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変な人白書  作者: 紅頭マムシ
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第六十一話 今年のクリスマスは無敵

 去年もそのまた去年も、記憶が続く限り巻き戻った全ての去年において、俺にとってクリスマスはなんてことの無い日々だった。

 母と妹とその他とでちょっとしたご馳走を囲い、その後にケーキを食べる。大きく特別感はなく、平日にほんのちょっとの+αなりβを加えた程度のものだった。翌年になれば何を食ったかも覚えていない。

 

 そんなクリスマスが今年は全く違う物に思える。いや、思わない方がどうかしている。

 まずはその日を過ごす場所、人間、テンション、全てが異なっていた。


「ハッピークリスマス!めでたいね~」

 

 何がめでたいのか不明だが、目の前の彼女は笑顔満開でお祝いしている。じゃあこちらも乗っかろう。

 一緒にはしゃぐ。その一緒にはしゃぐ相手は、去年のクリスマスから今年のクリスマスを迎えるまでに得た恋人だった。今は彼女の部屋で二人きりだ。


 昔聴いた冬の名曲を思い出す。去年のクリスマスはケーキを売っていたので色気なく過ごしたけど、今年は彼女が出来て一緒に過ごすから無敵な日になる。そんな事を言っている歌だった。

 歌に出てくる彼は、ケーキ職人だったのか、それともただのクリスマスのバイトだったのか、普段ならそんな些細な事を気する俺も、今日ばかりはそんなことはマジでどうでも良いと思えた。


 確かに1人か2人かで無敵度具合がまるで違う。眼の前の彼女を見れば、なんだか無敵状態になれた気がする。


「どうかなコレ?似合う」

 

 めっちゃ似合う。聞かれる前からもすんごく似合うし、なんなら抱きしめたいとも思っていた。そんな彼女はちょっとセクシーなサンタコスを着こなしている。

 でも硬派な俺としては、思ったままを口にし、行動に移すべきではない。キャラが崩れるではないか。


「そう?嬉しいなぁ!喜んでもらえて良かった」


 あっ、思っている事が声に出てしまっていた。まぁ良いか。


 彼女はご機嫌にソファに腰掛け、俺の隣を陣取る。そして擦り寄る。

 これは、これは……これは良いな。

 心地よき柔らかさ、そして良い匂い。これで悪い気がする方がどうかしている。

 こうなったら仕方ない。愛しいと思ったままに行動に出るか。


 頭をナデナデしてみる。これを心地よく思う者、嫌悪感を示す者、2つは割りとはっきりと別れるらしい。妹が言っていた。

 彼女の反応は、まるで近所の猫のようだ。撫でるとすごく喜んでいる。


 で、思うのだ。こうして愛しい者同士で集まって聖夜をエンジョイしたい精神は分かる。でも何をするのだろう?

 彼女に聞いてみた。


「まずはチキンを食べるでしょ。次にケーキを食べるでしょ。それから……愛を分け合うの」

 後半の方の言い方が色っぽい。


 ふぅ、こいつはスムーズな入眠とは縁遠い夜になりそうだぜ。聖夜様々だなぁ。


「こらこら、なんて顔してるの?なんか一気に締まりのないだらしない顔になったよ」

 

 おっと危ない。せっかくの母親譲りのナイスガイを崩しては色々と勿体ない。決め顔をまた作ろう。


 でも困ったんだよな。どうしようかな、雰囲気を壊したくないしな~。


「どうしたの?何か言いにくい事でもあるような顔して?」

 

 彼女は気遣いさんでしっかり者だ。なので人を見て瞬時にこういう事が分かるんだよな。


「さぁさぁ、はっきり言ってよ」


 では言っておこう。


「実は俺、鶏肉アレルギーでさ。せっかく用意したそれ食えないんだよね」

「ふっふ、そんなこともあると思ってね。ほらこっちも用意したの」


 彼女はキッチンから鉄板プレートを持ってきた。上には素晴らしき牛ステーキの姿があった。


「わぉ!美味そう!」と俺は感激を隠せない。


 アレルギーという障壁もぶっ飛ばす。そんな2人でお届けする今年のクリスマスは無敵の1日だった。

 クリスマス、最高っす。

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