板挟みとトラバサミ
話を戻すと、そんな
「ネタにしやすい中の上のやつ」×「学年の嫌われ者」
という話題を、色恋沙汰に敏感な思春期の集まりの中で放り投げられたネタに周囲が食いつくのは一瞬だった。まるで餌をまかれた鯉のようだった。僕は状況を理解しようと
「え、なんで?」
とありきたりな質問で秀介の質問に返した。
「いや、今話題だぞ。夏休みにお前らが毎日会ってて、付き合ってるって広まってる」
「ほー-ん」
と、僕は状況を理解した言葉が漏れていた。
「ほーーん、じゃねーよ。で、付き合ってんの?」
ここで問題である。読んでいるあなたならこの場合どう答えるだろうか。当時の僕は
「え、付き合ってないよ?」
と一番悪い回答をしてしまった。
「いやいやいや、付き合ってないのに毎日会わないだろ。」
と秀介は返した。ごもっともだし、ここで否定しても好奇な目にさらされたやつの言葉など誰も聞く耳を持たない。そのため、陰で「え、三浦くん、否定してるらしいよ~」「絶対噓じゃん。100付き合ってる」「「「だよね~」」」となるだけである。ニュースなどでも「〇〇容疑者は容疑を否認しており~~」なんて流れていたら、多くの人たちが「やっているのに認めないやつ」と〇〇容疑者を認識する。つまり、より噂を確信めいたものにしてしまうアリジゴクにはまったたアリ状態だった。当時の僕にはそれがわからなかった。