、秀介や聞きに来た周囲にゲームをしていたなどの説明をしたが検討むなしく、聞き流されてしまった。その状態から解放されたのは、教室に担任が来た時であった。僕は担任の精気のない新学期への意気込みを聞きながら、僕と同じく渦中の人である市川の心配をしていた。
市川は毎度のことながら遅刻してきたらしい。出席数は大丈夫なんだろうかと思ったが、今はそれどころではない。燃え広がった炎は、新たな噂話という雨が降るか、皆が飽きるとともに燃え尽きるかしか終わりはない。消防隊なんていうものはいない。それなのでうまくやり過ごすしか生きるすべがないのである。
休み時間に他のクラスに向かった。友人に、僕が夏休み前に貸した教科書を、そいつへの文句と交換してもらうだけである。さすが「教科書ハンター橋本」である。教科書ハンターと言えば教師までも誰かわかるほどの重罪人である。しかし、空気の読めるぽっちゃりという「愛されキャラ」であることが、彼が許されている理由だろう。
(でも、誰も教科書を貸してくれないので僕や秀介のところに来る。)
僕と秀介、橋本の3人は基本的に休み時間から放課後まで時間を共有することが多い。まれに、追加戦士が出たり、メンバーが入れ替わることがあるが、僕ら3人はお決まりのメンツである。僕もこの二人といることは、居心地がよかった。夏休みも公園でアイス、橋本の突き指ボーリング、僕の砂場で靱帯損傷立ち幅跳びなどちょこちょこ遊んでいた。
しかし、その夏休みには、僕は膝まで泥沼に沈んでいた。もっと早くに気づけていたら、どれほど今が変わっていただろうと思う。