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数話でこの作品は終わる予定です。
短い間ですが、宜しくお願いします
俺、高橋勉には、義理の姉高橋凪と言う妹がいる。
姉は美人で、風紀委員長を務めるほど頭もよく、しっかり者。なんもとりえもない俺とは全然違い、周りに自慢したいほどの姉だ。
ただ、一つばかし、問題も……
――学校の門にて――
「そこの生徒止まりなさい!」
と学校の門を通り抜けようとする俺を止めた目の前に立つ黒髪美女。
それが、俺の義理の妹姉、高橋 凪。
凪は俺を睨みつけ、すたすたとこちらに来る。
「ネクタイ曲がっています」
と俺のネクタイを直す凪。
さきほども言った通り、凪は風紀委員を務めている。だから、毎朝、門の前に立ち、制服チェックをしている。まるで鷹の目のように目を光らせ、少しでも違反をしていれば止められるらしい。
噂では生徒指導の先生よりも厳しいとか……
「あ、ありがとう凪……」
凪は「はぁ……」とため息をついたあとこう言った。
「勘弁して勉。仮にも風紀委員長を務める、この私の弟なんだから、しっかりしてもらわないと困るわ」
と言った凪は元の持ち場に戻っていた。
さて、ここで話を戻すが、さっき言った凪の問題。
それは、とにかく塩対応であること。
そして、その結果、色んな人に恐れられている。
噂では、氷結の魔女 高橋 凪様なんて言われていたり、目つきが鋭いことから、鷹の目の高橋様てきな事を言われ、皆から恐れられている。だけど、俺は知っている。
凪の態度は真面目な性格が邪魔しているだけだと……
――教室にて――
俺はラノベ小説を読み、ホームルームが始まるまで待つ。あいにく、俺には友達と呼べるほどの友達がいない。普通にしゃべりかけてもみんな怖がって、離れてしまう。ならば、愛想よく笑顔でクラスメイトの所に話に行けばと向かったが、秒で逃げられた。俺ってそんなに嫌われているのか……
「おはよう勉君!」
やっと誰が話しかけてくれた。声音からして、男子でもなく、女子!もしかして、モテ期到来か!期待を胸に声を掛けてきた主をみる。
「なんだお前か」
「なんだとはなによ!せっかく勉に声を掛けてあげたのだから感謝しなさいよ!」
と朝から、ギャアギャアと騒ぐ、ショートヘアーの女子生徒。名前は南条 胡桃。
俺とは、幼少期からの幼馴染で、おまけに家はすぐ近く。そのかいもあってか、家族ぐるみで仲が良い。
さて、胡桃が声を掛けてきただけなら、無視して読書でもしよう。出来れば、胡桃とは関わりたくない。胡桃はクラスの人気者。おまけに美少女。スクールカーストで言ったら、一軍。俺みたいな四軍とは月とすっぽんだ。
胡桃には俺に話を掛けるよりも、一軍とかのキラキラした奴らと喋っていればいい。
「ちょっと勉!それはないでしょ!」
と胡桃は俺のラノベ小説を取り上げ、俺を睨みつける。
「ちょっと、本を返してくれ」
「なら、私の話聞いてくれるの?」
「わかった。分かったから」
大事な大事な本を返してもらい、胡桃の話を聞いた。胡桃の家には、クロという猫がいて、その話をひたすら聞く羽目になった。「クロは可愛い」「クロには癒される」とか、愛猫の話をひたすら話す。
クロは昔からいたから、俺もいやと言うほど、知っている。俺は、適当に相槌などを打ちながら聞くのであった。
そして、次の日
今日も、また俺に話しかけてくる。胡桃はいつもそうだ。必ず、朝俺のところへ来ては、べらべらと喋る。きっと、友達がいない俺を気遣うために、胡桃が気遣っているのかも知らないけど、悪いが、やめてくれ。周りの生徒が、ひそひそと、俺らの事を噂している。俺はともかく、胡桃が変人扱いされるのは、許せない。いつ周りの生徒にキレてしまうかわからない。
そんな日々が続いたある日の放課後。
胡桃から屋上に来て欲しいと呼び出された。
屋上まで呼び出してまで、俺に何の用だろうか?
まさか、こ、告白……
いやいや、そんなラノベみたいな展開待っているわけ……
「昔から、ずっーと好きでした!だから、もし、勉が良かったら、私と付き合ってくれませんか!」
まさかのまさか。ラノベ小説みたいな展開を受けてしまった。これって、何かのドッキリ的な奴?それとも夢?胡桃は俺の手を取り握りしめる。
「私、勉のことが好きで仕方がなかった!昔みたいに、たくさん遊んで、二人で笑ったりした、あの勉の姿とか好きだった!そんな勉を見ていたかったから、私は、勉に話しかけて見たけど、勉は最近、私の事を避けていて、ショックだった……だから、思い切って、勉に思いを伝えたけど?だめだったかな?」
そして、胡桃は俺の手を自分の胸に……
「感じるでしょ?これが私の気持ち……」
と俺を見る胡桃。胡桃の心臓の音が早い。
今まで胡桃の顔は何回も見ていたのに、今日の胡桃は今までのとは違う。乙女オブ乙女だ。
綺麗に整った顔立ち。やらかそうな唇。そして、つぶらな瞳で俺をみる胡桃。こっちもドキドキが止まらない。これが恋というものだろうか……
次の日
胡桃の告白を受け、俺は胡桃と付き合う事になった。長くいたから、自分自身気づくのが遅れたかもしれないが、俺の胡桃の事が好きかも知れない。なんか、胡桃が近くにいると、ほっとする。
「おはよう!勉!」
「おはよう胡桃」
胡桃は、いつも通り、何の変哲もないない日常会話をする。周りの生徒たちは、「また、あいつと喋っている」的な事を言っているかも知れないが、胡桃は楽しそうに話している。もう、周りの目を気にするのはやめよう。俺達は、付き合ったんだ。
「胡桃、また休み時間も一緒に話そうな」
胡桃は、一瞬驚いたが、満面な笑みを浮かべ「うん!」と頷いた。
ーー次の日ーー
俺と胡桃は一緒に登校することになった。
最後に一緒に帰ったのは、多分小学校の頃以来になるから、物凄く久しぶりだ。
「く、胡桃……ちょっとくっつき過ぎじゃないか?」
そんな俺の言葉に対して、胡桃は顔を膨らませこう反論する。
「何言っているの!私は勉の彼女なんだから、こう言うことするのも当然でしょ!」
と俺から離れようとしない胡桃。
手を繋いで歩く程度だったら、多少は許せたけど、大胆にも腕に絡んでくるのは……
それに胡桃の胸が当たって、朝から刺激が強すぎる!しかもいい香水のいい匂いはするし、胡桃はこんなにも女性らしくなっていたのか!
とか思いながらも俺とと胡桃は一緒に登校するのであった。そして、気づけば、学校の門まで来た。周囲の生徒たちが俺達を見て、ひそひそと話している生徒もいる。流石にここでイチャイチャするのはまずいな……
「胡桃。もうじき、門の中に入るから、離れて」
「えっ、なんで?」
決して胡桃が嫌いになった訳ではないし、恥ずかしいからと言う理由でもない。
ただ胡桃を守るためだ。目の前の門をくぐれば、氷結の魔女がいる。胡桃も分かっていると思うが……
「付き合っているんだから、別に構わないでしょ?」
「だけど、高校の規則だし」
「私、その規則が分からない。確かに行き過ぎたスキンシップは駄目だと思うよ。だけど、このくらいのスキンシップとかできないなんて、理解できない。どうやって好きな人に好きだよと伝えるの?」
胡桃が言っている事は、間違ってはないかもしれない。
手を繋ぐとか、腕を組むとかなどは良いんじゃないのかなと俺も思う。
だけど、規則は規則だから守らなければ……
そんなことを思ったが、胡桃は離れることはなかった
そして、すぐに、氷結の魔女事、俺の姉 高橋 凪がいた。
凪は俺達の存在に気づくと、「えっ?」と言わんばかりに唖然とした表情で俺達を見る。
まぁ、いままでこんなにも堂々と規則を破る人なんていなかったから当然だような……
「二人ともストップ……」
凪は俺達の前に立った。
凪は俺達を蔑んだ目でこう言った。
「勉それと南条さん。これが立派な規律違反になっているとご存じですよね?」
「勿論、知ってます!。だけど、他の人やこの学校には迷惑を掛けてません!」
「だけど、公衆の面前で朝から異性とイチャイチャしている時点でこの学校の風紀を乱していていて、学校に迷惑をかけています。それにあなた達が迷惑行為をしてないと言ってますが、貴方が知らないところで、他人に迷惑をかけているかもしれませんよ」
と言われ、胡桃は数秒黙り込んだ。
だが、次の瞬間、神をも恐れる発言を言うのであった。
「ひょっとして、委員長さんも嫉妬してます?」
「何を根拠に?」
「女の勘ていうやつです」
と物凄く、挑発的な態度で対応する胡桃。
俺なら、今頃足がガクガクで震えていると言うのに、胡桃は凪を目の前にしても屈しない。
そんな胡桃は尊敬に値する。
そして、凪は呆れたように「はぁ……」ため息を吐くとこう言うのであった。
「嫉妬などしてません。大体、なぜこんな頼りない弟を好きにならなければならないのですか」
なんだか、グサっ!と心に刺さったのだが、否定は出来ない……
と思う俺をおいて、凪は「それよりも」と言葉を続け、こう言った。
「勉。それと南條さん。後で風紀委員室へ……」
と俺達は風紀委員長に呼びだしを食らうこととなった。(個別)
胡桃は、昼休みそして、俺は放課後に呼び出しを食らった。
――風紀委員室にて――
夕日が差し込む、風紀委員室。
なんて綺麗な夕焼けだと言いたところだが、俺は今、風紀委員長が座っている机の前で正座をさせられている。
そして、肝心の凪は、俺をごみを見るような目で見下してくる。例えるならば、凪は魔王。そして俺は、虫けらゴブリンみたいだ。
「それで、南條さんとはどんな関係なのですか?」
と聞いた凪は椅子から立ち上げり俺の前に来る。
「えっと、幼馴染……」
「そんなことは知ってます。で南條さんとはどんな関係なのですか?」
と顔を近づけもう一度、質問する凪。
凪からはほんのりいい匂い。
それに凪の柔らかそうな唇が近くに。
後、俺を睨みつける凪の顔……
怖いです……
「勉。黙ってないで答えてくれるかしら。一応、南条さんからも聞いているから隠すことはないわ」
「なら、正直に言わせてもらいます。胡桃とは、お付き合いしている中です……」
「具体的にはどこまで行った関係?」
「まだ、付き合い始めたばかりです……」
「なら、まだキスとかあんなことやこんな事もないのですね?」
「は、はい」
凪は俺の方へ近づくと、俺の顎をクイっと持ち上げる。まるで、イケメンが美少女にキスをするときのように……
「そう、なら、今から私とキスしましょう」
「えっ?今なんて?」
俺の聞き間違いだよな。
今から、凪とキスをするなんて、絶対に聞き間違えだような!
凪は真顔でこう言った。
「だから、私とキスです」
と凪は目を瞑り俺に迫ってくる。
どうして、そうなる!とか思っている場合ではない。これは冗談ではない!
まじだ!危険を察した俺は逃げる。
だが、正座したせいで足が痺れて、思っていた通りに足が動かせず転んだ。
凪は、俺を捕まえ、またさっきみたいに顎をクイっと持ち上げる。もう、逃げきれない。ならば、凪を説得して、やめさせなければ……
「凪、こんな事をしたら、風紀委員長として失格じゃないか?」
「そうかもしれませんね。だけど、この私を差し置いて、他の女性に勉のファーストキスを奪われなんて我慢できません」
と俺の顔を抑え、凪は目を瞑る。
そして、凪の唇がまじかに!
「失礼します!」
と女子生徒が風紀委員室に入ってきた。
何というグッドタイミングだ!
そして、その女子に気づいた凪は「チッ!」と舌打ちをし、俺から離れた。
凪は不機嫌そうに女子に話掛ける。
「ノックぐらいしたらどうなのですか?」
「す、すみません」
凪に怯える、女子生徒。
やはり、学校でも凪は怖い存在なのだろう。なんとなく、その気持ち分かります。
「それで、何しに来たのですか?」
「じ、実は一部の男子生徒が、喧嘩を始めてしまいまして」
「そう、分かりました。後から行くので、あなたは早く現場に戻ってください」
「は、はい!」
と女子生徒が慌てて生徒会室を出ていくと、凪深いため息をついた。
そして、俺にこう言った。
「どうやら、今日は無理なようですね。ですが、くれぐれもファーストキス残しておいてくださいね。いいですかもし、私との約束を破った場合は覚えていてくださいね」
と俺を脅した凪は生徒会室を後にした。
――靴箱前にて――
「なんか、長い説教だったみたいだけど、大丈夫だった」
「う、うん」
本当は死ぬかと思った。
まさか、凪に急にキスを迫られるとは思ってもいない展開だった。
これは、胡桃には絶対に言えない。
「そっか、良かった」
と俺の手を握りしめる胡桃。
胡桃の手は温もりを感じる。
はぁ……暖かくて、落ち着く
「とりあえず、帰ろうか」
「うん」
と俺と胡桃は手を繋ぎながら下校した。
こうやって下校したのも小学生の頃以来だ。小学生の時は、他の女子と男子も一緒に帰って、べちゃくちゃおしゃべりや、負けたら、近くの電信柱まで、かばんを持っていくとかいうくだらないゲームをしながら良く帰ったもんだ。だけど、今となっては、互いに一緒に帰っていること自体が恥ずかしくて、まともに会話が出来ないな……
そして、別れ際
「じゃあ、また明日」
「待って勉!」
と胡桃の方を振り返ると、胡桃は顔を赤らめこう言った。
「そ、その私とキスしてほしい!」
「えっ?どうして」
「ほら私達はカップルでしょ!?規則にはまた背けど、私達が喋らなければ、学校にはバレないだろうしね!いいでしょ?だからお願い!私の初めてを貰って!」
と言った胡桃は目を瞑った。
これは、もうキスをしなければならない状況。
ここで胡桃とキスをしなければ俺は胡桃の事が嫌いと言うことになってしまう。
だが、凪の約束が……
いや待てよ……
どうせ、ここで胡桃とキスしても凪にはバレないりなにせ、ここには凪がいない。
そうだ!凪にバレなければ、キスは出来る。
俺は、決意を固めた。
「いくぞ、胡桃」
と俺のファストキスは、南條胡桃に奪われたのであった。
「ありがとう勉。嬉しい」
「こ、こちらこそ」
初めてのキス。
今でも胡桃の唇の感触が鮮明に残る。
とても柔らかい唇だった。
「じゃあね、勉」
「うん」
――夜――
「勉、ご飯できたわよ」
とエプロン姿で俺に部屋に訪れたのは凪だ。
俺達の両親は共働きで家にいないことが多い。
そのため、家事のほとんどを凪がやっている。
ちなみに俺がやるのはゴミ出しと、後は時々料理。
さてここで問題だ。
どうして、俺が時々料理をやるだろうか?
1 毎日凪に料理を作らせるのは悪いと俺が思ったから
2 単純に凪の料理が不味いから
3 凪に毎回のように嫌味を言われるから
正解は……
凪の料理が不味いからだ。
「い、いただきます……」
と俺は凪の料理を食べ始めた。
凪の料理はとてもバランスが良い。
ただ、凪の料理はどれも、味が薄く、まるで病院食みたいだ。多分、凪は健康第一で食事を作っているのだろう。その結果、病院食みたいな食事が出来上がるのだろう。
「さっきから箸が止まっているけど、もしかしてまずかった?」
「いや!美味しいよ!」
決して不味いなんて口が裂けても言えない。いや言ってはいけない。
言った瞬間、これから料理を作ってくれなくなるかもしれない。
いや、もしかしたらそれ以上の……
想像するだけで身の毛がよだつ。
「ごちそうさまでした」
とご飯を食べ終えた俺は、その後風呂に入り、少しテレビを見た後に寝た。
そして、凪が寝ただろうと言う頃にもう一度起き、夜食。
凪の料理は食べた気がしなく、夜は空腹で寝付けない。
そして初めて就寝。
その日の夜
俺は夢を見た。
「勉、大好き」
「恥ずかしいから、離れろよ。」
「そんなこと言わないでよー」
それは凪が俺の事を溺愛している夢だった。
俺も凪もとても楽しそうな夢だった。
「起きて勉!遅刻するわよ!」
とぼやける視界の中からでも凪の怖い顔が映り、俺は飛び起きた。
凪は「はぁ……」とため息をつくと、不機嫌そうにこう言った。
「全く、私も暇じゃないので困るんだけど」
「す、すみません……」
「もう、ご飯の支度は出来ているから、早く食べて。出なければ遅刻するから」
と言う凪の言葉で俺は急いでご飯を食べ、身支度を済ます。
「じゃあ、行ってくるよ」
「待って勉。今日は私も一緒に行きます」
と俺の腕を掴む凪。
俺は凪の方を振り返る。
「あの、離してくれないかな?」
「駄目よ。勉にはこれから私の監視のもと一緒に登校してもらうわ。どうせ勉のことです。また南条さんとイチャイチャしながら登校するつもりでしょ?」
「いや、そんなことは……」
「するつもりでしょ?」
と睨む、凪に俺は頷いてしまった。
そして、数分後
「では行きましょう」
と凪が玄関の扉を開く。
今日は晴れ。とてもいい天気だ……
それに目の前には胡桃がいる。
「おはよう!?……」
凪は、胡桃の前に堂々とした態度で立つ。
そして、胡桃にこう言った。
「おはようございます南条さん。わざわざ、勉の迎えありがとうございます。と言いたいのですが、今日から勉との登校、および下校は当分の間、禁止にさせて貰います」
「どうしてですか?……」
と胡桃は凪を睨みつける。
そんな胡桃にも動じない凪はこう言った。
「決まってます。貴方たちの行為が、一番この学校の風紀を乱していると判断したからです」
「風紀を乱している?私たちのどこがですか?!」
「それは、貴方たちが人前でも、イチャイチャしているところです。時と場合を考えて行動するならともかく、他の人がいる、登校中にイチャイチャするなんて、これでは学校の品にも関わります。なので、貴方たちは当分の間処罰が必要かと」
と俺の手を強引に引っ張り始めた凪。
だが……
「南条さん。その手を離して貰います?」
「嫌です。勉は私の物です!」
と言い、もう片方の腕を取る、胡桃。
「私の物?勉は私の物です。事実、私達は兄弟ですもの」
「なら、聞きます。凪さんは勉と……そ、その、き、キスのくらいはしたことはありますよね?」
凪は毅然とした態度でこう言った。
「ないです。ていうか、キスする必要はありません」
良く、昨日あんなことをして言えるもんだ。
とか思いながら、俺が黙っていると、胡桃はにやりと笑った。
「なら、私の勝ちですね」
そして、凪に指を差し、自慢気にこう言った。
「私は勉からキスをさせて、頂きました!」
と自慢げに言う胡桃に対して、凪は頭を傾げ不思議そうにこう言った。
「だから、なんですか?」
「だから、勉はもう私のものです」
「ですが、勉がキスの承諾をしてなければ、ただ南条さんが強引にしたとも考えられます」
「いいえ、勉には許可を貰いました」
「だよね勉?」
と聞かれた俺は今、ピンチである。
ここで、頷けば、凪の約束を裏切ることとなる。
だけど、胡桃を裏切るわけにはいかない。
後で、凪にどんな目に合うかはわからないけど、胡桃だけは傷つけたくない。
「うんそうだね」
と言うと、凪は「そう……」と言い、俺の手を離す。
そして、小声で何か言い残し、凪はスタスタと学校へと向かった。
「勉!」
と言うと胡桃が俺に抱きつく。
「く、胡桃!くっつき過ぎ!」
「別にいいじゃん。あのうるさい委員長さんもいないんだから」
いや、そう言う問題ではない。
やっぱり、人が歩いている所でこんなことは、恥ずかしい。
「さぁ!学校に行くよ!」
と胡桃に引っ張られ、俺達は学校に向かうのであった。
――昼休み――
今日は胡桃と昼食を食べることになった。
しかし、胡桃はお手洗いに行ってしまい、俺は今、胡桃が来るまで、廊下で待っている。
すると……
「あ、あの!高橋会長の弟さんですよね?」
と俺に話を掛けてきたのは、あの時、委員室に入ってきた子だ。
「突然すみません。私、風紀委員副会長をしています。橘 香織と申します」
「あっ、高橋 勉と言います」
すると、橘さんが俺との距離を詰め、こう言った。
「実は弟さんにお願いがありまして……」
「ここではなんなんで」と橘さんに言われるがままに俺はある場所へと案内された。胡桃との約束があるから、最初は断ったが、時間はとらないと言われて、行く事に。一応、胡桃には一言連絡は入れたけど、早くしないと昼休みが終わってしまう。
俺は、風紀委員室に案内された。
「橘さん、お願いて?」
「実は、会長に関して、お話がありまして、良かったらそこのソファに座って下さい」
橘さんは、なぜか、委員室の扉の鍵を閉めた。
そして、ソファに案内し、俺がソファに腰をかけた。すると橘さんは、満面な笑みを浮かべる……
「会長、連れて来ました」
「そうですか。それはありがとうございます橘さん」
と背後から俺を抱きしめてきたのは凪だ。
まさか、俺にバレないように物陰に隠れていたのか!
「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。それよりも勉。貴方は私との約束を破りましたよね。だからきっちり落とし前をつけてもらわなければなりません大丈夫。怖い思いはさせないから」
凪は強引に、後ろからキスをしようとしてくる。
やばい!
俺は何とかして回避したいが、強引に頭を抑えられて、動かない。力ずくで戻そうと考えたが、もし、凪が怪我したらと思うと、強引にはできない。
こうなれば、説得あるのみ!
「なぁ凪。ここには橘さんがいるんだから、そのーキスはまずいんじゃないの」
と言うと凪は目を開け、橘さんを見る。
そして、橘さんにこう言った。
「橘さん、ここから出て行ってもらいます?」
「は、はい!」
凪は橘さんに気を取られて、力が緩んでいる。あとはタイミングだ。橘さんは部屋の鍵を開け、外に出ようとする。その瞬間に俺も逃げる。
「失礼します」
橘さんは鍵を開けた。今だ!これで失敗すれば、もう二度とチャンスはないだろう。俺は、凪からにげ、出入り口を目指す。
「橘さん!待った!」
と凪は橘に声を掛けるが遅い。
俺は今、誰にも拘束されておらず、自由に行動できる。橘さんは、俺を捕まえようとするが、俺はうまくかわし、橘が開けたドアの隙間から俺は逃げることに成功。
「すいません!会長!」
「いえ、これは私の失態でした……」
俺は凪から逃げることに成功したのであった。
その後、俺は急いで、屋上に向かい、胡桃と一緒にお弁当を食べるのであった。
「遅い!何していたのよ!」
「ちょっと色々……」
だが、これで凪に襲われることがなく、今日の学校生活は幕を閉じれるのであった。
めでたしめでたし。
なんて言う展開はなく、俺は今ピンチである。
さて、ここからどうするべきだろうか?
このまま家に帰れば、凪がいる。
あぁ、帰りたくない。
学校では凪から逃げることに成功したが、家に凪が帰ってくる。きっと家に帰ったら絶対に良くないことが待っているはずだ。
自分の身を守るため俺は、今日も一緒に帰っている胡桃に俺はあるお願いをしてみることにした。
「く、胡桃ちょっとお願いがある」
「どうしたの勉?私にできることがあれば言って」
と笑顔で俺を見る胡桃に俺はこう言った。
「今日だけ、お前の家に泊めてくれないか?」
すると、胡桃は顔を真っ赤し、こう言った。
「無理!無理無理無理!まだそう言うのは早いよ!ほら、そう言うのは順序を踏んでからだよ!」
と完全に否定された俺。まさか、ここまでこんなにも否定されるとは思ってもいなかった。
てか、ここまで否定されると傷つく……
だけど、胡桃の言う通り、しっかり順序を踏まないとな……
と言うことで俺は自分の家に帰宅した。
幸いなことに凪の革靴はないことから、まだ凪は帰っていない。
俺は自分の部屋に引きこもる事にした。
凪とあったら最後。何をされるかわからない。
そして、俺は知らな間に寝ていた。
目を覚ました時には、夜の23時を回ってた。
俺は恐る恐る部屋の外を出た。
どうやら、凪は帰ってきている。
だけど、凪は、自分の部屋で、勉強か睡眠をしているからだ。俺は風呂場へと向かう。
本当は夕食を食べたいが、匂いとかで、ばれたら、終わりだ。俺は食事は我慢すし、風呂場に向かう。
本当は風呂も入らず寝ようとも考えたが、明日学校に行った時に胡桃から「勉、なんだか臭い」なんて言われたら胡桃に嫌われてしまう。
なので風呂だけは……
俺は風呂の扉を開ける……
「あっ……」
俺は扉をそっと閉める。今のは見なかった。
黒の下着姿の凪はいなかった。この時間は、凪は勉強か就寝中のはずだ。だから、風呂場にいるなんているはずはない。
そう分かっていたが、俺は急いで自分の部屋に避難しようとした。ここで凪に捕まったら、今までの努力が無駄になる。
「待って勉」
凪に腕を掴まれた。あぁ、振り返りたくない。
振り返ったら殺される。凪との約束を破ったのがばれたし、挙句の果てに凪の下着姿を見てしまった。凪が怒るのも当然だ。
「勉……」
と俺に抱きついてきた凪。
やばい、お風呂から出たばかりのいい匂いと、凪の胸が当たり、思考がおかしくなりそうだ。
「勉。どうしてですか?どうして私を避けるのですか?」
凪の表情は分からない。けれど、何となく凪が今どんな表情をしているか、伝わる。
「ごめん凪。俺、凪のこと怖くて避けていた」
「やっぱり、そうだったんですね……」
と凪は俺から離れた。
すると、凪はこう言った。
「なら、こっち向いてください」
そう言われ、俺は凪の方を振り返る。すると、凪が俺に勢いよく抱きついてきた。
「な、凪!?」
凪は俺を見る。
すると凪はにっこり笑いこう言った。
「大好きだよ。勉だからね」
凪は俺に抱きつく。
そして……
「今日から勉に甘えちゃうね」
凪は、俺のシャツの匂いを嗅いでみたり、頬でシャツを擦ってみたり、まるで、ご主人に懐いてあるペットのような振る舞いを見せるのであった。
――次の日――
俺の生活は変わり始めるのであった。
学校での生活はまさに漫画のような主人公。この漫画のようなありえない
左に胡桃、右には凪。
二人は自分が作ったお弁当を持参をし俺に食べさせている。そして、俺はどっちのお弁当が美味しいか審査する羽目になっている状況だ。
「勉、私のお弁当は美味しいですか?」
「う、うん」
と表向きはそうだが、本音はあまりおいしくない。
決して味が悪いわけではないが、味が薄く食べた気がしない。
「勉!こんなお弁当よりも私の方が美味しいよ」
と胡桃は俺の口にミニハンバーグを入れる。
俺はそれを食べるが……
「どう美味しいかな?」
と恥ずかしそうに俺を見る胡桃。
胡桃はとても可愛い。
だけどやっていることは鬼だ。
胡桃の食べ物を食べた俺は今にも倒れそうだ。
決して毒が入っているわけではない。
だけど、糞がつくほど、不味い。
一体何を入れたらこんな味が……
「もしかして、不味かった?」
と不安げに見てくる胡桃。
そんな胡桃に自信を持ってもらうため俺は、首を横に振り、こう言ったのであった。
「凄く美味しかったよ!」
本当は不味いと言って指摘すべきだったかもしれない。だけど、これがきっかけで料理に自信を無くして料理をしなくなったりしたら物凄く申し訳ない。それに今褒めておけば、胡桃はまた料理の腕を上げてくる筈だ。だから、いずれ、美味しい手料理が食べれる筈だ!(多分……)
だから今の嘘は今後のことを考えれば良い嘘だ。
と自分に言い聞かせたのも束の間。
胡桃は俺の言葉を間に受けるのであった。
その証拠に
「はい!勉たくさん食べて!」
と胡桃は次々とおかずを食べさせてくる。
ちょっと口直しに水を飲みたいが、胡桃がそれを阻止してくる(※本人はそのつもりはありません)
「ちょっと、南条さん!勉が困ってます」
と南条の顔を押しのけた凪。
凪は俺に水を渡す。
「兄さん、これ飲んでください」
「あ、ありがとう」
ナイス!凪。
と思いながら、俺は水を流し込む。
これで、胡桃の料理の味はある程度は消えた。
だけど、次なる地獄がやって来た。
「じゃあ、次は私の料理も沢山食べてください」
と凪の料理を食べさせる羽目になった俺。
胡桃の料理よりもハードルが下がるがこちらもきつい。
味がなく、なにを食べているのか分からない。
それに胡桃に押し付けられたおかずのせいで、俺のお腹もそろそろ限界に近い……
と思いながらも俺は凪の料理と胡桃の料理を全て食べ切り、昼休みを終わるのであった。
そして、時は過ぎ俺はクタクタになりながら、家に帰宅した。
だが、本当の地獄はここからだった。
「ただいま……」
「お帰り勉!」
「お帰り!勉!」
と二人が俺を出迎える。
凪はともかく、どうして胡桃がここに!
「聞いて勉。私達、協定を組むことにしたんです。ですよね?胡桃さん」
「はい!凪先輩!」
「と言う事で、私達二人は……」
「ちょ、ちょっと二人とも!」
気のせいだろうか?
二人が俺に襲い掛かってくるような気がするが!……
とこんな感じで俺の生活は始まったのだが、この生活の中を通し、いずれ俺はこの二人のどちらかを妻にする時がくるのだが、それはまだ先の話である。
最後まで読んでくれてありがとうございました!
短い間ですが宜しくお願いします!