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パンツとの邂逅
僕は幸せだ。今までの人生で様々な選択をしてきた。その多くは覚えている限りでは、間違いと言い切れるようなものはなかっただろう。しかし、今でも考える。きっと思春期のあの汗臭さと生々しさと、ませた香りのしたあの告白が、僕の人生の舵輪を大きく回してしまったのだと。
13歳の時に入学した私立学校は中高一貫で、クラスは違えど6年間ほぼ同じ顔ぶれで青春を消費する。そのため、校内では“〇〇ちゃんと△△君がまた付き合いだした“など、惚れた腫れたの類の話が充満していた。まるで、部屋で香水の入ったビンを割ったようだった。今思い返すと、それくらいしか話すことがなかったのだと思う。当時の僕にはそうした話についていけず、友人である秀介と昔やったゲームの話を話していた。
しかし、そんなある中3の7月、僕に変化の時が訪れたのだ。中学三年の春、教室内でふざけあい追いかけあう女子が、僕が座る席の目の前を走り去って行ったあの時、
パンツが見えた。
今でもその一瞬をはっきりと思い出せる。