見えないもの1
次の日、学校へは父と母と一緒に向かった。父は、はじめて堪子のために会社を休んだ。
学校の門が見えてくる。
父が左手を、母が右手を握ってくれた。
幼い弟は、父方の祖父母が面倒を看ると言ってくれたそうだ。ついでに、父は祖父にものすごく叱られたらしい。
『どうしてまず自分の娘の言葉を信じないのか⁉』
父は反省したようで、堪子が家に帰ったらすぐに謝罪を娘に伝えた。
堪子も謝った。きっと伝え方が下手だったのだ。
母にも心配をかけたことを謝った。母は泣いて、首を横に振るばかりだった。堪子には、それだけで良かった。
学校に着くと、いつもの教室ではなく、会議室と書かれた場所に通された。
見知らぬ大人達の視線が堪子に注がれる。それが恐ろしかった。
しかし、父と母がその視線から堪子を庇う。
「うちの子は、やっていないと言っています。五年生になり、他の子にいじめられていて、今回も水をかけられそうになった、と。僕も彼女の言葉を信じています」
水をかけられたと嘘を吐いたクラスメイトとその親達にはっきりと伝えた。時折、堪子に蔑むような目を向ける親もいたが、そんな時も父はすっとそちらへと目を向けた。そうすると、その親はすぐに視線を逸らす。
クラスメイト達は何も言わなかった。ただ下を向いて、これまた時折他の子とアイコンタクトのようなものを取っていた。きっとこんなに大事になるとは思っていなかったのだろう。
担任もおろおろしっぱなしだった。
「えっ、えっと……じゃあ、な、なんで彼女達はびしょ濡れだったんですかね……?」
「それは知りません。堪子からは、急に水道から水が出た、と伺っています」
かけられたと言った本人達は、やはり何も言えないようだった。
それどころか、どんどん蒼褪めていく。堪子の方を向いて、何かを怯えているような感じもした。
他の親達も、娘達が何も言わないのもあり、堪子を責め立てることができないでいるようだった。今度はイライラしたように、娘達に「どうなってんの?」「なんで何も言わなんだ?」と口々に言い始める始末だ。
「じゃ、じゃあ……す、水道が、壊れていたんです、かね?」
担任のその頼りない言葉で、一旦はその場が終わった。




