誰かの真実2
後頭部に重い痛みが走ったような気がした。
なぜみんなを信じるの?
堪子は、口の中に鉄の味を感じた。
頭の中が熱い。しかし胸の中心と手先はすぅっと冷えていく。
泣きたい気がしているのに、笑いが込み上げてくる。
息ができない。
すべてがバラバラになっていくような感覚だった。
「私が一緒にいてあげるから……」
「嫌です」
「……え?」
堪子には、自分の口から出た言葉はずの言葉が、他人のそれに聞こえた。
「何もしていないのに、謝るなんてできません」
「水をかけたんでしょ? それは謝らなきゃ……」
「私ではありません。それに、かけようとしてきたのは、かけられたその子達の方です」
「え?」
さすがにそれには担任も首を傾げた。
「どういう意味?」
「私はずっと無視されてました。少し前からは臭いってその子達から言われて、今日は水をかけられそうになったんです」
堪子の告白に、担任はますます動揺した。
「そっ、そんなはずないわ……! だって、みんなはあなたが……」
「みんなのことは信じても、私は嘘吐きになるんですね」
堪子は冷たく言い放った。
「みんなが言ったから、私がかけたってことになるんですか? それならいいです。確かに……私の友達が……」
そこまで言って、堪子は口を閉ざした。自分の肩を掴む担任の手が、震えていた。
(面倒なんだな、この人)
もう何もかもが信じられなくなった。
堪子は立ち上がり、担任の手を振り払った。
担任は何かを言おうとしていた。が、言葉にならないようだった。
堪子も伝えようとした。
でも、もう無駄だと思った。
「青島さん、今日は帰って休んだ方がいいわ」
今井が言った。
担任を見ることなく、彼女は堪子だけを見据えて、そっと背中を押した。
堪子は力なく頷くしかなかった。